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犬はエリザベスカラーが大嫌い!しかし早期完治のために欠かせない

この記事の目次

動物はケガをすると、傷口をなめて治そうとします。
もちろん、犬もです。
これは本能的な行動であり、唾液に含まれているリゾチーム(酵素)やラクトフェリン(糖たんぱく質)、免疫グロブリン(抗体)によって殺菌しようとしているのだとか。

とは言え、人間社会で暮らしている犬の場合、必ずしも傷口をなめることが治癒を早めることにはつながりません。
なぜなら動物医療による治療により、自然治癒より早い完治を目指しているからです。

だからこそ、手術の痕やケガ、皮膚病などの患部をなんとしてでもいじらせたくありません。
しかし、「そこは治療中だから絶対にいじっちゃダメよ!」と言い聞かせたところで、犬が聞いてくれるはずもなく・・・。

そこでエリザベスカラーを装着することにより、強制的に患部に触れないようにするわけですが、これがなかなかの苦行。
ほぼすべての犬がエリザベスカラーを嫌がるため、飼い主さんも四苦八苦するのです。

なぜ犬はエリザベスカラーを嫌がるのか

飼い主としては、一日も早くケガや病気が治るように愛犬にエリザベスカラーを装着するわけですが、当の犬にしてみれば迷惑もいいところなのでしょう。

まず第一に、顔の周りに変なものをつけられるせいで視野が狭まってしまうことが鬱陶しいのではないでしょうか。
耳を含めた顔回りを囲まれてしまうわけですから、音も聞き取りにくくなるはずです。

さらには移動するたびにエリザベスカラーが家具やら壁やらにぶつかってしまい、その衝撃はストレスそのもののはず。
エリザベスカラーが邪魔で水は飲みにくくなるし、ご飯を食べようとしたら食器にぶつかってしまうし・・・。
これで嫌がらない犬がいたとしたら、よほどのボンヤリさんか、もしくはとても体調が悪いかのどちらかではないでしょうか。

私たちだって、顔の周りにパラボラアンテナのような器具を装着して生活しなければいけなくなったら、煩わしさで放り出してしまいたくなるに違いありません。
だからこそ、エリザベスカラーでストレスを溜めまくっている愛犬が不憫になり、ついつい外してやりたくなってしまうのです。

しかし、そんなふうに犬が嫌がるとわかっているエリザベスカラーをあえて装着させるのは、装着させなければいけない理由があるからなんですよね。

エリザベスカラーを装着する理由とは

エリザベスカラーを嫌がる犬にあえて装着する理由。
それは、患部を悪化させることなく速やかに治癒させるため、の一言に尽きるのではないでしょうか。
傷口や手術痕、皮膚病といった患部を必要以上になめたりいじったりすると、治癒どころか炎症を起こして悪化させてしまうことにつながりかねません。

また、せっかくエリザベスカラーを装着して何日もがんばってきたというのに、傷口が治りかけているからもういいかなと、獣医師に無断で装着をやめてしまう飼い主さんがいます。
治りかけの傷って痒いですよね。
せっかく、あともう少しで完治するはずだったのに、エリザベスカラーを外したばかりに掻き壊してしまったら、元も子もありません。

確かに愛犬がエリザベスカラーを嫌がる姿は可哀そうで、見ているこちらも辛くなります。
しかし、最短で傷を治すためには、心を鬼にすることも必要なのではないでしょうか。

最強のエリザベスカラーはオーソドックスなベル型

エリザベスカラーといえば、最もオーソドックスなのはベル型と呼ばれるメガホンのような形をしたタイプです。
ポリエステルやプラスチック樹脂製のものが多く、硬すぎず柔らかすぎずでそれなりに強度があることから、壁や家具にぶつかってもそう簡単には変形しません。

このタイプの最大のメリットは、しっかりと犬の動きを制限できることです。
サイズの合ったものをきちんと装着できていれば、頭からシッポの先まで、全身のどの部分も引っ掻いたりなめたりすることはまず不可能。
しかし、その分犬が感じるストレスも大きいため、飼い主さんがしっかりとサポートしてあげる必要があります。

また、首のサイズに合わせて留めることができるマジックテープはとても便利なものですが、剥がすときのバリバリという音が苦手なワンコがいます。
スナップボタンを留めるタイプも同様に、バチンバチンという音がするんですよね。
こういった、人間にとっては大したことではないことも、犬には大きなストレスになることがありますので、そのあたりをしっかりとサポートしてあげたいところです。

ベル型よりストレスの少ないドーナツ型のエリザベスカラー

ドーナツのように真ん中の穴があいている部分に首を入れて装着するタイプが、ドーナツ型のエリザベスカラーです。
このタイプはドーナツ部分の幅にかなりの違いがあり、ドーナツの幅が狭ければ狭いほど、装着によるストレスも小さくなります。
さらには材質も布などの柔らかいものを使っている製品が多いため、幅広のタートルネック感覚での装着が可能なことから、お水を飲んだり食べ物を食べたりすることも、通常とほぼ変わらずにできるところがメリットです。

しかし、それだけ行動の自由度が高いということは、患部の場所によっては犬の口や足が届いてしまうんですね。
ガードできる範囲は後頭部から首と背中程度に限られるため、患部が四肢やシッポにある場合、ドーナツ型のエリザベスカラーは不向きです。

また、目や鼻、口といった顔面に患部がある場合も、ドーナツ型は適していません。
たとえ足ではかけなくても、顔面を床や壁にこすりつけてしまえるからです。

顔面の保護にはチューリップ型が一番安心

チューリップ型のエリザベスカラーは、ベル型と似ていますが横への張り出し方に違いがあります。
ベル型はパラボラアンテナのような形で横に張り出していますが、チューリップ型は顔に筒をすぽっと取り付けたような形。
つまり、横には張り出していませんが、前方に長い形状をしています。

これは目や鼻、口といった顔面にある患部を保護するためなんですね。
犬は顔面を掻こうとして前足が届かないと、床や壁、クッションなどに顔をこすりつけてなんとかしようとします。
チューリップ型ならそういう行動も阻止できますので、顔面の保護には一番安心。

最大の難点は、飲水も飲食も装着中は自力でできないことでしょうか。
つまり、脱水にならないよう飼い主が飲水をコントロールする必要がありますし、食事中は顔を掻かないのように見張っていなければなりません。

正直に言えば、飼い主としてはかなり手間のかかるエリザベスカラー。
しかし目の疾患の場合、引っ掻いてしまったことによる失明を防ぐことができると考えれば、実はとてもありがたいエリザベスカラーではないでしょうか。

ちょっと変則的なウェア型

エリザベスカラーとはそもそもの装着方法が違うものですが、患部を保護するという意味では同列にあるのがウェア型。
術後服ともいいます。
洋服のように着せてしまうことで、胴体にある患部をいじらせないためのものですね。
洋服とまったく同じ感覚で着せられるため、犬にとっては最もストレスのないエリザベスカラーといえるでしょうか。

ただし、洋服がカバーできない部分にある患部にはまったく効果を発揮しません。
そう考えると、去勢や避妊、もしくは開腹手術や椎間板ヘルニアの手術痕といったように、胴体にある患部にのみ有効です。

犬は順応する生き物

エリザベスカラーを装着した犬は、当初嫌がって大暴れすることがあります。
歩くたびにあちこちにぶつかってイライラし、寝る時はまともに寝返りをうつことすらできず、またイライラ・・・。

しかし、2~3日もすると意外なほど順応していくことがほとんどです。
乗り越えられるか否かは飼い主さんのサポート次第。
一日も早く完治させるためにも、心を鬼にしてエリザベスカラーに慣らすしかありません。