犬の腸閉塞
犬の腸閉塞――。
と聞いても、なんだかピンとこないかもしれません。
では、犬が何か変なものを口にしてしまった――。
こちらは、思い当たる飼い主さんが少なくないのではないでしょうか。
いわゆる誤飲や誤食。
これが腸閉塞を引き起こす主な原因の一つです。
そして腸閉塞は、一歩間違えば命を落とすかもしれない、とても危険な状態です。
腸閉塞の主な症状とは
腸閉塞とは、その名の通り、なにかが小腸に詰まってしまった状態のことです。
比較的軽度であれば、腹痛、嘔吐、下痢といった症状が多くみられます。
もちろん、それらの症状に付随して食欲が落ちるのはもちろんのこと、元気そのものが消失していくことに。
そして腸が完全に閉塞している場合、その症状はひどくなる一方です。
腹痛が激しいことから犬は体を丸めるような姿勢をとり、呼吸も浅くなってぐったりしてしまいます。
もちろん、食欲もなくなるでしょう。
その状態のまま放置してしまった場合、閉塞した腸の血行が阻害されるため、腸の組織そのものが壊死することに。
その結果ショック状態に陥り、命を落としてしまう可能性が高くなるのです。
犬の腸閉塞の原因とは
犬が腸閉塞を起こす場合、その主な原因は異物の誤飲です。
しかし、もちろん腸を詰まらせてしまう原因はそれだけではありません。
異物の誤飲
犬は何でも口に入れたがる生き物。
そして、口に入れたものをつい飲み込んでしまいたくなる生き物でもあります。
室内飼育の犬が8割を超えるいま、犬が暮らす環境は誤飲すると危険なものだらけ。
子どもが散らかしたままのオモチャ、放り出したままの靴下、床に落ちたクリップや画びょう、ゴミ箱に無造作に捨てられたトウモロコシの芯などなど、犬が飲み込んでしまうと腸閉塞を起こす危険性のある品々は、数え上げたらきりがありません。
もちろん、屋外飼育の犬にしても庭の石や植物を飲み込む可能性は大いにあります。
癌(がん)
腸内に発生した腫瘍が原因で腸が詰まることもあります。
この場合も異物を飲み込んだときと同じく、その部分から壊死が起こり、ショック症状に陥る可能性が。
つまり、腸ががん細胞におかされた場合、腸閉塞を発症しやすくなって非常に厄介なのです。
ところががんを初期段階で発見するのはなかなかに困難。
だからこそ、普段から愛犬の体重管理をおこない、排便の様子などをしっかり観察する習慣が大切なのです。
ウィルス感染や寄生虫
パルボウイルスやジステンパーといったウィルス感染、それからフィラリアなどの寄生虫が原因で腸捻転を起こし、その結果腸閉塞に至ることがあります。
腸閉塞になると食欲はないのに水はたくさん飲む?
腸閉塞を起こしている犬は、どんどん元気がなくなっていくにつれて、食欲も失われていきます。
ところがそれと反比例するように、水を多量に飲むことも。
これは、嘔吐や下痢などによって体が脱水症状を起こしていることから、本能的に水分を摂取しているのではないかと考えられています。
いつもに比べて食欲は落ちているし、元気もなくなっているのに水ばかりをやたらと飲む。
もしも愛犬にそのような兆候が見られたら、何かが腸に詰まって閉塞しているのかもしれません。
様子見などはいっさいせず、一刻も早くかかりつけの動物病院で診察してもらいましょう。
腸閉塞の治療
異物を飲み込んだことが原因で腸閉塞を起こした場合、基本的には外科手術になることが一般的です。
しかし、がんやウィルス感染、寄生虫が原因の場合は、ケースバイケースになるでしょうか。
まずは投薬治療などから始めることもありますが、いずれにしてもどのような処置が必要か、獣医師とよく相談して決めなければなりません。
外科手術になる場合は、できるだけ早く腸の壊死した部分を切除したいところ。
なぜなら、その後に大きく影響するからです。
というのも、手術が遅れて壊死した部分が大きくなればなるほど、切除しなければいけない部分も大きくなることに。
小腸が短くなればそれだけ消化にも影響が出てしまうわけですから、切除部分が大きくなればなるほど、その後の生活に支障が出やすくなるのです。
犬の腸閉塞の原因は飼い主の努力で減らすことができる
前述したとおり、犬の腸閉塞の原因は異物の誤飲、腫瘍、ウィルス感染、寄生虫であることがほとんどです。
つまり、がん以外の原因は、飼い主の努力次第でかなり排除できるものなんですね。
犬が生活空間の中にいると、つい人間の目線で見てしまいがち。
しかし、犬の目線になって室内を見回してみると、ぎょっとするようなものが犬の届く範囲にならんでいることに気づくはずです。
そして毎年のワクチン接種やフィラリア予防を怠らないことも、犬の腸閉塞を防ぐうえでは重要な役目を果たしているのです。