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突然死ほどつらい別れはない

この記事の目次

どんなに大切にしていても、愛犬との別れの日は必ずやってきます。
犬が生き物である以上、これは絶対に避けられません。

仮に病気一つしなかった犬が長生きをして天寿を全うしたとしても、愛犬との別れがつらくない飼い主さんはおそらくいないことでしょう。
しかし、もしもその別れがなんの前触れもない突然死という形でおとずれたとしたら――。

原因不明の突然死ほどつらいものはない

愛犬との別れは、ある程度覚悟ができた状態で訪れる場合と、なにひとつ覚悟ができていない状態で訪れる場合があります。
たとえば、16歳を超えたシニア犬が日々衰えていく様子を目の当たりにしていれば、遠からず訪れるであろう最期のときを想像することは難しくありません。
まるで植物が枯れていくように、生命をきちんと枯らしていく愛犬の姿は生命の終わりを予感させるものであり、無意識であっても飼い主は別れの日を覚悟するものです。
また、末期がんや腎不全などを患っている犬であれば、飼い主は日々の看病をしながらも、少しずつ最期のときが近づいていることを肌で感じることになるでしょう。

しかし、突然の別れはそういった覚悟をすることができません。
たとえば交通事故。
昨日どころかほんの一瞬前まで元気だった犬が、突然交通事故で命を落としてしまったとしたら、飼い主がその現実を受け入れるには相当の時間がかかるはずです。
ただし、交通事故によって突然愛犬の命が奪われてしまったとしても、死の原因そのものはわかっていることですよね。
なぜそのような状況を招いてしまったのかということも、飼い主は後悔も含めて把握することが可能でしょう。

だからこそ、原因不明の突然死は飼い主を苦しめるのです。
ただでさえ愛犬を亡くしてつらいのに、原因がわからない状態では気持ちのやり場が見つかりません。
愛犬を失うという悲しい状況の中で、これほど苦しいことはないのではないでしょうか。

突然死する犬の割合はおよそ1%

では、犬が突然死してしまう割合とは、実際にはどの程度なのでしょうか。
ペット保険のアニマル倶楽部の調べによると、犬が突然死する割合は1%程度とされています。
たった1%?それだけ?と思うかもしれません。
しかし、驚いたことにこの1%の突然死は、死亡原因の第10位です。

ちなみに1位~10位までの死亡原因は

1位 がん 54%
2位 心臓病 17%
3位 腎不全 7%
4位 てんかん発作 5%
5位 肝臓疾患 5%
6位 胃拡張・胃捻転 4%
7位 糖尿病 3%
8位 アジソン病 2%
9位 クッシング病 2%
10位 突然死 1%

この順位を見てわかるように、2位の心臓病と6位の胃拡張・胃捻転は突然死とは別にカウントされています。
心臓病や胃捻転は、場合によっては突然死として扱われる病気。
つまり、この1%は原因がまったくわからないまま、突然死んでしまった割合を表しているのです。

そう考えると100匹に1匹の割合で、原因が特定できないままなくなった犬がいることになります。
これを少ないととることは、どうにもできそうにもありません。

ある日突然死んでしまったトイプードル

犬の突然死と聞いて必ず思い出す犬がいます。
知り合いの女性が飼っていたトイプードルで、いわゆるティーカッププードルと呼ばれる極小サイズ。
その子は実に美しいレッドの毛色の犬で、成犬になっても2kgに満たないという小ささでした。

たしか、その子が1才を過ぎたか過ぎなかったかの頃だったでしょうか。
飼い主の女性が夜遅くに泣きながら電話をしてきました。
あわててかけつけると、すでにそのトイプードルは冷たい亡骸に。
話しを聞くと、いつもと同じように夕飯(ドッグフード)を食べさせていたら、食べている途中でなんの前触れもなく突然ぱたりと倒れてしまったのだとか。
びっくりして抱き起こすと、すでに呼吸は止まっていて心臓も動いていなかったそうです。

死亡原因は、病理解剖をしたわけではないのでわかりません。
しかし、亡骸を見る限りのどに食べ物を詰まらせた様子はなく、また苦しんでもがいた形跡も私には見つけられませんでした。
となると、やはり突然心臓が止まってしまったとしか思えないのです。

あの当時は極小サイズのティーカッププードルを作るために、とんでもないブリーディングが横行した時代。
いわゆる未熟児だった犬同士を掛け合わせることで、極小サイズを生み出すようなブリーディングがまかり通っていたのです。
未熟児は心臓に問題を抱えていることも多く、だからこそ体が標準サイズに満たない未熟児として生まれてきたのかもしれません。
そして、その心臓疾患の遺伝子を抱えた犬同士でブリーディングをすれば、心臓に問題のある子犬が生まれてきたとしても、なんら不思議はないですよね。
あの日突然死してしまったあの子も、もしかしたらそんなふうに心臓に問題を抱えて生まれてきた犬だったのかもしれません。

突然死は避けようがなくても、確率を減らすことはできる

上記の飼い主さんは、その後気持ちの整理をつけてから再びトイプードルを飼いましたが、もうティーカップサイズを選ぶことはありませんでした。

犬が生き物である以上、どんな疾患を持っているかはわかりません。
そしてどんなに大切に育てていようと、なんらかの原因で突然死することを100%防ぐことが難しいのは事実です。
しかし、突然死は避けることが難しい事態であっても、確率を減らすことはできるのではないでしょうか。
前述した女性が選んだ不自然に小さな個体は、標準的なサイズに比べると突然死のリスクが高かったであろうことは想像に難くありません。
そういう選択をしないだけでも、突然死に遭遇してしまう可能性は減らせるはずです。

前述の女性が後に飼いはじめたトイプードルは、成犬になったときの体重がおよそ6kgで、トイプードルとしては大きめのサイズでした。
この子は元気いっぱいに育ち、現在は10歳を超えていますが、いまだ元気の塊です。
そして彼女はあの日のショックをいまも忘れていません。