純血種という名の雑種
純血種と雑種の違いについて考えたことはありますか?
俗な言い方をすれば、純血種は値段が高くて、雑種はただでもらってくる犬――。
まあ、あながち外れてはいませんが、
最近は人気犬種同士のミックス犬が高い値段で販売されていますから、
雑種=無料というわけでもありませんよね。
では、血統書のついている犬が純血種で、血統書のない犬が雑種?
これもまあ間違いではありませんが、正解というわけでもありません。
一般的に純血種と呼ばれる犬種の犬だって、
血統書発行団体に登録していなければ血統書はありませんし、
最近では雑種の血統書を発行する団体もあるのだとか。
そもそも、純血種っていったいなんなのでしょうか?
公認・非公認をあわせた犬の種類数は?
現在のところ、世界的に犬種の数はおおよそ700から800ぐらいといわれています。
これにはもちろんJKCやAKCなどの血統書発行団体が公認していない、
いわゆる非公認犬種も含まれていますので、
どうしても「おおよそ」という言い方をするしかありません。
2015年1月の段階で国際畜犬連盟(FCI)に公認されている343犬種のうち、
ジャパンケネルクラブ(JKC)に登録されている犬種数は194。
つまり、世界的には一応公認犬種になっている犬でも、
JKCに登録されていない(≠日本にはいない)犬種が149種もあるわけですね。
純血種という名の雑種
ところで、純血種と聞くと多くの人はご先祖様から現在に至るまで、
ずっとその犬種のみで代々続いている血統、
というようなイメージを持つようですが、実はこれは大間違い。
公認、非公認にかかわらず、ほとんどの犬種は
人間がいろいろな犬種を掛け合わせて作り出してきた、多犬種による合作です。
たとえば、ミニチュアシュナウザーはミニチュアシュナウザーという犬種の犬として
血統書が発行されるわけですが、作出されたのは19世紀のこと。
主にネズミ捕りを目的としてスタンダードシュナウザーと
アーフェンピンシャーを掛け合わせて作られたといわれています。
さらにプードルも混ざっている可能性がありますし、
ホワイトの毛色にいたってはマルチーズが使われているかもしれません。
シェトランドシープドッグ(シェルティー)は
コリーやボーダーコリーの祖先犬となった犬に
キングチャールズスパニエルやアイスランドの犬を混ぜて改良し、
現在の種に固定したのだとか。
こんな調子で、多くの犬種は能力や体格、見た目などを含め、
人間がなにがしかの目的のためにいくつかの犬を掛け合わせて作り上げてきたのです。
純血種は自慢するためのものではない
古い犬種といわれるアフガンハウンドでさえ、
長い間本当の意味での純血種として生きてきたものを、
18世紀以降イギリスに持ち込まれた後に
違う犬種と交配することで改良がされています。
人間が他の生物の性質を自分たちの都合のいいように変化させる――。
このことの是非を論じるのは別の機会にするとして、
とりあえず「うちの犬は純血種だから貴重だけど、あっちの犬は雑種だから…」
などと身分に違いがあるような感覚でいる人には声を大にして言いたくなります。
あなたの犬もいくつかの種類を混ぜて作られた、
純血種という名の雑種ですよ!――と。
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