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狼犬――ウルフドッグ

この記事の目次

狼犬――ウルフドッグとは、その名の通りオオカミとイヌが交雑された個体のことです。
オオカミとイヌは遺伝子のほとんどが一致しているため、交雑することができるわけですね。
そして、どの程度の割合でオオカミの血が入っているのかにより、外見や性質などに違いが生じます。
オオカミの血が75%(4分の3)入っているものは、ハイパーセントと呼ばれて特に狼犬の愛好家からはもてはやされています。

JKCが公認しているウルフドッグは2種類だけ

一口にウルフドッグと呼んではいますが、その中身にはそれなりにバリエーションがあります。
基本的にウルフドッグとは家畜化されたオオカミと、シェパードやハスキーなどを交配して作出されています。
しかし、ジャパンケネルクラブ(JKC)が正式に公認しているのは2種類だけ。

サーロス・ウルフホンド

オランダ原産のウルフドッグで、オオカミとジャーマンシェパードを交配して作られたウルフドッグ。

チェコスロバキアン・ウルフドッグ

旧国名チェコスロバキア原産のウルフドッグで、地元のカルパティアオオカミと、ジャーマンシェパードを交配して作られたウルフドッグ。

ところが日本国内で飼育されているウルフドッグのほとんどは、カナダやアラスカから輸入されたオオカミとイヌの交雑種。
つまりは正式な犬種としては認められていないウルフドッグが圧倒的に多いのです。

ウルフドッグの身体的特徴

血の内容にばらつきがあるウルフドッグなだけに、やはり身体特徴にもかなりの個体差が。

  • 体高(地面から肩までの高さ)は65~80cm程度。
  • 体重は45kg~70kgオーバー。

とは言え、小さいサイズであっても大型犬に分類されることは間違いなく、大きいサイズのものともなれば、道端で出会えばギョっとするのではないでしょうか。
体つきに関して言うなら、シェパードやハスキーに比べて痩せて見えるのは、やはりオオカミという野生の血が成せる業なのかもしれません。

被毛はかなり密集しているため、寒さに耐える仕様になっています。
そしてウルフドッグならではの身体的特徴といえば、やはり嗅覚と聴覚がかなり優れている点でしょうか。
イヌも嗅覚、聴覚ともに優れた動物ですが、野生で生きるオオカミの能力はそれを上回っています。
その血を受け継いでいるのですから、狼犬の嗅覚と聴覚は言うまでもありません。

ウルフドッグを飼うことは並大抵のことではない

ウルフドッグには、当たり前のことですがオオカミの血が混ざっています。
つまりは、時間をかけて人間との生活に適するように改良が重ねられてきた、イエイヌとは決定的に違う生き物なのです。

「ウルフドッグは大変に賢く、オオカミの持つ野生の警戒心と、イヌの従順さを両方兼ね備えた性格をしている」などと安易な説明がされることが多いですが、ここを勘違いするべきではありません。
ウルフドッグを作出するために使われるジャーマンシェパードやハスキーでさえ、きちんとトレーニングをしなければとんでもない事態を引き起こしてしまう犬種。
変に耳障りの良い言葉でウルフドッグを説明することは、安易な飼育を助長してしまう可能性があるため、絶対にするべきではないと考えます。

ウルフドッグが大変に賢い生き物であることは疑いようのない事実。
しかし、オオカミの性質を引き継いでいるだけに大変に警戒心が強く、本当の意味で真のリーダーとなりうる飼い主以外には決して服従しません。
だからこそ、気軽に飼うような飼い主のことをリーダーとは認めないばかりか、手に負えなくなる可能性がある、と説明を続けるべきではないでしょうか。

テレビの安易な番組構成を鵜呑みにしてはいけない

2017年に放送された動物番組の中で、住宅街で飼育されているウルフドッグが紹介されたことがあります。
この番組構成はとんでもないもので、かなり体格の大きなウルフドッグが登場したのですが、人間に従順で小型犬とも仲良く遊べる、という内容で構成されていました。
こうなるともう、番組に出演している芸能人は「可愛い、可愛い!」の連発。
この放送だけを見たウルフドッグをよく知らない人は、気軽に飼ってみたいと思ったとしても不思議ではありません。

しかし、ウルフドッグの本質はそんな甘いものではないのです。
実際に、2015年には4頭のウルフドッグが管理者に噛みついて死亡させたという事故が日本国内で起きています。
テレビ番組の中では人を襲ったりはしないと紹介されていましたが、超小型犬のチワワでさえ人を襲うことはあるのです。
なにがしかのきっかけや理由があれば、どんな犬種であろうと基本的に犬は人を襲う可能性のある動物であることを、きちんと認識するべきではないでしょうか。
ましてや、オオカミの血が混ざったウルフドッグは言わずもがな。
恐ろしいほどに賢くて恐ろしいほどに身体能力の高いウルフドッグを、気軽に扱うなんて論外です。

カナダやアメリカでさえ、ウルフドッグを持て余して問題になっている

飼育するにはかなりのスペースが必要であり、さらには日々の運動量もシャレにはならないレベルのウルフドッグ。
日本よりずっと国土が広くて大型犬を飼いなれているカナダ人やアメリカ人でさえ、飼いきれなくなったウルフドッグを放逐したりと問題になっています。

狼犬――ウルフドッグははっきり言って日本の住宅事情には向かない犬。
さらには犬をしつけることが恐ろしく下手糞な日本人には、そう簡単に手に負える犬ではありません。