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犬のドライアイは放置厳禁!最悪の場合は失明することも

この記事の目次

私たち人間は、目が乾いていると感じたときは目薬をさしますよね。
では、犬の目が乾いているときはどうしていますか?

「え、犬の目も乾くの!?」と驚かれた飼い主さんもいらっしゃるかもしれません。
そうなんです。
犬の目は、私たちが想像している以上に乾いてしまうんですね。

目が乾くということは、すなわち涙になんらかの問題が生じている状態。
早急に対処が必要です。
たかが涙と軽んじるのは大間違い!
もしもそのまま何もせずに放置してしまうと、最悪の場合は重症化して失明するかもしれません。

犬の涙に含まれている成分とドライアイの関係

犬の涙は上まぶたの涙腺と下まぶたの第三眼瞼腺(だいさんがんけんせん)(※1)、さらにはまつ毛の生え際にあるマイボーム腺から分泌される液体によって構成されています。

※1 第三眼瞼腺は瞬膜腺(※2)ともいう
※2 瞬膜/まぶたとは別に水平方向に動いて眼球を保護する透明又は半透明の膜のこと。人間にはない。

犬の涙に含まれている成分は大きく分けると3つ。

  • 水分
  • 油分
  • ムチン

ムチンとはネバネバした粘性物質のことで、水分と混ざりあった状態で分泌されます。
つまり、犬の涙は涙腺と第三眼瞼腺から分泌される「ムチンの含まれた水分」に、マイボーム腺から分泌される「油分」が合わさって構成される二重構造をしているんですね。

単なる水にしか見えない涙がなぜこんなに複雑な構造をしているのかといえば、水分のみでは眼球にとどまることができないからです。
ムチンが混ざることで水分に粘性と弾性(※3)が加わり、眼球全体にまんべんなく涙を行きわたらせることができます。

※3 弾性/変形した物体がもとの形に戻ろうとする性質

そして、油分によって水分の蒸発を防ぐ、というわけですね。

化粧品に例えるなら化粧水でお肌に水分を補い、その上にクリームや美容オイルを塗ることで水分が蒸発しないように蓋をしているのと同じ感覚でしょうか。
水分、油分、ムチンのどれが不足しても眼球は乾燥し、健やかな状態に保つことができません。
つまり、ドライアイは単純に涙の水分量が減ってしまうことが原因というより、涙の成分そのものに問題が生じた場合に起こる状態なんですね。

犬の目がドライアイを引き起こす原因とは

犬の眼球がドライアイを引き起こす原因は、大きく3つに分けることができます。

涙腺もしくは第三眼瞼腺になんらかの異常があり、涙液が正常に供給されない場合

涙腺や第三眼瞼腺に異常をきたす原因として考えられるのは

  • 炎症
  • 感染症
  • 神経障害
  • サルファ剤など薬による影響
  • チェリーアイ(瞬膜が飛び出してしまう病気)によってすでに第三眼瞼腺を切除している
  • 眼球周辺に発生した腫瘍の治療を目的とした放射線治療による影響
眼球の表面積が大きい犬種である場合

正常に涙液が分泌されていても、眼球の大きな犬種は涙が蒸発するスピードが速く、もともとの体質としてドライアイになりやすい傾向にあります。
パグ、シーズー、ペキニーズ、ブルドッグ、アメリカンコッカースパニエル、キャバリアキングチャールズスパニエル、ボストンテリアといったように、いわゆる大きくて丸い目がくりくりしている犬種は要注意。

さらには眠っているときに半目が開いていることが多い犬も、眼球が乾きやすい分ドライアイになる可能性が高くなると考えられます。

また、ヨークシャーテリア(ヨーキー)やチワワなど、生まれつき涙腺が小さな犬もドライアイになりやすい傾向にあります。

遺伝的な要因が原因の場合

ミニチュアシュナウザー、ブルドッグ、ウェストハイランドホワイトテリア(ウェスティー)に関しては、シェーグレン様症候群(※4)によってドライアイを引き起こしやすいことがわかっています。

※4 シェーグレン様症候群とは、なんらかの原因によって免疫系等が自身の涙腺や唾液を攻撃し、腺組織を破壊してしまう自己免疫疾患の一種。

また、パグ、ヨークシャーテリア、サモエドのドライアイに関しても遺伝的な要因が疑われていますが、今のところはっきりとしたことは判明していません。

犬のドライアイの症状とは

愛犬の目が正常な状態より乾いていても、軽度や初期のうちはなかなか気づきにくいもの。
しかし、必ずなんらかの症状は表れているはずです。

  • いつもより目ヤニがでている。
  • 前足で目をこする仕草をしている。
  • 目をショボショボさせている。
  • 起きているのに半目になっている。
  • いつもよりまぶしそうな顔をしている。

もしも上記のような状態に心当たりがある場合は、早めに動物病院を受診して、涙の量を測定してもらいましょう。
この程度の症状で治療を開始することができれば、目を健やかな状態に戻すことはそれほど難しいことではありません。

しかし、この状態を放置して症状が悪化してしまった場合、結膜炎や角膜炎などを引き起こしやすくなります。
また、目に違和感のある犬が前足で顔面をこすり続けた結果、角膜潰瘍を起こすことも。

>>角膜潰瘍について詳しくはこちら

角膜潰瘍は非情に厄介!
角膜に穴が開いてしまった結果、失明する危険性すらあるのです。

>>ドライアイを重症化させた犬の状態について詳しくはこちら

犬のドライアイの治療

犬のドライアイは点眼による治療が基本。
眼球を保護する効果のある目薬や軟膏を用いることで、角膜や結膜を乾燥から守ります。

しかし、目薬や軟膏の効果が表れない、もしくは治療開始の段階ですでに重症化しており、点眼による効果が見込めない場合などには、外科手術によって耳の下にある耳下腺という唾液腺を結膜に移植することも。
しかし、手術が成功しても分泌されるのは唾液であり、涙液ではありません。
そのため、唾液で眼球を潤すことに違和感を覚える犬もいますので、すべての犬にとって外科手術が良い選択とは限らないのです。

予防に勝るものはない

愛犬が半目で眠っている顔がキモカワイイ!などと言っている場合ではありません。
ドライアイは痛みを伴う症状。
つまり、愛犬の目が乾いているということは、苦痛を感じている状態です。

悪化してからあわてて治療を開始しても、治癒までにはかなりの日数を要することになるでしょう。
予防に勝る治療はありません。
日ごろから保湿目薬を使うなどして、愛犬のキラキラおめめを守ってあげましょう。