日本犬には粗食が合っている?
昔に比べると、犬の寿命は年々延びています。
理由としては、子犬の頃から栄養バランスの整ったドッグフードを食べていること、
屋外飼育から室内飼育へのシフトにより年中快適な空間で生活していること、
動物医療が進んだこと、などが挙げられるのではないでしょうか。
確かにその通りなのですが、少し違った角度から犬の健康について考えてみたいと思います。
日本犬の雑種は強い?
かつての日本において、犬はペットではなく家畜として扱われてきました。
屋外で番犬として働き、食べるものは人間の食事の残飯だったのです。
それは、何百年も昔のことではありません。
高級犬などと呼ばれた小型の室内犬は別として、
いわゆる日本犬とその雑種においては、世が平成に変わるあたりまでは、
程度の差はあってもだいたい似たような飼われ方をしてきたのではないでしょうか。
さすがにドッグフードも世の中に存在してはいましたが、
今と違って選べるほど種類があったわけでもありません。
ところが、それでも日本犬の雑種などは、
15歳前後まで生きることは珍しくありませんでした。
現代のドッグフードは栄養が多すぎる?
そして現代においては栄養バランスが万全に整ったドッグフードが数多く存在し、
またフィラリアの予防薬、伝染病予防ワクチンなどなど、
犬の寿命を延ばす要因が確実に増えています。
ということは、日本犬や日本犬の血を引く雑種の寿命はさらに延びて、
軽く二十年を超えてもおかしくないはずですよね?
もちろん、実際に二十歳を超える超ご長寿犬が存在することは間違いありませんが、
かと言ってそこまで多くなったわけでもありません。
そして、この疑問がそもそも生まれるきっかけになったのは、
日本犬だけを繁殖してきた老齢ブリーダー数人からの意見によるものでした。
いわく、「現代のドッグフードは栄養分が多すぎて、
日本犬の体にはいまひとつ合っていない」――と。
そして実際に展覧会において優秀な成績をおさめる犬舎では、
高栄養になり過ぎない餌作りをしているところもあるのです。
これはいったい、どういうことなのでしょうか?
粗食が標準?
犬が食べるための餌――すなわちドッグフードは欧米が発祥の地です。
当然のことながら欧米の方が早く発達し、戦後になってから日本に入ってきました。
つまり、昔から日本にいる犬達は、基本的に粗食で生きてきたわけです。
となると、体はその粗食に耐えうるように作られていると
考えることはできないでしょうか?
そこへ高栄養のドッグフードを常食として食べさせていたら、
消化能力や栄養吸収能力など、
すべてにおいて負荷がかかり過ぎてしまうのかもしれません。
もちろん、生きているものは世代交代を繰り返すたびに環境に適応していくものですから、
現代を生きる日本犬達にとっても高栄養のドッグフードは
必要不可欠なものになりつつあるのでしょう。
しかし、たまたま昔からの血筋を脈々と
比較的狭い範囲の中でブリーディングしている場合、
粗食で暮らしてきた遺伝子が体の中に残っていたとしても
不思議はないと思いませんか?
犬の健康は一律ではないのかもしれない、と思わされるのはこんなことを考える瞬間です。
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