ペットロスは誰にでも起こりうること

どんなに愛犬を大切にしていても、いつかは必ず訪れる瞬間――それは、愛犬との別れです。
犬と人間は寿命の違う生き物である以上、こればかりは避けられません。

大切な愛犬を残して自分が先に逝くよりは、愛犬の最期を看取るほうがいい……と頭では理解していても、失ったあとのこの世のすべてが閉じてしまうような喪失感は、味わった人でなければ到底理解することはできないのでしょう。

ペットロス症候群とは

ペットロスは愛犬を失った誰にも訪れますが、喪失感が精神状態や体調に与える影響によっては、ペットロス症候群と呼ばれる深刻な状況に陥ることもあります。
情緒不安定や無気力、不眠などにとどまらず、うつ病や摂食障害、めまいや内臓の不調など、精神的なものから肉体的なものまで深刻な影響を及ぼしている――これがペットロス症候群です。

ペットロス症候群になる原因は、愛犬に対する愛情の深さによるものではありません。
飼い主の精神状態や取り巻く環境、愛犬が亡くなったときのタイミングなど、要因は様々にあるのです。

ペットロス症候群になる要因

飼い主の精神状態がマイナス方向に振れていた

職場や学校での人間関係、家族の病気や死、持病の悪化、夢や目標が叶わなかったなど、何か別の要因と重なったときにペットロスを深刻化させてしまうことがあります。

飼い主を取り巻く環境の無理解

――たかが犬が死んだぐらいでそこまで落ち込まなくてもいいのでは?
――そんなに悲しいなら新しい犬を飼ったらどう?
――愛犬が死んで悲しいのはわかるけど、いつまでも悲しんでても意味がないよ?

こういった心無い言葉は、言っている本人にしてみればそこまで悪気はないのでしょう。
むしろ、元気を出せという意味合いで声をかけていることさえあるぐらいです。
しかし、愛犬を失って心に亀裂が入った状態で聞くには、あまりにも無神経な発言であることは間違いありません。

愛犬の死に対する強い責任や無力感を感じている

愛犬が老衰以外で亡くなったときに、飼い主は強い罪悪感に陥ることがあります。

――事故死したのは自分がきちんとリードを握っていなかったから。
――散歩の途中で殺鼠剤を口にしてしまったのは自分がよそ見をしていたから。
――病気で亡くなったのは自分が兆候を見逃したから。
――苦しんでいた愛犬に自分は何もしてやれなかった。

こういった罪悪感や無力感が、ペットロス症候群の引き金となることがあります。

愛犬に依存しすぎていた

人間関係を築くのがもともと苦手だったり、なんらかの事情から他人と関わることを避けてきた飼い主は、愛犬に強く依存することがあります。
その愛犬が亡くなってしまうことは、体の一部を失うことに等しいことと感じてしまい、ペットロス症候群が深刻化するおそれがあります。

上記にあげた要因は、ペットロス症候群を引き起こす可能性のほんの一部に過ぎません。
誰しもが、そのときの精神状態や自分を取り巻く環境により、愛犬を失った喪失感が強い精神的ダメージにつながってしまう可能性があるのです。

ペットロスをどうやって乗り越えるのかは人それぞれ

愛犬を失った喪失感をどうやって乗り越えるのか――
おそらくその方法は人それぞれで、こうしたらすぐに元気になりました、というお手軽な方法はありません。

私自身について言えば、親の死では感じなかった心の一部がぽっかりと欠けてしまったような感覚がありました。
その穴を埋めようにも、何をしても埋まらない気がしてならなかったのです。
思い出すたびに涙が出て、どうしようもなく絶望的な気持ちになりました。

しかし、半年が経ち、1年が経ち、2年が経ちと経過していくうちに、少しずつ涙の種類が変わりはじめたのです。
以前は失った悲しみが強くて涙を流していたのですが、いつの間にか懐かしさが勝つようになりました。
もちろん、時間が経てば大丈夫になる、などと安易なことを言うつもりはありません。
しかし、愛犬が生前に見せてくれた様々な表情を思い出すうちに、楽しかった出来事を思い出すようになっていったのです。

思えば、旅立った犬たちはみんな私が大笑いしている姿が好きだった……。
そう気づいたときから、亡くなった愛犬のことを思い出は懐かしくて温かいものへと変わりました。

悲しみを抑圧するより解放することが乗り越えるきっかけとなる

愛犬を失った悲しみや喪失感を、そのような経験をしたことがない人に話しても、わかってもらえるものではありません。
それは相手の人が悪いわけではなく、そのような感情を知らないからこそ、愛犬を失った飼い主さんの苦しみを理解できないだけなのです。

だからこそ、愛犬を失った悲しみや苦しみは、身近にいる理解できない人ではなく、同じような経験をした人に話しましょう。
身近に同じような経験をした人がいなくても、インターネットにはペットロスを経験した人たちだけが集まる掲示板が存在しています。
そういった掲示板を読むだけで、おそらく涙があふれて止まらなくなるでしょう。
そして、自分自身の経験を書き込むことでも涙が止まらなくなります。

しかし、悲しい気持ちを抑圧するのではなく、解放してやること――
これこそがペットロス症候群を乗り越えるきっかけとなるのは間違いありません。