避妊手術という選択を感情論だけで語ってはいけない

女の子として生まれてきたんだから、一度ぐらいは子犬を生ませてあげたい――。
2匹目を飼うとしたら可愛いこの子が生んだ子犬を飼いたい――。
病気でもないのに体をメスで刻むなんて可哀想でできない――。

メス犬を飼い始めた飼い主が比較的よく口にする言葉です。

犬を飼う以上、オスであろうがメスであろうが、発情を避けて通ることはできません。
避けるためには、早い段階での避妊手術・去勢手術が必要になるわけです。
その結果、前述のような発言になるわけですが…。

人間と犬を同じ感覚で語るのはナンセンス

女として生まれたんだから、一度ぐらいは子犬を生ませてあげたい――。

では、子犬を生まないメス犬は不幸なのでしょうか?

本当に不幸なのは、人間社会のルールでしか生きられない『犬』として
生まれてきたのに、人間に愛されない犬
です。

安易に子犬を生ませた結果、飼い主を探すことができなかった
その子犬達の運命はどうなるのでしょうか。


そんな風に、せっかく生まれてきたのに殺処分になってしまう命は少なくありません。

2匹目は可愛いこの子が生んだ子犬を飼いたい――。

優秀な血統だから残したい、ドッグショーで勝てる犬を生ませたい…などなど、
人間の思惑によって子犬を生ませる場面は多々あるわけですが、
少なくとも愛犬が産んだ子犬ならさぞ可愛いだろうという感覚だけで
子犬を生ませようとする人に聞いてみたいことがあります。

その犬が産んだ子犬でなければ2匹目として愛せませんか?

出産を経験させることによって
その愛犬が病気にかかる確率が高まるとしても、
それでも子犬を生ませたいですか?

病気じゃないのに体にメスを入れるなんて――。

メス犬の発情と生理は、人間の女性の生理とはメカニズムが違っています。

犬は生理がくるたびに人間以上にホルモンの影響を全身に受けることになりますから、
その結果発情(生理)を迎えるたびに、卵巣、子宮、乳腺など
女性特有器官の疾患リスクが高まっていきます。


同じ子犬を生んだことがないメス犬でも、
1歳の子の乳房に比べて5歳の子の乳房が大きく見えるのは、
発情のたびに膨らんでは元に戻り……を繰り返していくからです。

病気でもないのに避妊手術をするのが可哀想だと安易に口にする人は、
子宮蓄膿症や卵巣腫瘍、乳腺炎や乳腺腫瘍で苦しむ犬を見たことがないからです。

子犬を生んでも生まなくても、病気にかかる確率をゼロにすることはできません。
しかし、少なくとも発情前に避妊手術をすることで、
女性器官特有の病気にかかる確率をかなり低くおさえることは可能
なのです。

避妊手術や去勢手術は可哀想――。
簡単にそう口にする前に、どのように暮らすことが、どのように生きさせることが
愛犬にとって幸せなことなのかを、今一度考えてみるべきではないでしょうか。