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愛犬の血液検査の結果をきちんと見ていますか?血球検査の見方

この記事の目次

動物病院で愛犬が血液検査をしたとします。
何か異常が見つかった場合は別にして、これといって数値に問題がなかった場合。
たいていの飼い主さんは、「何も異常がなくて良かった!」とまずは安心するのではないでしょうか。
そしてその後は、手渡された血液検査の中身を一つ一つじっくりと確認はせずに、とりあえず引き出しにしまい込んでしまう・・・。

まあ、実際のところは検査結果を詳しく見ようにも、何が何やらわからないから見ても仕方がない、と思うのかもしれません。
とりあえず目を通したとしても、わかるのは赤血球だとかヘモグロビンという名称ぐらい。
PCVだのTPだのといった見慣れないアルファベットや、5.5~8.5だとか、37~55といった謎の数値を見たところで、確かによくわかりませんよね。

もちろん、そのままスルーしたとしても、特に問題はないのかもしれません。
異常は見られなかったと獣医さんが言っているのですから、それに従うまでのことです。

しかし、この血液検査の結果。
実は愛犬の体の中身がまるごと映し出されている、重要情報そのものなんです。

血球計算検査と血液生化学検査は何が違う?

血液検査の結果にざっと目を通してみると、たいていの場合は検査項目が大きく二つに分けられています。

血球計算検査

完全血球計算、全血球計算、もしくはCBCと表示されていることもあります。
犬の体の状態を調べるうえで、最もよく行われる血液検査がこの血球計算検査。
血液中に含まれている血球(赤血球、白血球、血小板)の数量や割合が示されています。

血液生化学検査

血液から血球を取り除いたあとに残ったもの――血漿(けっしょう)の成分や含まれている酵素の量などを測定し、そこから腎臓、肝臓、膵臓といった臓器の状態について調べる検査のことです。

動物病院で一般的に受ける血液検査においては、上記の「血球計算検査」と「血液生化学検査」の数値が記載されていることがほとんど。
しかし、場合によっては「血液塗抹検査」の結果が表示されることもあります。
ただし、この検査はすでに貧血の症状が見られていたり、なんらかの原因によって白血球の増減が予想される、もしくは血小板の数に異常がみられるのではないかと判断されるような場合に実施される検査。
そのため、通常は一般的な血液検査の結果にこの項目が示されることは、ほとんどありません。

血球計算検査の中身をひも解いてみると…

血液といえば、私たち人間も犬も共通して、その色は「赤」。
これ、実は血液の色そのものが赤い色をしているわけではなく、含まれている赤血球が赤い色をしているからなんですね。
そして、なぜ赤血球が赤いのかといえば、酸素を運搬する役目を持つ複合タンパク質――ヘモグロビンが赤い色素を持っているからです。

ちなみに白血球はその名の通り白く、血小板は黄色。
つまり、血液中から赤血球を取り除いたら、血液には見えない黄色っぽい液体になる、というわけなんです。

さて、そんな血球軍団の数量や割合が示されている血球計算検査ですが、さらに詳しくその内容を見ていくと・・・
(※正常値に続くカッコ内の記号は単位)

RBC(赤血球数)

おなじみ赤血球の働きといえば、体の細胞という細胞すみずみにまで酸素を届け、さらには不要になった炭酸ガスを回収してくることです。
そんなRBCの数値ですが、犬の場合正常値とされているのは5.5~8.5(10e6/μl)
なんらかの原因で体が脱水を起こしている場合は赤血球の数値が増加し、貧血の場合は減少しています。

PCV(赤血球容積比)

血液全体における赤血球の容積を割合として示した値です。
犬の正常値とされているのは37~55(%)
割合が低ければ貧血、高ければ脱水などによる血液の濃縮や、赤血球増加症(多血症)の疑いがあると考えることができます。

Hb(ヘモグロビン量)

Hbとは血色素(ヘモグロビン)のことです。
犬の正常値とされているのは12~18(g/dl)
この数値が高ければ脱水、低ければ貧血などの疑いがあると考えられます。

WBC(白血球数)

白血球には好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球、単球があり、それらの合計を白血球数として表しています。
そんな白血球の役割は、体を細菌や異物などから守ること。
犬の正常値とされているのは6000~17000(μl)
この数値を超えていると体内の炎症、異物の侵入や感染、もしくは強いストレスを受けている可能性があります。
また、正常値より低い場合はビタミンの欠乏症やパルボウィルス腸炎、汎白血球減少症などの疑いが。
こういった病気の可能性がある場合は、血液塗抹検査によって、より詳しく調べることになるでしょう。

PLT(血小板数)

血小板はPlatと記載されていることもあり、止血作用にかかわる血球です。
犬の正常値とされているのは200~500(10e3/μl)
この数値より高いと免疫疾患や急性失血、もしくは慢性の感染などの疑いがあります。
また、低い場合も自己免疫疾患やビタミン欠乏症のほかに、薬物中毒などの可能性も疑われます。

愛犬の体の中の情報を見逃さないで!

血液検査の中でも、最も基本の部分ともいえる血球計算検査。
それだけをとっても、これだけ様々な体内の情報がわかるのです。

仮に毎年どの数値も正常値内でおさまっているとしても、すべての数値が前回とまったく同じということはありえません。
つまり、それはその時その時で愛犬の体内にはなにがしかの変化が起きているからであり、きちんと把握しておくことで、将来的にかかりやすそうな病気を予測する手がかりになるかもしれません。
異常値を示してから正常に戻すより、日ごろから正常値内におさまるよう予防を講じておくほうが、間違いなく健康で長生きにつながるのです。