展覧会で勝てる犬に育てるために子犬らしさを禁じること

子犬はどんな犬種でも可愛いものですが、
日本犬の子犬の愛らしさには独特のものがあると思いませんか?

コロコロとした体にクルリと巻いた尾。
そして利発そうな黒い瞳にぴょこぴょこと動く三角の耳。

成犬になるとどこか野性味を帯びたフォルムになる分、
余計に日本犬の子犬は可愛く見えるのかもしれません。

成犬になると警戒心が強くなりがちな日本犬でも、
子犬の頃は無邪気に近寄ってきます。

尻尾を一生懸命振りながら甘えてくる姿を見ると、
犬好きでなくても思わず顔がほころんでしまいそうですよね。

しかし、そんな愛らしい仕草を禁止されることがあるなんて、想像できますか?

展覧会で勝つために

展覧会で勝てる犬として育てるために、
そういった子犬らしい甘えを禁止することがあります。


なぜなら、人に可愛がられることに慣れてしまうと、
人に囲まれた時に懐っこさが出てしまい、ついシッポを振ってしまうからです。

犬が嬉しくてシッポを振る時というのは、
腰も少し下げ気味になっていることに気がついていますか?
この姿勢が威厳のある立ち姿を目指すうえで好まれないのです。

そして、そういった癖がつかないように、
日頃から甘えることを禁止する
というわけです。

遊び盛りの子犬はすぐに遊び相手を探そうとしますから、
そういった行為が落ち着きのない犬に見えてしまうことを
避ける目的もあるのでしょう。

そのようにして、出来るだけ他の犬と対峙した際に、
迫力負けしない気の強い犬に育てようとするのです。

この「気の強い」というのは、
すぐに相手にケンカをふっかけようとするような、
暴力的な意味ではありません。

しかし、相手からケンカをふっかけられたとしたら、絶対にひくことのない犬。
ケンカは売らないけれど、売られたケンカは買うような気質を理想としているのです。

時代とともに変わっていくもの

誤解しないでほしいのは、日本犬の展覧会に出陳している作出者のすべてが、
前述のような育て方をしているわけではありません。

中には一般的な飼い犬のように、可愛がられて育っている犬もたくさんいます。

しかし、いわゆる後世まで名犬と呼ばれるような、
立っているだけでオーラを感じるような犬を作出してきた古い犬舎では、
このような犬の育て方をすることがあります。

若い世代ではこのような育て方をする人はほとんどいないようですし、
また、やろうとしても家族の反対にあうことも、今では珍しくないのかもしれません。

かつて厳しく育てられた名犬達が幸せだったのか、
それとも不幸せだったのかはわかりません。

しかし、少なくともそういった犬達は、展覧会の場では実にいきいきとして見えました。
嫌なことをさせられてあそこまでオーラが出せるのだろうか?
という思いもあります。

しかし、少なくとも家庭における犬達は、一生涯周囲の人間に可愛がられ、
愛されて育つことが理想的であることだけは間違いない
のではないでしょうか。