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ジビエの肉と新奇タンパク食

この記事の目次

ジビエ(野生鳥獣の肉)といえば、一昔前までは、一般家庭での日常的な食卓とは無縁の食肉でした。
しかし平成26年11月に厚生労働省が「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針」を作成して以降、マスメディアでとりあげられる機会も増え、ジビエという呼称もそれなりに認知されつつあります。

日本で狩猟が許可されているジビエは48種類

ジビエをいまだに食べたことがない人でも、ジビエという呼称が何を指しているのかは、なんとなくイメージできるのではないでしょうか。
ジビエと一括りにしていても、その種類は多岐にわたります。
その数は全部で48種類
内訳としては鳥類が28種類、獣が20種類もあるのです。

代表的なところをいくつか挙げると、鳥類――マガモ、キジ、ヒヨドリ、キジバト、ムクドリ、スズメ・・・、獣類――シカ、イノシシ、クマ、タヌキ、ウサギ・・・といったところでしょうか。
このうち、もともとジビエとして認知度が高かったのはカモですが、ここ最近市場に出回る量が増えつつあるのはシカの肉。
それに伴い、ドッグフードや犬用のオヤツにも原材料にシカ肉が使われている製品の数が増えてきています。
もちろん、チキンやビーフといったメジャーな肉類に比べたら足元にも及ばない程度ではありますが……。

とはいえ、食物アレルギーによる新奇タンパク食の必要性から考えても、シカ肉は犬の食事において今後ますます普及していくのではないでしょうか。

新奇タンパク食とは?

さて、前述した新奇タンパク食ですが――。
食物アレルギーのあるワンちゃんの飼い主さんなら、耳にしたことがあるのではないでしょうか。
新奇タンパク食とは、今までに食べたことのないタンパク質で作られた食事のことです。

食物にアレルギーがある犬は近年少なくなく、その原因の多くが食べ物に含まれているタンパク質。
肉食獣寄りの雑食動物にとって一番重要な栄養素であるタンパク質にアレルギーがあるのですから、これはなかなか困った問題なんですよね。

とにかく、なんらかの肉にアレルギーのある犬には、アレルゲンとなるタンパク質を摂取させないことがまずは大前提。
しかし、タンパク質を摂取させないわけにはいきません。
そこで、今までに食べたことのないタンパク質を選択していくことが重要になってくるのです。
もちろん、食物アレルギーの犬がタンパク質を摂取する場合、方法は新奇タンパク食だけではありませんが、ここでは話がそれてしまうので割愛します。

話をもとに戻すと、食物アレルギーは初めて摂取する食べ物では起こりません。
だからこそ、新奇タンパク食という選択が、食物アレルギーを持つ犬には有効なのです。

ジビエがフードローテーションの幅を広げる

さて、そんな新奇タンパク食ですが、これはアレルギーのないワンちゃんにも有効。
というのも、今現在は特定の肉類にアレルギーがなくても、この先はどうなるかわからないからです。

ビーフがアレルゲンになったからチキン、チキンもアレルゲンになったからフィッシュ・・・、という後手後手にまわるより、先手先手でタンパク質の種類を変えていくことで、生涯にわたって食物アレルギーとは無縁の生活を送らせてあげられるかもしれません。
そのように、異なるタンパク質、異なる食材を定期的に変更していくことを「フード・ローテーション」と呼びます。

特にアレルゲンがないワンちゃんの場合、チキン、ビーフ、フィッシュ、ラムといった、比較的どこででも手に入れることのできる肉類を使った食事だけで、フード・ローテーションをすることは難しくありません。
これは市販のドッグフードであろうと、手作り食であろうと同じことです。

問題は、いくつものタンパク質にすでに反応してしまっている敏感な体質の犬。
チキンがダメ、ビーフがダメ、フィッシュがダメ、ラムもダメ、となると、次の選択肢がかなり難しくなってしまうのです。

とは言え、近年はネット通販の発達により、カンガルーやダチョウ、エミューといった日本においては珍しいタイプの肉類も手に入れることができるようになりました。
しかし、それらの肉類にも敏感に反応しだしてしまったら……。

そういう意味で、ジビエという日本においてメジャーとはいえない肉類の流通は、非常にありがたいものなのです。
スーパーで購入できる肉類に比べると価格が割高であることは間違いありませんが、それでも食べさせるものが手詰まりな状態に比べれば、かなりの打開策といえるのではないでしょうか。

後手にまわるより先手を取ったほうが経済的

市販のドッグフードにも、ジビエの肉類を原材料に使っているものが増えてきました。
もちろん、価格はかなりの割高です。
この経済的な負担が飼い主さんを悩ませることになるわけですが、ここはある意味考えどころではないでしょうか。

というのも、もしも食物アレルギーが発症してからフードを変えていくとしたら、新奇タンパク食としてのフード費用に加えて、アレルギーの治療費もかかることになりますよね。
経済的な負担が余分にかかるのに加えて、愛犬は体の炎症で苦しむことになります。
つまり、同じ費用がかかるなら後手で新奇タンパク食を採用するより、先手でフード・ローテーションを開始したほうが、経済的にも犬の健康面においてもメリットが多いといえるはず。

というわけで、日ごろから愛犬の体質が敏感だと感じている飼い主さんは、早めにフード・ローテーションを検討することをおすすめします。