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サル追い犬(モンキードッグ)

この記事の目次

サル追い犬は、呼んで字のごとくサルを追い払う仕事をする犬のことです。
モンキードッグとも呼ばれるサル追い犬の仕事は、農作物をサルの被害から守ること。
まさに、犬猿の仲を利用しているわけですね。

サル追い犬が誕生したきっかけ

都市部に住んでいる人にとっては、サルの被害と聞いてもなかなかピンとこないかもしれません。
しかし、里山周辺に住む住民にとって、サルの被害はなかなかに深刻なものがあります。

それでも、昔はちゃんと野生のサルが住む地域と人の住む地域とは、見えざる境界が存在していました。
しかし、開発が急速に進み始めた平成5年あたりから、野生のサルが人の住む里へと出没するようになったのです。
そして農作物に被害を与えるようになり、住民の頭を悩ませる問題へと発展していきました。
農業をなりわいにしている人にとっては死活問題ですし、家庭菜園であっても食用の野菜や果物をサルに食べられてしまうのは無視できない問題。
特に農家は高齢化が進んでいたことから、苦労して作った作物をサルに食べられてしまうことにより、元気を失いかけてしまったのです。

そういった背景から、頭を悩ませていた長野県大町市は犬にサルを追わせてみてはどうか、という新たな試みに着手していきました。

サル追い犬という発想が生まれたいきさつ

大町市の担当職員がサル追い犬という発想にいきついたのは、被害農家の話を聞いたことに端を発しています。
それは、飼っている犬がサルを見つけて吠えたてたら、サルがものすごい勢いで逃げていった、というものでした。

実はサルはとても頭の良い生き物であるがゆえに、人間がいくら追い払おうと工夫しても、ことごとくかいくぐってしまっていたのです。
電気柵もダメ、ロケット花火もダメ、何をやってもすぐにサルは人間側の限界を悟ってしまうんですね。
被害にあっている農家にしてみれば実に忌々しい話しですが、さすがは霊長類のサルといったところでしょうか。

そういう経緯から犬猿の仲大作戦が始まり、試行錯誤を繰り返した結果、平成17年にサル追い犬としての訓練を受けた3匹のモンキードッグ第一期生が誕生したのです。

結果を残した第一期生のサル追い犬

だいたいいつも40~50匹程度のサルが出没していたある被害地域。
サル追い犬の導入により、2ヶ月が経過したあたりから農作物への被害が激減していきました。
そしてその成果のおかげで、大町市においてサル追い犬は一つの事業として根付いたのです。
農作物の被害が減ったことはもちろんのこと、これは第一期生達の残した大いなる成果といえるのではないでしょうか。

もちろん、犬達をサル追い犬としてしっかりと訓練したドッグスクールの功績も評価するべきです。
サル追い犬は飼い犬をただ放しているわけではありません。
サルを発見したら追い払い、追い払ったらすぐに戻ってくる訓練が必要なのです。
さらには呼んだらすぐに戻ってくるという訓練も重要であり、この3つができなければサル追い犬にはなれません。

第一期生の犬たちは、5ヶ月間にわたって専門の訓練をしっかりと受けました。
試行錯誤の中で犬を訓練したドッグスクールのトレーナー、飼い主、自治体の職員、そしてサル追い犬へと成長した犬たち全員の努力に頭が下がる思いです。

サル追い犬は家庭の犬

サル追い犬は盲導犬や麻薬探知犬などとは違い、一般家庭の犬達です。
つまり、サルの被害にあっている地域で暮らしている普通のお家の犬が、訓練を受けて誕生しているわけですね。

そして訓練を受けたサル追い犬を使いこなすのもまた、飼い主の役目。
サル追い犬による農作物の守護は、犬と飼い主と訓練士、そして行政の努力によって成り立っているのです。