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犬の自律神経失調症・キー・ガスケル症候群

この記事の目次

自律神経失調症といえば、中高年にとっては馴染み深い体の不調。
めまい、頭痛、微熱、睡眠障害、動悸、息切れ、便秘、下痢……などなど、体のありとあらゆる部分に不調が起きるにもかかわらず、いくら病院で検査をしても原因が特定できません

なんとも厄介極まりない病気ですが、実は犬にも自律神経失調症が。
そして犬の場合、自律神経失調症は命にかかわる深刻な病気なのです。

犬の自律神経失調症『キー・ガスケル症候群』とは

犬の自律神経失調症であるキー・ガスケル症候群もまた、原因不明の病気です。
自律神経とは交感神経と副交感神経が対となって機能している神経系のことで、胃や腸といった消化器の運動や発汗などのように、自らの意思ではコントロールすることができない体の働きを司っています。

  • 交感神経……腺(分泌活動を行う細胞の集まり)、血管の収縮、心臓などの臓器を支配する自律神経系を構成する末梢神経
  • 副交感神経……眼の動きや涙腺、唾液腺、消化液の分泌などに関与している自律神経系を構成する末梢神経

自律神経失調症はこういった神経系統に異常をきたすことはわかっているのに、その原因が不明のため、決め手になる根本的な治療法がいまだ見つかっていません。

そして人間の自律神経失調症に比べて、犬の自律神経失調症であるキー・ガスケル症候群は、症状がより深刻になりやすい傾向にあります。
もしも発症してしまった場合、軽視して様子見などをしていると、どんどん症状が悪化していくことになるでしょう。

キー・ガスケル症候群の症状

  • 元気がなくなる
  • 食欲が落ちる
  • 便秘
  • 食後に嘔吐をする
  • 涙の分泌量が減ってドライアイになる
  • 瞬膜(目頭にある角膜を保護する膜)が露出したままになる
  • 唾液の分泌量が減って口臭が強くなる
  • 瞳孔が開いたままになる
  • 腹部が膨張する
  • 食道アカラシア(食べ物を胃に送る動きに異常が起きること)
  • 不整脈
  • 心臓発作

キー・ガスケル症候群を発症すると胃や腸が正常に働かなくなるだけではなく、呼吸機能が低下して呼吸困難に陥ることも。
重篤になると血液の循環機能そのものが低下してしまい、心臓にも影響を与えることになります。

人間が発症する自律神経失調症の感覚で考えるとつい軽視してしまいがちですが(本当は人間の場合も軽視すべきではありません)、犬の場合は生命活動に関わる様々な機能が衰えていくという、非常に恐ろしい病気であることを知っておきましょう。

キー・ガスケル症候群の原因

前述したように、キー・ガスケル症候群の原因はわかっていません。
もともとは猫にだけ発症する病気だと考えられていましたが、近年になって若い犬やラブラドールレトリーバーに発症が多いという事例が複数報告されています。
また、都会より田舎のほうが発症が多いという研究結果のほかに、性別とは発症率の因果関係はなさそうだという報告もされています。
そして化学物質による中毒が原因ではないか、ボツリヌス菌の産生毒によるものではないかといった推察がされてはいるものの、いまだ詳細は不明なまま。

いずれにしろ、なんらかの原因で自律神経が損傷していると考えられているため、化学物質やボツリヌス菌が本当に原因であるかどうかは不明にしろ、愛犬がそういったものに接触しないように注意をはらう必要がありそうです。

キー・ガスケル症候群の治療

人間の自律神経失調症と同様に、犬のキー・ガスケル症候群も原因が不明なため、根本となる治療法が見つかっていません。
そのため、すべては表れた症状を改善するための「対症療法」と「投薬治療」が治療の中心となります。
具体的には症状を少しでも緩和し、症状の進行を食い止めるための治療が施されることになるでしょうか。

しかし、キー・ガスケル症候群は予後(その病気がたどる経過と結末)が悪く、症状が改善しないまま亡くなってしまうことも珍しくありません。
もしも不幸なことに愛犬がキー・ガスケル症候群を発症してしまったら、飼い主さんは治療の成果があがらないことに焦りを感じながら看病をしなければいけなくなるでしょう。

これはとても辛いことですが、大好きな飼い主がそばにいてくれることほど犬にとって心強いことはありません。
近くで励ますことしかできないとしても、それはとても大切なことなのです。