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ハエの幼虫〈ウジ虫〉が原材料のドッグフード

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愛犬が虫をムシャムシャ食べていたら、たいていの飼い主さんは「ギャー!」とあわてふためくものではないでしょうか。
虫の種類がなんであれ、反射的に「食べてほしくない」と考えてしまうのは私も同じです。

しかし、なんとなんとイギリスのペット用品会社が虫を主原料にしたドッグフードを開発しました。

――昆虫食は地球を救う。
この2~3年でそんなフレーズを耳にすることが増えてきましたが、どこか他人事だったこの発想が、昆虫由来のドッグフード出現により、俄然現実味を帯びてきたような・・・。

世界の肉や魚の消費量のうち20%がペットフード

なんでも、世界中で消費されている肉や魚の20%がペットフードなのだとか。
つまり、世界の人口が激増しつつあるいま、ペットフードを肉や魚以外の何かで代用することができたら、近未来に直撃するであろう食糧問題の何割かを解決できるかもしれない。
これが、昆虫を原材料としたドッグフードの出発点なのだそうです。

まあ机上の理論として、そういうことはあり得るだろうとは思うのですが、では現実的にどうかと問われたら、「う~ん」と唸りたくのが本音ではないでしょうか。
しかし、そこをきちんと商品開発してしまったのがイギリスのYoraというペット用品会社です。

プレミアムフードに一石を投じた会社創設者の発想

Yora社の創業者が考えたこと。
それは・・・
「ヒューマングレードのペットフードが素晴らしい製品であることは間違いないが、地球温暖化や食糧資源の減少に直面したいま、私たちはペットに高級な肉を与える必要があるのでしょうか

愛犬は家族。
そういう概念が浸透し、いまやプレミアムドッグフードの原材料には当たり前のようにヒューマングレード、すなわち私たち飼い主が食べている肉類と同等の品質が使われるようになりました。
このYora社創業者の考え方は、まさしくそんな状況に一石を投じているわけですね。

とは言え、この創業者の考え方は、「だからペットには質の悪い肉類で充分」などという安易なものではありません。
ヒューマングレードと呼ばれる高級な肉類に引けを取らない、安価で高品質なタンパク質はないのか?
その結果導き出されたのが「ハエの幼虫」――すなわち蛆虫(うじむし)だったのです。

食用に開発された特別なハエ……というわけではない

ドッグフードの原材料になっているのは、アメリカミズアブというハエ目ミズアブ科の昆虫です。

――ハエの幼虫といっても、食用に開発された特別なハエで、日本にはいない種類ですよね?
もしもそう思った人がいらっしゃったら、ゴメンナサイ。
アメリカミズアブの原産地は北米や中米ですが、日本には1950年頃に侵入してきていて、本州、四国、九州、そして沖縄で自然繁殖しているんですよね。

そしてアメリカミズアブの幼虫が何を食べて成長するのかといえば、いわゆる腐敗有機物です。
すなわち、草や果実などの植物から、動物の死体や排泄物などのことですね。
つまり、生ごみや便所が幼虫の餌場なんです。

もう、想像するだけでぶっ倒れてしまいそうなほど、ごく普通に「ハエ&ウジ虫」なわけですが、このどこででも繁殖できる力があるからこそ、大量の養殖が比較的容易にできるわけですね。
ハエやウジ虫と聞いただけで私たち人間はつい眉をひそめたくなりますが、含まれている栄養の量や質、バランスは肉や魚の代替として余りあるほど、ものすごく優秀なのです。

どんな虫なのか気になったかたは、ぜひ画像を検索してみてください。
ウジ虫のようなイモムシ系がどうにも苦手な人は、そのビジュアルにたぶん卒倒しかけると思いますので、あくまでも自己責任でお願いします。

ウジ虫が原材料であることの利点とは?

アメリカミズアブのウジ虫には、牛肉や豚肉、鶏肉などにひけをとらないタンパク質が含まれています。
もちろん、タンパク質だけではありません。
ビタミンやミネラルも豊富に含んでいるのです。

しかし、肉類の代替にしようという発想は、そんな単純なことだけから導き出されたわけではありません。
アメリカミズアブの幼虫――ウジ虫と同等の栄養素を牛肉で得ようとした場合、必要となる土地は47倍、温室効果ガスの排出量は25倍、生産に必要な水の量は20倍と試算されているのです。
もちろん単純計算ですから、必ずしもこの数値の通りになるとは限りませんが、少なくともウジ虫を原材料にすることで、生産に関わるコスト面はかなり低くおさえることができ、さらには環境にも優しいことは間違いありません。

ウジ虫だと思うから拒否感が先に立ってしまいますが、単純に動物性タンパク質と考えたら、ものすごく優秀であることは否定できない事実なんですよね。

昆虫由来でも見た目は普通のドッグフード

さて、そんなYoraの昆虫ドッグフードですが、濃い茶色の粒々という見た目はいたって普通のドライフードです。
何も言われずに出されたら、ごく普通のドッグフードにしか思えないでしょう。

そもそも、食べ物の見た目にこだわるのは人間だけであり、犬にしてみれば原材料が牛だろうが鶏だろうがウジ虫だろうが、美味しければそれでいいはずです。
ひょっとしたら、近い将来には昆虫由来のドッグフードはごく当たり前のものになるかもしれませんね。

ちなみに、2019年現在においてこのドッグフードはイギリス国内のみの販売で、日本で購入することはできません。