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昔は老衰として亡くなった犬が、今は腎不全と診断される時代

この記事の目次

腎不全は、がん、心臓病に続いて犬の死亡原因第3位の病気です。
これはなにも驚くべきことではありません。
犬の寿命が飛躍的に延び続けている現代だからこそ、腎不全の犬が増えているのはある意味必然といえるのです。

というのも、腎臓は肝臓のように再生することが難しい臓器。
つまり、犬が長生きする時代になったということは、大なり小なり程度の差はあっても、老犬たちの腎臓の機能は確実に失われているからです。

手厚い動物医療の時代だからこそ、増えた腎不全の犬

犬たちの寿命が一昔前、二昔前に比べて飛躍的に延びた要因といえば・・・。

  • 室内飼育が増えたことで寒さや暑さといった環境によるストレスが大幅に減った。
  • ドッグフードの品質が向上し、栄養バランスの整った食事が提供されるようになった。
  • 動物医療が発達し、これまでより手厚い治療や予防、検査や投薬が受けられるようになった。

ざっとまとめると、こういったところではないでしょうか。

犬が家畜やペットではなく家族の一員として認識されるようになり、昔に比べて動物医療は確実に飼い主にとって身近なものになりました。
その結果として、長生きしている犬たちの多くに腎不全という診断がくだされている――。
そう考えれば、腎不全の犬が増えているいまの状況は、何もおかしなことではありません。

おそらくかつての時代も、腎不全で亡くなった犬はたくさんいたはずです。
ただ、病院に行って詳しい検査を受けないから腎不全と診断されなかっただけのことであり、要は腎不全という、体を衰えさせている一番の原因が表面化しなかっただけのことではないでしょうか。

ではなぜ病院に連れて行かなかったのかといえば、犬が年老いて食が細くなり、どんどん痩せて食べ物がまともに食べられなくなる。
さらには水も飲めなくなって体が脱水状態に陥ると、一日の大半を眠って過ごすようになり、やがては息を引き取る――。
かつてはそのような状態を、「うちの犬は老衰で亡くなった」と認識していたのではないかと考えられるのです。

犬に対する愛情は同じでも、してやれる内容が今と昔とでは違う

かつては当たり前のように老衰だと思われていた老犬の体の衰弱が、現代においては腎不全と診断される――。
これはなにも、多くの老犬が腎不全と診断されることを批判しているわけではありません。
もちろん、食が細くなった老犬を病院に連れていかずに老衰として死なせた、かつての犬の飼い方を責めているわけでもありません。

犬や猫といったペットを人間の家族と同じように扱うことが普通の感覚になってから、まだそれほど年月は経過していないのです。
いまはペットもCT検査やMRI検査を受けることが珍しくない時代になりましたが、それこそ二十年前は、まったくもってそういった動物医療は一般的ではありませんでした。
しかし、だからといってペット達が不幸だったかといえば、それも違うのではないかという気がします。
今と比較して動物医療が充実していなかった時代においても、愛犬が年老いて亡くなっていく様を一生懸命見届けた飼い主はたくさんいたはずです。

現に筆者においても、幼い頃に飼っていた犬が年老いて亡くなったとき、あの植物が枯れるように衰えていった様を目の当たりにして、「これが老衰なのだ」と幼心に思ったものでした。
しかし、あれが今だったらどうするでしょうか。
迷うことなく動物病院に連れていって、少しでも体が辛くないように、出来ることはすべてやると言い切ることができます。
もちろん、無理矢理の延命という意味ではありませんが。

だからと言って、あの時なんの疑問もなく、家族全員で「この子は老衰でいよいよ命が終わる時がきたのだ」と思ったことを今も後悔してはいません。
なぜなら、あの子が亡くなった日、まったく動けなくなってから心臓が止まるその瞬間まで、家族で代わる代わるそばについていてやることができたからです。

飼い主として老犬のためにしてやれることは

少しでも愛犬に長生きしてほしいと願う飼い主にとって、現代の動物医療は腎不全の愛犬のQOL(クオリティーオブライフ/生活の質)を向上させるうえで、とても力になっていることは間違いありません。

いま我が家で暮らしている犬たちは、14歳から10歳とメンバー全員がシニア犬。
そして、最年長の犬は腎不全のステージ3、上から2番目の犬は肝機能障害で治療中です。
この2匹は完治を目指すというより、この先のQOLを高める、もしくは維持し続けることを第一目標としています。
上から3番目(下から2番目)の犬も僧帽弁閉鎖不全症ですし、一番下の犬も子犬の頃に心臓から血液が逆流し、長生きできないのではないかと言われていたので今後どうなるかはわかりません。
だからこそ、飼い主としてできること、してやりたいことはQOLの質を上げることだと肝に銘じる毎日です。