MENU

愛犬の腎臓が機能を失っている!血液検査で見るべき項目とは

この記事の目次

腎臓は、一度機能を失ってしまえば、元の状態に回復させることはほぼ不可能。
肝臓の細胞は再生させることが可能ですが、腎臓はできないのです。

しかも、厄介なことに腎臓はその機能の75%が失われるまでは、目立った症状がほとんど出ない沈黙の臓器。
つまり、愛犬の体調がおかしいと気づいたときには、すでに腎不全を発症している状態であることがとても多いんですね。
だからこそ、定期的な血液検査を受けることで愛犬の腎臓がいまどんな状態にあるのかを、定期的に把握しておくべきなんです。

――と、頭ではわかっていても、すぐそばで愛犬が元気いっぱいに駆け回っていると、なかなか実感することができません。
これこそが、腎臓機能の厄介なところです。

腎臓は命に直結している臓器

腎臓といえば、「オシッコを作る臓器」というイメージが先行しているのではないでしょうか。
心臓や腸などに比べると、なんとなく地味というか・・・。

ところがどっこい、腎臓は地味どころか、実は生き物の寿命を決めている臓器。
つまり、命に直結した臓器なのです。

尿をつくる

体内の老廃物や余分な水分を尿として体外に排出し、必要な成分は血液に戻すろ過装置の役割を担っています。

体内の環境を一定に保つ

体内の水分やイオンバランス(ナトリウム、カリウム、カルシウム、リン、重炭酸イオンなど)を調節し、必要なミネラルを吸収して血液を弱アルカリ性に保っています。

血圧を調整する

塩分と水分の排出量を調節することで血圧を調節しています。

赤血球をつくる

腎臓で分泌された造血ホルモンが骨髄に働きかけて赤血球が作られます。

骨を強化する

肝臓に蓄積されたビタミンDは腎臓で活性型ビタミンDとなり、小腸からカルシウムの吸収を促して骨を強化します。

上記の働きを見れば、腎臓の機能が失われるという事実が、どれほど恐ろしいことなのかがわかるのではないでしょうか。
もしも愛犬が腎不全と診断され、その機能の75%が失われている状態だとしたら――。
この先は残り25%以下となってしまった腎臓を、大事に大事に使っていくしか方法はないのです。

腎臓の機能に問題がある場合に異常値を示す血液検査の項目

腎臓の機能が失われていくと、本来であれば尿として体外に排出されなければいけない老廃物が、体内に蓄積されていくことになります。
この状態が血液検査に表れてくることになりますので、その数値によってどの程度腎不全が進行しているのかが見えてくるのです。

BUN(血中尿素窒素)

タンパク質を分解する際に作られる副産物のアンモニアは体にとって有害。
肝臓で尿素に変わり、腎臓でろ過されて尿の中に排出されるはずが、腎臓機能が低下するとこのサイクルが上手くいかなくなります。
犬の正常値とされているのは9.2~29.2(mg/dl)
BUNの値が正常値より高いということは血中の尿素窒素が多いということを示し、逆に低い場合はタンパク質の摂取量不足や肝機能障害による産生低下が疑われることになります。

Cre(クレアチニン)

クレアチニンとは筋肉で作られる老廃物の一つで、そのほとんどは腎臓のろ過機能によって尿中に排泄されます。
犬の正常値とされているのは0.4~1.4(mg/dl)
この値が正常値を超えているということは、腎機能の障害や尿路結石が疑われることになります。

P(リン)

腎臓の機能が低下すると、血液中のリンの排泄がうまくいかなくなります。
その結果、血中の過剰なリンがカルシウムと結合し、腎臓や骨の石灰化を引き起こすことに。
これが腎機能をさらに低下させてしまうのです。
犬の正常値とされているのは1.9~5.0(mmol/dl)
リンの値が正常値より高い場合は腎不全、食事によるリンの過剰摂取、上皮小体機能低下症、甲状腺機能亢進症といった内分泌系の疾患、もしくは骨腫瘍が疑われます。
反対に正常値より低い場合は食事からの摂取不足、高カルシウム血症、上皮小体機能亢進症、糖尿病によるインスリン投与の影響などが疑われます。

もっと早く気づいていれば、と後悔しないために

昨日まではいつもと変わらず元気いっぱいだったとしても、今日、突然愛犬は腎不全の症状で苦しみ始めるかもしれません。
腎臓は機能の75%が失われて、初めて顕著な症状が出る物言わぬ臓器。
とはいえ、嘔吐や食欲不振という症状が出る前に、おそらくなにがしかの兆候があったはずなんです。

そういえば、いつもよりたくさんお水を飲んでいたかもしれない。
そういえば、オシッコの色が年々薄くなっていたかもしれない。
そういえば、前と同じ量を食べていたはずなのに、少しずつ体重が減っていたかもしれない。

腎不全を発症した犬の飼い主は、みんな必ず後悔します。
なぜ、もっと早く気づいてやれなかったのか、と。
後からあれこれ考えて後悔しても、愛犬の腎臓は元には戻りません。
だからこそ、元気なうちから定期的に血液検査を受けておくことはとても重要なのです。

すべての値が正常値内におさまっていたからといって、安心してはいけません。
中には正常値ギリギリの項目があるかもしれないのです。
そしてその項目が近い将来、正常値の範囲を超えてしまう可能性は低くありません。