犬に噛まれた!破傷風菌に感染したらどうなる?
チワワやトイプードル、ポメラニアンといった小型犬は、ヌイグルミと見間違えてしまいそうなほどカワイイですよね。
シベリアンハスキーやドーベルマン、ジャーマンシェパードのような強面の大型犬と同じ種類の生き物だなんてウソみたいです。
しかし、口の中を見れば一目瞭然。
どんなに可愛い小型犬であろうと、肉を引き裂くための鋭い犬歯がちゃんと生えています。
もちろん、噛まれたときにより殺傷能力が高いのは体格の大きな犬であることは間違いありませんが、だからといって小型犬をあなどるのは絶対にNG!
なぜなら、小型犬に本気で噛みつかれると想像していた以上に痛いのはもちろんのこと、深い傷を負わされてしまうことも珍しくありません。
ところで、犬に噛まれたらそれが飼い犬であろうと野良犬であろうと、噛まれた人はすみやかに病院を受診するべきとされています。
それはいったいなぜでしょうか。
日本はもう狂犬病の心配はない、という無知
犬に噛まれたといっても、ちょっと牙がささって血が出た程度。
わざわざ病院で診察してもらうほどの傷ではない。
――その感覚が、重大な事態を引き起こすかもしれません。
犬に噛まれたらすぐに病院へ行けと言われるのは、なにも傷を縫ったほうがいいから、という理由ではないのです。
もちろん、皮膚や肉が裂けてしまって出血が激しい場合は縫う必要がありますが。
しかし、ここでお伝えしたいのはそういうことではありません。
犬に噛まれた場合、最もおそれるべきは感染症です。
でも、日本は狂犬病を撲滅しているはず。
狂犬病の心配なんてしなくてもいいのでは?と思ったかもしれません。
たしかに海外だったらいざ知らず、日本国内で犬に噛まれたとしても、狂犬病にかかる可能性はあまり高いとはいえないでしょう。
ただし、噛んだ犬が飼い犬であり、毎年きちんと狂犬病の予防接種を受けていれば、という前提においての話しです。
狂犬病は犬だけが感染するわけではありません。
哺乳類や鳥類などの恒温動物であれば、どの動物も感染する可能性があります。
そしてもしも噛みついた犬が野良犬だった場合。
野生もしくは野生に近い環境の中で、狂犬病に罹患している動物と接触しているかもしれないのです。
もしくは、飼い犬なのか野良犬なのかが不明な場合も、同様の危険性がありますよね。
では飼い犬であっても飼い主が無責任な人間であり、狂犬病の予防接種を怠っていたら?
なんらかの機会に狂犬病に罹患した動物と接触していれば、飼い犬であろうと狂犬病の危険性がゼロだとは言い切れないのです。
現代の日本人は、日本では狂犬病は撲滅された感染症であると甘く捉えてしまいがち。
しかし、世界的にはいまだに毎年5万人以上が狂犬病で命を落としている事実を認識するべきです。
破傷風はとても身近にある怖ろしい感染症
では、噛んだ犬が自分の犬、もしくはきちんと狂犬病予防接種を毎年受けさせている飼い犬であれば問題はないのでしょうか。
残念ながら、そういうことでもありません。
なぜなら私たち人間が感染した場合、命にかかわる危険性のある菌は、思っている以上にどこにでも存在しているからです。
その一つが破傷風菌。
感染症を起こした場合、恐ろしく重篤な症状を引き起こす菌でありながら、世界中の土壌のどこにでも存在しているという、ものすごく身近な存在です。
どこにでも、とは言うけれど、さすがにうちの庭にはいないでしょう?
……などと楽観的に考えるのは大間違い。
お家の庭土、公園の花壇、いつも犬を遊ばせているグラウンド。
ありとあらゆるところに破傷風菌は存在しています。
そんな身近な菌である破傷風菌に感染すると、どのような症状に苦しめられるのでしょうか。
破傷風菌に感染した場合の症状
第1期(潜伏期間3日~21日を経たあとの初期症状)
- 口が開けにくくなり、表情筋が痙攣(けいれん)する。
- 食べ物や飲み物が飲み込みにくくなる。
- 首筋が異様に張る。
- 強い歯ぎしり。
第2期
- 開口障害が強くなり、顔面筋の硬直がとけなくなる。
- 口が横に少し開いたまま閉じなくなり、歯がむき出しになる。
第3期(最も命の危険が高い時期)
- 頸部や背筋が硬直して後方へ弓なりにのけぞるといった、強い痙攣にたびたび襲われる。
- 呼吸筋の麻痺。
第4期
- 全身の痙攣はおさまるものの、筋の強張りはいまだ残り、意思に反して腱が収縮することもある。
上記の通り、第3期が最も死亡率が高く、呼吸筋が麻痺することで窒息死する可能性があります。
それを乗り越えると症状はだんだんと軽減していきますが、第1期から第3期までが48時間以内であった場合、その後の回復経過は不良になりがちです。
犬に噛まれたら病院へ行けといわれるのは、ケガをした部分を消毒しろという意味合いより、破傷風のワクチンを接種することが大きな目的の一つなんですよね。
犬は基本的に噛みつく生き物
愛犬が誰かに噛みついてしまったとき、「この子、普段はとても人懐っこくて、今まで誰かに噛みついたことなんてなかったのに……」などと言い訳をする飼い主がいます。
犬が噛みついた責任は噛みつかれた人にもあるのではないか?と暗にほのめかしたいのかもしれませんが、どういう事情があるにしろ、飼い犬が誰かに噛みついたらその責任は飼い主が負うしかありません。
どんなにヌイグルミにそっくりであろうと、犬はひとたび噛みつけば相手をケガさせることのできる動物。
その前提を絶対に忘れるべきではないのです。
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