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災害救助犬

この記事の目次

この数年、日本は多くの災害によって被害を受けました。
そのたびに、災害現場で働く災害救助犬の姿を報道で目にした人も多いのではないでしょうか。

災害救助犬は出動する現場によって3つに分類されています。

  • 地震救助犬→地震で生き埋めになった人を探す。
  • 山岳救助犬→主に雪山などで遭難した人を探す。
  • 水難救助犬→海や河川などで水難事故にあった人を探す。

災害救助犬は、下手をすれば自らがケガを負ってしまったり、命を落としかねない危険な現場で人の命を救うべく働いています。

災害救助犬と警察犬の違い

災害救助犬と警察犬は、どちらも「人を探す」という点では共通していますが、似て非なるものです。
警察犬は容疑者のような特定の人物を探すのに対し、災害救助犬は不特定の人間を探します
追いかけるにおいの種類も違い、警察犬は足跡や衣類などに付着した体臭を追うのに対し、災害救助犬は救助が必要な人の呼気や皮膚から剥がれ落ちたタンパク質などを含む、ストレス臭といった浮遊しているにおいを感知します。

つまり警察犬はピンポイントのにおいを、災害救助犬は大気中に漂っているにおいを拾っているわけですね。
どちらも人間にはとてもまねのできない、素晴らしい能力です。

初期の災害救助犬

私たち日本人が「災害救助犬」という存在を認識したのは、平成7年1月に起きた阪神淡路大震災からではないでしょうか。
阪神淡路大震災の現場にでたのは、海外から派遣された災害救助犬でした。
ところが、あまり成果を出すことができず、残念な結果に終わってしまったのです。

これは訓練法に問題がありました。
人間を見つけるとご褒美として食べ物がもらえるという方法で育成された災害救助犬たちは、災害現場に散乱していた食べ物に反応してしまったのです。

これは災害救助犬としては致命的なデメリットでした。
そのためこれを教訓として、日本では災害救助犬の育成に、食べ物に反応しない訓練法が確立されていったのです。

災害救助犬に向いているのはこんな犬

警察犬といえば、真っ先に思い浮かぶのがジャーマンシェパード。
では、災害救助犬といえば?
実は災害救助犬に特定の犬種はありません。
犬種よりその犬の性質や性格が大事なのです。

災害救助犬に向いている犬の性格は、人や動物などに対して攻撃性がないこと。
さらには嗅覚が優れている犬の中でもさらに嗅覚に優れていて、なおかつ災害現場で動き回れるだけの機敏さを持ち合わせていること。
加えて何かを探すことが大好きであり、集中力や忍耐力にも優れていることも大事です。
もちろん、災害現場はハードな場所ですから持久力も必要ですし、高いところや暗いところも怖がらず、さらには突然の物音や突発的な出来事にもパニックを起こさない精神力も求められることになります。

ここまでくるとわかりますよね。
そうです。
災害救助犬たちは、ものすごく優秀なスーパードッグなのです。

災害救助犬が危険でも現場で靴をはかない理由

報道や特集番組によって、多くの人達が一生懸命仕事をする災害救助犬のことを知るようになりました。
がんばれ!と応援する一方で、「あんな危険な場所を行ったり来たりして、災害救助犬たちは足をケガしないのだろうか?」と心配する人も多勢いたそうです。
その結果、「災害救助犬にも靴をはかせてほしいはかせるべきだ!」と言った声があがり、災害救助犬を派遣している団体にも多くの声が寄せられました。

そのように考える気持ちはよくわかります。
がれきの上を歩く犬たちを見ていたら、肉球が切れたりしないのだろうかとハラハラしますよね。
犬好きであれば、なおのことでしょう。
人間はガッチリ装備をしているのに、犬の足はむき出しのままなのか!?と腹立たしく思った人もいて、実際のところ、荒っぽい意見までがされたようです。

しかし、災害救助の現場で災害救助犬が靴をはかないのには、ちゃんと理由があります。
まず第一に、災害現場はぬかるみが多く、さらには倒木や瓦礫などが散乱しているため、靴をはくとかえって滑りやすくなり、爪による踏ん張りもきかなくなるので犬にとってはかえって危険です。
また、犬にとっては靴をはくこと自体がストレスになることもありますし、長時間はかせていると、体温を上昇させてしまう原因にもなります。
全身に汗腺が少ない犬にとって、肉球は数少ない汗をかける場所だからです。

ちなみに、国際的な災害救助犬団体においても、救助犬たちに靴をはかせることを義務化していません。
災害現場の状況により、ハンドラーの判断に任せる、というスタンスをとっているのは同じ理由からです。