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ブルーマールという毛色と、悲惨な乱繁殖

この記事の目次

つい最近、ホームセンター内のペットコーナーをのぞいていて、びっくりしてしまいました。
チワワのブルーマールと、ボーダーコリーのブルーマールの子犬が販売されていたからです。

10年ほど前には、おそろしい頻度で生み出されていたブルーマールの犬たち。
しかしその危険性が叫ばれるようになったからなのか、それとも値段が高すぎて子犬が売れなくなり、売れない毛色は作らないよ、というブリーダーが増えたからなのかはわかりませんが、とにかくここ最近は比較的見かけることが少なくなっていた毛色です。

ブルーマールがなぜ難しい毛色なのか

ブルーマールという毛色は、確かにとても美しいですよね。
独特のまだら模様はもちろんのこと、青みがかったシルバーの毛が神秘的で、まさに大理石を思わせる被毛です。

しかし、この美しい毛色を発現させる遺伝子の取り扱いがなかなかに厄介。
ブルーマールにしろチョコマールにしろ、発現させるキーとなるのはマーリング遺伝子と呼ばれるもので、この遺伝子には元の色を希釈してしまう作用があります。
つまり、青みがかったシルバーに見える毛色は、本来はブラックだったものをマーリング遺伝子が作用した結果、ああいう斑模様や色になっているんですね。
同様に、チョコマールは濃いチョコレート色になるはずの毛がマーリング遺伝子によって薄い色を発現させています。

だからなんだ?と言われそうですが、よく考えてみてください。
マーリング遺伝子は本来あるべき色を薄めているわけです。
これが作用しすぎたらどうなるのか、考えたことはありますか?

ブルーマールをたくさん生ませようとした結果

ブルーマールの母犬とブルーマールの父犬で交配すると、単純に確率だけの話しをするなら、少なくとも50%の子犬がブルーマールとして産まれてきます。
では残りの50%はといえば、そのうちの25%はマールではない毛色に。
そして、25%は白が多すぎるダブルマールという、マール遺伝子を強く持ちすぎる子犬が産まれる可能性があります。
このダブルマールの犬には、かなりの確率で先天性の奇形がでてしまい、その多くは死産になるか、生きて生まれてきても長生きはできません。

たとえば、ブリーディングや毛色に関する知識のない人がマール同士を交配させてしまい、生まれた子犬を見て初めて自分がしでかした愚かな行為に気づくことがあります。
しかし、ブリーダーが意図的に行う場合はそうではありません。
マール同士で交配し、マールとして生まれてきた子犬は高値で販売。
マールではない普通の毛色で生まれてきた子犬はマールより安値で販売。
そして、ダブルマールの子犬は廃棄処分してしまうのです。

ブルーマールの今

そういう、ふざけるな!と言いたくなるような乱繁殖によって不幸な子犬が多く生み出された結果、FCI(国際蓄犬連盟)において、チワワのブルーマールは非公認カラーとなりました。
またJKC(ジャパンケネルクラブ)においても、チワワのブルーマールは認められない毛色とされ、血統書に記載はされますが、×印がつけられてしまいます。
ブルーマールが発現する犬種はチワワだけではありませんが、とりあえずチワワは人気犬種になってしまったがゆえに、乱繁殖があまりにもひどかったことの結果なのでしょう。

珍しい毛色だから、という理由だけでマールを選ぶのだとしたら、少なくとも毛色にまつわるリスクのことと、悲惨なブリーディングの実態があることを知ったうえで、それでもその毛色が欲しいのかを今一度よく考えるべきではないでしょうか。