子犬を栄養不良にしてティーカッププードルを作る?

ブリーダーやペットショップ関係者の中には、ときどき耳を疑うようなことを言う人がいます。
先日、動物取扱業の講習会に参加したときのこと。
後ろの席に座ったブリーダー(話しの内容からそう判断しました)とペットショップ経営者がこんな会話をしていました。

「このあいだ生まれたトイプードルはあんまり小さくないんだよ。下手すりゃ5kgは超えちゃうかもしれないな」
「じゃあ、お客には生後4ヶ月になったら成犬用フードに切り替えろって言っておくか」
「ああ、そのほうがいいかもな」

……ものすごく残念なことに、これは実話です。

栄養不良で小さな犬に育てる?

生後4ヶ月になったら成犬用のフードに切り替えさせる。
それってつまりは栄養状態を不良にすることで、小さめのトイプードルを作ろうという発想ですよね。

常識のある人なら、「単に冗談を言っていただけなのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、残念ながらこの会話はおそらく冗談などではありません。

これは推測ですが、このペットショップ経営者は、話しをしていたブリーダーのところからそのトイプードルの子犬を仕入れることになっているのではないでしょうか。
そしておおかた「小さいサイズのトイプードルに育ちます」といううたい文句をつけ、値段を高めに設定して販売する腹積もりだったのでしょう。
ところが、どうやらあまり小さいトイプードルにはなりそうにもない……。
だったらあまり大きくならないよう、成長期に必要な栄養バランスで作られている子犬用のドッグフードではなく、成犬用のフードを早い段階から食べさせるよう飼い主さんに伝えると言っているわけです。

これ、何重にも恐ろしい話しだと思いませんか?
まず第一に、子犬期は体がどんどん成長していく大事な時期。
そんな重要な時期に、必要な栄養を充分に摂取できないように育てるよう、飼い主さんを指導するつもりです。

子犬が成長するということは、なにも手足だけが単純に伸びるわけではありません。
内臓も血液も骨格も、体中にある細胞のすべてが成長していくことなのです。
それなのにあえて栄養状態を不良にするなんて、健康な犬に育てるうえでマイナスにはなっても、プラスになることなんてなにもありません

そしてさらには、飼い主になる人を騙すことでもあるのではないでしょうか。
飼い主さんが期待しているのは、大人になっても小さいサイズのトイプードル。
大きくなりたくてもなれなかった犬のことではありません。

日本の市場では、小型犬は小さければ小さいほど価格が高い

そもそも、ブリーダーやペットショップがこういった暴挙にでてしまうのは、それだけ小さなトイプードルをありがたがる飼い主が多いからにほかなりません。
本来、ティーカッププードルなんて種類の犬はいないんです。
小さな犬をより小さく感じさせるよう、ペット業界が作り出した呼び名なんですよね。

日本人はプードルに限らず、小型犬は小さければ小さいほど価値があると考えている人が多いことに驚かされます。
いつだったか、トイプードルを飼いたいという人と話をしていたときに、想定している体重を聞いてびっくりしたことがあります。
成犬になっても2kg以下の犬が欲しいと言うのです。

そんな小さなトイプードルは、ある日突然心臓が止まってしまうかもしれませんよ、と言っても聞く耳持たずという感じでした。
そして結局50万円近い金額で希望通りの小さなトイプードルを購入しましたが、その犬は生後5ヶ月を過ぎた頃、ドッグフードを食べている最中に突然パタリと倒れ、そのまま息を引き取ってしまいました
作り話のような内容ですが、残念なことにこれも実話です。

健康だからこそ美しい犬になる

こういう飼い主さんがたくさんいるからこそ、どんな手を使ってでもブリーダーはトイプードルを出来る限り小さいまま成長させたいのでしょう。
もちろん、きちんとしたブリーダーやペットショップ関係者は、そんなことはしません。
しかし、金がからむと何をしでかすかわからないのが人間の業というものではないでしょうか。

ちなみに、イギリス人のブリーダーとトイプードルについて話しをしたことがあります。
彼女はなんの躊躇もなく、「標準体重は知らないけど、5~6kgはほしいわね。だってそれぐらいないと健康で美しいトイプードルにならないじゃない?」と言っていました。
さすがは犬の先進国筆頭とも言えるイギリスのブリーダーだと感心したことをよく覚えています。