高齢者が老犬の介護をする――老老介護はすぐそこにある現実
老老介護――。
老人を老人が介護することですが、現代では老人が老犬を介護することも含めなければいけないのかもしれません。
また、年老いた親の介護をしながら、老犬の介護をするという二重介護をしている飼い主さんもいらっしゃいます。
犬との生活はとても楽しいものですが、犬という生き物を家族として迎える以上、楽しいだけのはずがありません。
犬との生活を選ぶ人は、今現在の年齢に関係なく、犬を介護する日のことを考えるべきではないでしょうか。
リタイアした後に犬を飼うこと
大型犬を飼うのが夢だったけれど、ずっとなんだかんだで飼えないまま定年を迎えてしまった。
けれど子どもはみんな巣立ったし、自由な時間が増えた今だからこそ、かねてからの夢だった大型犬との暮らしが実現できる――。
そんな思いで定年後に大型犬を飼育しはじめる飼い主さんもいることでしょう。
大型犬と暮らしたい――。
その夢を叶えることは、なんら悪いことではありません。
現役世代に負けず劣らず元気いっぱいの60代なんて珍しくもないですよね。
でも犬の長寿化が進み、かつてはほとんどの犬が10才未満で天寿を全うしていた大型犬が、現代においては10年どころか15年、それ以上生きるようになりました。
愛犬の長寿は喜ばしいことです。
しかし、犬の長寿化は、同時に老犬の介護という現実と向き合わなければいけないことでもあるのです。
定年後に若い世代の助けなしに大型犬を飼うとしたら、いつかは老老介護をする日がくるかもしれないという現実から目をそむけるべきではありません。
老犬介護は体力勝負
老犬の介護は、人間の老人を介護するのに比べたら楽に違いない――。
そんなイメージで見られることがあります。
たとえば小型犬の介護であれば、多少飼い主さん自身が高齢であってもそれなりになんとかなるかもしれません。
しかし、それが大型犬だったらどうでしょうか?
体重20kg以上ある老犬を抱きかかえて移動させるだけでも、大変な重労働を伴うことになるでしょう。
それがたまにならいいですが、老犬の介護は24時間365日。
毎日毎日、重労働にあけくれることになるかもしれません。
もちろん、介助用のハーネスやオムツを使うことで、ある程度軽減させることはできるでしょう。
しかし、痴呆で夜鳴きが始まってしまい、近所迷惑になるほど鳴き続けたりしたら、精神的なストレスに加えて飼い主さん自身も深刻な睡眠不足となり、その状態で大型犬のケアをし続けることはほとんど苦行と化してしまうのです。
若い世代でもヘトヘトになるであろうこんな状況が、自身も高齢者となった飼い主さんにとってどれほど辛いものかは想像に難くありません。
安易に一人暮らしの老人にペットをすすめるべきではない
一人暮らしの高齢者が寂しそうだからと、「犬でも飼ったら?」と安易にすすめる人がいます。
確かに犬の世話をすることが生きがいとなり、寂しかった生活は楽しくて活き活きとしたものになるかもしれません。
しかし、その犬が長生きしたら?
仮に80代のお年寄りが飼った犬が10年以上生きれば、飼い主は90歳を超えています。
ペット可の老人ホームに入居できればいいですが、望んでも誰もが叶うわけではありません。
そうなれば、もしも高齢の飼い主が愛犬の面倒をみられなくなったとき、犬と離れて暮らすしかなくなるのです。
一人暮らしの高齢者が犬と暮らすことが悪いわけではありません。
しかし、もしもそれを勧めるのであれば、今年や来年のことだけでなく、犬の寿命も見据えたうえで大丈夫か否かを考えるべきではないでしょうか。
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