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人間の不必要な介入が犬同士の関係を歪めている

この記事の目次

犬は本来、群れを作って生きる動物。
これはオオカミだった時代からの名残なわけですが、おそらく私たちが考えている以上に、その習性は遺伝子の中に残されています。

ところが、私たち人間はついつい犬を擬人化して見てしまいがち。
そしてその勘違いが、犬同士の健全な上下関係に水を差してしまうことがあるのです。

飼い主が犬の健全な縦社会を歪めてしまう

多頭飼育をしていると、犬それぞれの個性が見えてくるもの。
そして必ずといっていいほど、強い個体から弱い個体まで、力関係には差が生まれてくるものです。

これは、考えてみればごく当たり前のことなんですよね。
犬の社会においては強いものは強く、弱いものは弱い。
強いから良い、弱いから悪いということではなく、ただたんに強いものと弱いものがいるというだけのことなんです。

そして犬の世界は強いものが上位で弱いものが下位。
明確な縦社会を形成するのが普通です。

ところが人間の世界はといえば、みんなが平等であることが奇妙なほどに推奨されていますよね。
そして、しばしば飼い主はこのきわめて人間的なルールに犬をあてはめようとします。
その結果、犬同士の関係を歪めてしまうことに。

たとえば、強い犬が弱い犬のオヤツを横取りしたとします。
ここに飼い主が介入し、「横取りしちゃダメでしょ!何で意地悪をするの!!」などと言って叱る行為は、弱い個体を思いやっているようでいて、実は強い犬に理解不能なストレスを与えているだけなんですよね。

これは「弱い子を守ってやった」という飼い主の自己満足でしかありません。
強い犬が弱い犬から食べ物を奪い取るのは、ある意味当たり前のこと。
飼い主がどうしても介入して弱い個体を守りたいのであれば、強い犬を叱るのではなく、強い犬にばれない場所で弱い犬にオヤツをあげるなりするほうが、ずっとマシなんです。

強い犬が正しく教育している場面を襲っていると勘違いしてはいけない

多くの犬が集まるドッグランなどでは、常連の犬達が仲良くしている姿を目にすることも珍しくありません。
そういう集団もまた、よくよく観察してみると上下関係を形成していることがわかるはずです。

いわゆるリーダー的な存在の犬がいる一方で、常に控えめに従っている犬もいることでしょう。
そして、若い犬が調子に乗ったときなどは、このリーダー的な犬が戒めることもあります。 もしくは、新参の犬が他の犬をきちんと尊重しなかったときにも、リーダー的な役割の犬は怒るはず。

こんなとき、犬同士がケンカになったら困るからといって、人間が仲裁しようとすることがあります。
しかし、これではせっかくの教育の場面が台無しになってしまうんですよね。
この手の飼い主さんは、往々にして「犬がケンカをする=噛みあって流血沙汰になる」と考えてしまいがち。
ところが犬同士の教育は、基本的にはそこまでエスカレートすることはそう多くはありません。

ただし、ここに上位の犬から注意されたことのない、人間に甘やかされるばかりの犬と、犬を犬として扱わない無知な飼い主が混ざってしまった場合、話しは別です。
きちんと怒られることも謝ることも知らない犬が大騒ぎをした結果、他の犬を不必要に興奮させてしまい、結果として大騒ぎになることは充分にありえることです。
そして、犬社会のルールを無視する飼い主に限って、「あの犬がうちの子をいじめた!」などと騒ぎたてるのですから、性質(たち)が悪いことこのうえありません。

犬を犬として扱うことが最も尊重していることになる

犬は賢い生き物です。
そして、人間と暮らしている犬は驚くほど人間のような反応を示すことも。

しかし、どれだけ「まるで人間」のような素振りをしたとしても、犬は犬であって人間ではありません。
愛犬を大切にしているから人間扱いをしようとする飼い主さんがいますが、本当に尊重しているのであれば、犬は犬として扱うべきです。
犬としての習性や特性を無視して人間扱いすることは、飼い主の自己満足でしかありません。