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犬も脳梗塞を発症する!早期発見のためにできること

この記事の目次

人間とは違い、犬の場合は脳血管障害があまり起こらない――。
かつては、そのように考えられてきました。
ところが動物医療が発達し、CTやMRIといった高度な検査機器で犬の体を精密検査するようになった現在、犬の脳血管障害が診断されるようになったのです。

犬たちの寿命が飛躍的に伸びているいま、脳血管障害はもはや他人事ではなくなりました
愛犬がいつの日かかならず老犬になることを考えると、私たち飼い主は犬の脳血管障害について知っておくべきではないでしょうか。

犬に発生しやすい脳血管障害は脳梗塞

脳血管障害とは、その名前の通り、脳内の血管になんらかの障害が生じることです。
つまりは脳内の血管が破れたり詰まったりすることにより、脳の組織にダメージが起きてしまった状態のことですね。

  • 脳出血・・・脳の動脈が切れて脳内に出血が起きたことによって生じる病気。
  • 脳梗塞・・・脳の血管が詰まって血流が途絶え、脳の神経細胞が死んでしまう病気。
  • くも膜下出血・・・脳を覆っているくも膜と軟膜の隙間に出血が起きた状態。

人間の場合の脳血管障害は主に上記の3つに分類されますが、犬の脳血管障害においては、その多くは脳梗塞であるといわれています。

犬の脳梗塞の原因

犬の脳梗塞の原因は、実ははっきりとは解明されていません。
とはいえ、おそらくは人間が脳梗塞を起こす原因と、大差はないだろうと推測されています。
なぜなら、一昔、二昔前に比べて室内で暮らす犬が圧倒的多数を占めるようになり、それとともに犬の脳梗塞も診断されるようになったからなんですね。
つまりは、犬の食べ物がある意味とても人間の食事に近寄ってしまったことが、犬の脳梗塞の大きな原因ではないかと推測されているわけです。

もちろん、犬の脳梗塞の原因が100%食事だと言っているのではありません。
運動不足であったり、ストレスであったり。
もしくは心臓病、甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症といった持病が原因の可能性もあります。
さらには腫瘍の転移、腫瘍細胞による血管の閉塞、感染した寄生虫が原因ということもありえるでしょう。

なにはともあれ、カロリーオーバーになりがちな食事や塩分の摂り過ぎは、間違いなく犬の脳梗塞を引き起こしてしまう大きな要因。
そのことを飼い主は肝に銘じておく必要があるのではないでしょうか。

脱水も脳梗塞の原因

人間の脳梗塞と同様に、脱水が犬の脳梗塞を引き起こす可能性があります。
犬は汗をかかないから、体内の水分は失われにくいのでは?……などと考えて油断をしていると、犬はあっという間に脱水を起こしてしまう生き物なんですよね。

そもそも、暑さに弱い犬があまり汗をかかない状態で、どうやって上昇した体温を下げていのか。
それは、舌をだらりと出してハァハァと息をすることで、唾液の気化熱を利用して放熱しているのです。
さらには尿を出すことも、体内にこもった熱を放出するのに効果的。

だからこそ、体内の水分が足りなくなってしまえば、犬は気温や室温の影響を受けて上昇してしまった体温を下げることができません。
そして、水分が失われた体の中を流れる血液はドロドロ状態になり、その結果、血管の詰まりを誘発しやすくなって脳梗塞を引き起こしてしまうのです。

犬の脳梗塞の症状

犬の脳梗塞の症状は、血管の詰まりが起きている部位によって症状が異なります。

大脳に脳梗塞が起きているときの症状
  • 飼い主が叱った覚えもないのに、なぜかふさぎこんでいるような表情、態度をみせる。
  • 意思とは関係なく体が細かく震えている。
  • その場でぐるぐる回っている。
  • 体の片側だけが動いていない、もしくは動きがおかしい。(体の麻痺)
  • 嗅覚が極端に悪くなったように感じられる。(嗅覚の麻痺)
小脳に脳梗塞が起きているときの症状
  • 四肢の動きがばらばらで統制がとれておらず、まともに歩くことができない、もしくは歩けたとしてもふらついている。
  • 立ち上がることが困難になっている。
  • 首が傾いたままの状態でずっといる。
  • 眼球が揺れ動いたり、ぐるぐると回っていて焦点が合わない。

大脳に脳梗塞が起きている場合、その症状だけを見るとなかなか脳梗塞には結びつけにくいところがあります。
だからこそ、愛犬とあまり一緒の時間を過ごせていないと、ふさぎこんだ態度などは見逃してしまいがち。
体が小刻みに震えていたとしても、寒いのかな?と勘違いしてしまうこともあるでしょう。
そもそも、犬は脳梗塞が原因で四肢などに痺れを感じても、言葉でそれを伝えるすべがありません

このように、ただでさえ脳梗塞はとても厄介な状態だというのに、さらに危険なのは小脳に起きてしまった脳梗塞。
小脳は身体の運動調節などに関係している部位だけに、脳梗塞が起きてしまった場合は、後遺症が残ってしまう可能性が高いのです。

犬の脳梗塞の診断

犬の体に脳梗塞が起きていると診断するためには、MRI検査が欠かせません。
つまりは、検査機器のある病院でないと正確な診断ができないわけです。

しかし、それ以前に最も重要なポイント。
それは、脳梗塞によって犬の体に起こっているなにがしかの異変を、飼い主が出来る限り早急に気づくことです。
犬の脳梗塞は、発症したとしても3時間以内に適切な処置を施すことができれば、悪化を避けられる可能性が高くなると言われています。
つまり、後遺症が残らないように迅速な処置ができるか否かは、飼い主が発症後3時間以内に発見できるかどうかにかかっているわけですね。

人間であれば、「なんだか手が痺れて変な感じがする」だとか、「上手くろれつが回らない」といった症状を家族に訴えることもできるでしょう。
しかし、犬は言葉で体の異変を説明することができません
だからこそ、「あれ?変だな」と思う体の状態に気づいたら、迷わず動物病院に連れていくことがなによりも大切なのです。

犬の脳梗塞の治療

犬の脳梗塞は、症状が起きてからどの程度時間が経過したかによって、治療内容が違ってきます。
発症してから比較的すぐ(3時間以内)に治療を開始した場合

血管の詰まりを取り除くために、血栓溶解剤を用いた治療が開始されます。
ただし、血栓溶解剤には副作用があるため、慎重に投与されることになるでしょう。

発症してからある程度の時間が経過した後に治療を開始した場合

発症してから3時間以上が経過していると、血栓溶解剤による治療ができません。
そのため、症状を軽減するための治療――いわゆる対症療法が中心となります。
抗血小板薬の点滴によって血液をサラサラにしたり、脳へのダメージを軽減するためにステロイドが投与されたり、脳圧を軽減するために利尿剤が投与されます。

脳梗塞というと、人間の場合は外科手術も視野に入れますよね。
しかし、犬の脳梗塞の場合、外科手術はまだ一般的ではありません
獣医学部のある大学付属の動物病院では可能性があるかもしれませんが、基本的に一般的な治療としては、犬の脳梗塞では手術は選択しない、と考えておくべきでしょう。

犬の脳梗塞の予防

犬の脳梗塞は原因が特定できていない以上、完全なる予防法は存在していません。
とはいえ、私たち飼い主が愛犬の脳梗塞を防ぐためにできることはいろいろとあるはずです。

まず第一に、絶対に脱水症状を起こさせないこと
もちろん、塩分過多やカロリーオーバーといった食生活の乱れはご法度です。
さらには運動不足にならないよう、日頃から愛犬の体調をしっかりと管理しておく。
こういった犬を飼ううえではごく当たり前のことが、実は愛犬の脳梗塞を予防するうえでとても重要なんですよね。

そして老犬は、人間と同様に脳梗塞を起こしやすい状態にあります。
愛犬がシニア世代に突入したら、今まで以上に体調の変化に気をつけることこそが、脳梗塞の早期発見につながることは間違いありません。