犬に噛まれた!噛んだのが愛犬でも感染症のリスクはあります
知らない犬に噛まれたら、ものすごくあせりますよね。
傷口にバイキンが入ったらどうしようと心配になり、あわてて消毒するのではないでしょうか。
出血するほどの傷になってしまったら、急いで病院にも行くはずです。
では、噛んだのが自分の愛犬だったらどうでしょうか。
よほどの大怪我でもない限り、あまり大事(おおごと)にしようと思わないのではないでしょうか。
愛犬と遊んでいるとき、なにかの拍子に傷ができてしまうことは珍しいことではないですよね。
しかし、もしもその傷が腫れあがってきたにもかかわらず放置してしまうと、大変な事態になるかもしれません。
犬に噛まれたことで発症するかもしれない感染症
犬の口内にはいろいろな種類の細菌が存在しています。
いわゆる「常在菌」と呼ばれる細菌で、人間を含めた動物の口腔内には、様々な種類の細菌やウィルスが存在しているのです。
人間の口の中にも300~700種類ぐらいの細菌が生息しているのだとか。
要するに、犬の口腔内だけが特別に汚いわけではないのです。
そんな口腔内細菌ですが、生息している菌の種類は動物によってそれぞれに違います。
当然のことながら人間と犬にも違いがあり、犬の口腔内に存在している常在菌の中には人間が感染してしまった場合、とんでもなく重篤な症状を引き起こしてしまうものがあるのです。
たとえば……
破傷風菌
傷口から侵入して破傷風を発症させる細菌。破傷風を発症すると20~50%の割合で命を落としてしまうため、犬の口腔内で見つかる細菌の中では最も危険視されています。破傷風菌は世界中の土壌に存在しているので、外飼いの犬に噛まれたときは特に注意が必要です。
パスツレラ菌
感染するとパスツレラ症を発症します。主な症状は傷の腫れや化膿ですが、症状が深刻になると呼吸器系の疾患や骨髄炎、さらには敗血症や髄膜炎等の全身重症感染症などを引き起こす可能性があります。死亡例があるほどの感染症ですが、なんと犬の75%はこの菌を口腔内に保有しています。(猫は100%)
ブドウ球菌
ブドウ球菌は感染した部位によって様々な症状を発症するため、傷の腫れや化膿はもちろんのこと、骨髄炎や肺炎などを引き起こす可能性もあります。また、食中毒の原因菌としてもよく知られている細菌の一つです。
バルトネラ・ヘンセラ菌
感染するとネコ引っかき病を発症します。犬に噛まれたのにネコ?と思うかもしれませんが、この菌を持ったノミに吸血されることで犬も感染します。しかし、犬や猫は感染しても無症状ですが、人間が感染すると傷口の化膿、リンパ節の腫れ、発熱、関節痛などの症状を引き起こしてしまう厄介な細菌です。
上記に挙げた4つの細菌は、いずれも犬に噛まれたことで感染する危険性があります。
中でも命の危険にさらされる可能性が高いのは、なんと言っても破傷風菌ではないでしょうか。
だからこそ、犬に噛まれて病院へ行くと、破傷風の予防ワクチンを打たれるわけですね。
実はこの破傷風予防ワクチン、ものすごく痛い注射としても有名です。
しかし、万が一破傷風を発症してしまったら命を危険にさらすかもしれません。
そんな事態になるぐらいなら、数日間の痛みに耐えてでも、接種する必要があるのは言うまでもないことですよね。
カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症
破傷風は放置すれば命の危険がある感染症ですが、その歴史自体は比較的古いものです。
だからこそ、治療に関してもかなり確立されているんですよね。
しかし、近年になってから見つかった犬の口腔内に存在している菌の中に、人間が感染すると命にかかわるほど重篤な症状を引き起こすものがあることがわかりました。
カプノサイトファーガ・カニモルサス
この菌に感染するのは40代以上の中高年が圧倒的に多いことが特徴の一つです。
犬や猫を通じてこの菌に感染すると、まずは頭痛、吐気、倦怠感などの症状があらわれます。
そしてもともと糖尿病や肝硬変などの疾患を持っていると重症化してしまい、敗血症や髄膜炎などを発症しやすくなるのです。
症状が進むと多臓器不全などを起こすことがあり、敗血症に至った患者の約30%、髄膜炎に至った患者の約5%が死亡していることから、犬の口腔内に生息している常在菌の中ではある意味最強と言えるのではないでしょうか。(破傷風菌は常在菌ではありません)
とは言え、菌自体の感染力は高くないため、噛まれた=即カプノサイトファーガ・カニモルサスを発症するわけではありません。
むしろ感染力事態はとても低い細菌なのです。
しかし、特筆すべきは、この感染症で死亡、または足や腕を切断しなければいけなくなった患者のすべてが犬に噛まれたわけではないことではないでしょうか。
なにげない触れあいの中で犬にキスをしたり、たまたま出来てしまった擦り傷を犬がなめたことで感染したという事実は、犬好きを震え上がらせるには充分です
愛犬がいくら可愛くても過度のスキンシップがNGとされているのは、こういった感染症の危険性があるからなんですね。
犬と人間は違う生き物
いくら愛犬が可愛くても、スキンシップにおいて線引きをしておくことは大切です。
それではまるでうちの犬が汚いみたいじゃないか!と不快に思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、感染症の問題はそういうレベルの話しではありません。
きれい、汚いの問題ではなく、犬と人間という異なる種類の動物が一緒に暮らしているという事実を、今一度認識しなおすべきではないでしょうか。
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