高齢の日本犬繁殖者の価値観

現在、日本犬の展覧会は年々規模の縮小が余儀なくされています。
それは西洋犬種の人気におされているだけでなく、
日本犬の展覧会系繁殖者が高齢化していることも原因の一つではないでしょうか。

柴犬だけは根強い人気があるのでなんとか持ちこたえてはいますが、
その他の犬種については正直言ってジリ貧です。

このままいけばいずれは質の高い紀州犬、四国犬、秋田犬、
北海道犬、甲斐犬は姿を消してしまうかもしれません。

長年の経験にもとづく勘のすごさ

昭和の日本犬展覧会が華やかだった時代を知る繁殖者は、
学術的な知識うんぬんというより、自らの経験による勘によって犬を繁殖してきました。
その正しさには驚かされるものがあり、一朝一夕でまねできるものではないでしょう。

例えばメス犬の発情の良し悪しなどを判定する目は確かで、
動物病院でスメア検査などしなくても、オス犬の反応やメス犬の陰部の変化を見て
かなり正確に排卵の時期を予想できる繁殖者は珍しくありません。

また、独自の方法で疥癬(かいせん)などの皮膚病を完治させたり、
犬の体質を見極めた食事の内容など、書物から得る知識以上に
有益な情報をもたらしてくれる繁殖者もたくさんいます。

古い時代を知る繁殖者にとっての『犬』

しかし、古い時代を知る高齢の繁殖者は「犬」という存在の変化についていけていません。

現在、犬は家族の一員として扱われ、飼い犬の7~8割が室内で暮らしています。
これは、昭和の時代に活躍した繁殖者が扱う犬の姿とは異なるもの。

彼らにとって犬は犬でしかなく、
展覧会とは自らが作出した犬の品質を競う場面なのですから、
愛犬と楽しくコンテストを楽しみたい、という感覚とは
まったく違う価値観で犬の繁殖をしているわけです。

ですから、展覧会において勝てる資質を持たないと判断された子犬は、
そういった犬舎にとって必要のない存在。


欲しい人がいれば相手がどんな飼育方法をとろうが構いませんし、
子犬ブローカーに売却することにもためらいがないのです。

そして譲渡先も見つからず、売却できる見込みもない子犬をいつまでも
犬舎に残しておく甘さもありません。

行き先の決まらない子犬はどうなるのか?

たまたま子どもや孫がインターネットに強ければ、
「子犬さしあげます」という掲示板に書き込んだりすることもできるでしょう。

もしかしたら、場合によってはネットを通じて売却することができるかもしれません。
そうやって土壇場で行き先の決まる子犬は運のよい子だと言えるでしょう。

では、行き先の決まらない子は?
知る限りの最悪なケースとしては、
月齢の早い段階で殺して焼却処分にした繁殖者がいました。

また、そういった殺処分を自らの手でするのが嫌だからという理由で、
子犬達を遠くの山に放して帰ってきたという繁殖者もいます。

どちらの繁殖者も高齢で、犬の命の重みについて説得しても
根本的な部分で理解することができないのかもしれない、
と感じさせられたことがいつまでも忘れられません。