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シナモンは良薬、しかし犬の食事においては扱いが難しい

この記事の目次

シナモンといえば、とてもメジャーな香辛料。
あの独特な香りを好きな人もいれば、苦手な人もいますよね。
ニッキという名でも知られていますし、生薬としては桂皮という名称で呼ばれています。

そんなシナモンですが、ここ数年は高い抗酸化作用や血糖値を安定させる効果が注目されているのをご存じですか?
シナモンの香りが苦手であろうと、血管の若返りのために頑張ってシナモンを摂取する人が増えているのだとか。

まあ、それが良いのか悪いのかはともかくとして――。
体に良い成分は愛犬にも摂取させてあげたい、と考えるのが飼い主としての心情。

でも、愛犬にシナモンを与えるのはちょっと待って!
シナモンは犬にとっても有効な成分であることは間違いないのですが、扱い方がなかなかに難しいからです。

シナモンに含まれている栄養

シナモンに含まれている栄養成分といえば、

食物繊維、炭水化物、脂肪、タンパク質、ビタミンA、ビタミンB1、B2、B3、B6、葉酸、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンK、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、亜鉛……

といったように、ビタミン、ミネラルともに様々な成分を含んでいる、かなりのスーパー食材であることがわかります。
だったら愛犬にもたっぷり摂取させれば栄養満点では?と思いたいところですが、残念ながらそうもいきません。
シナモンには上記にあげた栄養の他に「クマリン」という成分が含まれているのですが、このクマリンの扱いがなかなかに難しいからです。

クマリンとは植物に含まれている芳香成分の一種で、血行不良の改善や毛細血管の修復を促し、免疫力をアップさせる効果があります。
その効果により、細胞の老化を防止して若返らせる働きがあるといわれているんですね。

なにそれ!だったらなおのこと愛犬に摂取させたい!と思うかもしれませんが、問題はその摂取量。
クマリンには肝毒性(肝臓に対して毒性があること)があるため、過剰摂取をすれば体に害を与えることになるからです。
それはもちろん人間の体に対しても同じことで、欧州食品安全機関(EFSA)ではクマリンの毒性を考慮して、推奨する摂取量を0.1mg/kg(体重)としています。

・・・と言われても、いまひとつピンときませんよね。

どの程度のシナモンを摂取すると危険なのか

体重50kgの人間で考えた場合、一般的なレシピのシナモンロールに換算すると、およそ50個程度。
これを体重5kgの犬で単純計算すると5個になります。

なーんだ、5Kgの犬が一度に5個もシナモンロールを食べることなんてそうそうないし、だったらシナモンの毒性なんて気にする必要はないじゃないか!という結論が導かれますよね。
しかし、そんなに単純ではないのが肝毒性というやつです。

そもそも犬は人間よりずっと体格の小さな生き物であり、つまりは肝臓もまた人間に比べてサイズが小さいのは当たり前のことですよね。
そして肝臓とは解毒の機能を持つ臓器。
つまり、毒素の排出が追いつかなくなれば、その毒素は肝臓に蓄積されていくことになるのです。

シナモンは有益だが安易に使うべきではない

体にとって有益な効果が期待できるシナモンですが、結論からいえば犬の食事に積極的に取り入れるべきタイプの食材ではありません。
動物医療について専門的な知識のある人が、きちんと理論に基づいて微量を食事に加えているケースはありますが、それだって食材というよりは薬としての使い道に近いでしょうか。
それを素人が聞きかじりでまねをしても、ろくなことにはなりません。
ましてや、肝臓の機能が衰えているシニア期の犬であれば、飼い主は微量のつもりでも、それが肝機能の悪化をまねく可能性は排除できないのです。

目を離したすきにシナモンロールをいくつか食べられてしまった程度で肝機能を悪化させることはそうそうないはずですが、もしも体調に変化が見られた場合は、すみやかにかかりつけの動物病院を受診したほうがよいでしょう。

いずれにしろ、シナモンには非常に有益な効果が期待できますが、だからといって安易に犬の食事に加えるべきではないことだけは間違いありません。
犬の食事において、シナモンはなかなかに扱いが難しいのです。