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きちんと飼育管理していてもパルボが発症した犬舎

この記事の目次

ブリーダーにとって最悪の事態――。
それは、犬舎内の犬がパルボウィルスに感染してしまうことです。

生まれた子犬がパルボを発症し、そのうえ子犬が売却済みで
すでに代金が支払われていたりすると、もうお先真っ暗という気分になるかもしれません。

パルボに感染するということの誤解

ところで、パルボがとても恐ろしいウィルス感染症であることは
犬を飼う人間であればよく知られていることですが、
その情報内容が必ずしも正しく伝わっているとは思えません。

パルボがでた犬舎は衛生管理がいい加減で、悪徳ブリーダーの証拠だ――。
パルボと聞いただけでこんなイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。

もちろん、まさしくその通りのブリーダーというのは少なからず存在します。
こういう場合はブリーダーというより、
むしろ子犬工場パピーミルと呼んだ方がふさわしい犬舎なのかもしれません。

しかし、そういう子犬を生産するかのごとくブリーディングする犬舎ではなくても、
犬がパルボに感染してしまうことはある
のです。

新築で衛生管理がしやすい犬舎のはずだったのに…

実際に起きた例です。
ジャーマンシェパードのブリーダーは、
かねてからの念願だった新しい犬舎を町村部から離れた山の中に新築しました。

優秀な警察犬を何頭も生み出してきたその犬舎では、
さらに良い環境を作るべく広々とした運動場を併設した犬舎を作ったのです。

ところが、その犬舎で稼動が開始されてから
わずか数ヵ月後にパルボウィルス感染症が発症しました。

そのときに生まれていた子犬7匹すべてが
パルボウィルス感染症を発症してしまったのです。

当事犬舎に在籍していた12頭の成犬にはすべて
伝染病予防混合ワクチンが接種されていました。

また、外部から犬を預かったり、見学者などが訪れたという事実もありません。
それなのに、なぜパルボウィルス感染症は発症したのでしょうか?

原因を調査しましたが、なかなか判明しませんでした。
その土地の獣医さんにも協力していただいていろいろと調査をしたのですが、
近隣でパルボにかかった犬はいませんでしたし、
犬舎の関係者のところにもパルボが発症した報告はありませんでした。

感染源は野生のキツネ?

そしていろいろと検討した結果、
感染源は野生のキツネではないかという疑いがあがったのです。
その犬舎を建築した山には野生のキツネが生息していました。

キツネ達は成犬のいる犬舎に近づくことはなかったようですが、
子犬を集中管理する棟にはしのびこまれたことがあったそうです。

とはいえ、キツネが確実に感染源だったという証拠があるわけではありません。
あくまでも可能性の話しではありましたが、
急きょキツネが近寄れないように犬舎の周囲に対策を施しました。

もちろん毎日犬舎のありとあらゆる場所を消毒する作業に加え、
通常の犬の世話とパルボを発症した子犬の看護もあるわけですから、
ブリーダーにとっては地獄の数週間だったと思います。

それにしても、あれほどまでに飼育管理をしていても
パルボが発症することはある
のだと目の当たりにし、
あらためてパルボの脅威を感じたものです。

ちなみに、子犬7匹は全匹助かりました。

この子達はパルボウィルス感染症で生死の境をさまよった結果、
最強の免疫を手に入れて生還したのです。