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犬のてんかん発作は投薬でコントロールできる

この記事の目次

愛犬がガクガクと全身を激しく痙攣させている――!
初めてその状況に遭遇した飼い主の多くは、これはてんかんに違いないと大慌てで動物病院に駆けこむことになります。

しかし、一連の症状がてんかんであるかどうかは、実は獣医師にも即座に判断することはできません。
てんかんの疑いがあるのか、それとも何か別の原因によるものなのか。
まずはその部分をしっかりと見極めること――すなわち鑑別から検査は始まります。

てんかんと直接診断できる検査はない

意外に思われるかもしれませんが、「この症状はてんかんです」と診断できる検査はありません。
検査をすることで、痙攣発作を起こす可能性のある様々な病気の可能性を排除していく――その結果として最終的に、これは「てんかん」であると判断することになるのです。

具体的にはこれまでにかかった病気やケガの確認から始まり、血液検査、尿検査、レントゲン検査などを実施して、肝疾患や甲状腺機能低下症、なにがしかの中毒症状といった、脳ではない部位が原因で発作を起こしている可能性を調べていきます。

そして、この時点で何も該当する病気が見つからない場合、次にてんかんではない進行性脳疾患を疑うことになります。
進行性脳疾患とは水頭症やジステンパー脳炎、髄膜脳炎、脳内に侵入した寄生虫、脳腫瘍といった脳内の疾患のことです。
これらの検査にはCTやMRIが実施され、場合によっては脳波検査などが行われることもあります。

そして、脳に明らかな異常が見つかった場合には「症候性てんかん」、何も異常が見つからなかった場合は「突発性てんかん」と診断されることになるわけですね。
なんとも長い道のりですが、てんかんとはこれだけ綿密に検査をした結果診断されるものであり、ここまで詳細に調べるのは、その後の治療が症候性と突発性では違ってくるからです。

てんかんの治療

症候性にしろ突発性にしろ、抗てんかん薬が処方されることになるでしょう。
しかし、症候性てんかんの場合は、同時に原因となる病気の治療も開始されることになります。
つまり、症候性てんかんの場合は原因となる病気が完治すれば、てんかん発作が起こらなくなる可能性があるわけですね。

しかし突発性てんかんの場合は、完治することはない、と覚悟する必要があります。
抗てんかん薬は、てんかんを治療するためのお薬ではありません。
あくまでも発作の頻度を減らしたり、もしくは発作を軽くするために服用するお薬です。
要するに、突発性のように根治が見込めないてんかんは、抗てんかん薬で症状を緩和しながら、愛犬の生涯にわたってつきあっていくしかないんですね。
こう聞くとなんだか絶望的な気分になるかもしれませんが、動物医療が発達した現代では、抗てんかん薬で発作をコントロールすることにより、健康な犬と遜色ない寿命を全うする犬は珍しくなくなりました。

ただし、抗てんかん薬はすべてのてんかん発作に対して万能というわけではありません。
薬を服用しても効果がみられない場合は、種類の違う抗てんかん薬を順々に試していくことになります。
そして、もしもすべての薬を試しても発作をコントロールできない場合は、症状が重篤になって死に至ることもあります。
また、てんかん発作を起こしたあと、元の状態に戻らないうちに再び発作を起こしてしまう場合も、残念ながら寿命を削ることになるでしょう。

とはいえ――。
抗てんかん薬は、てんかん発作を起こす犬にとっては命綱に等しいもの。
飼い主の勝手な判断で投薬をやめてしまうことは、愛犬の寿命を縮めることと同じです。
せっかく抗てんかん薬によって発作がほとんど起こらなくなっていたのに、もう大丈夫だろうと飼い主が勝手に判断して投薬をやめてしまった結果、急激に症状が悪化してしまうこともあります。
あわてて投薬を再開しても、もはや薬が効かなくなっていたら、元も子もありません。

てんかん発作を起こす犬のQOLを維持することは可能

愛犬が突発性のてんかんと診断されることは、飼い主にとってはとてもつらいことです。
しかし、嘆いていてもてんかんが治るわけではありません。
まずは愛犬の体質に合う抗てんかん薬を、時間がかかっても見つけることが大切です。

そして見つかったらきんと投薬を続け、てんかん発作をコントロールしていく。
これで、愛犬は以前とほとんど変わらない生活を送ることができるはずです。

もちろん、てんかん発作が起きた場合に命の危険性があるレジャー――たとえば水泳などは控えるべきですが、そういうことに気を付けさえすれば、家に閉じこもっている必要はありません。
突発性てんかんのワンちゃんのQOL(クオリティーオブライフ/生活の質)を今までと変わらず維持してあげられるのは飼い主だけなのです。

楽しい時間が犬の体に悪影響を与えるはずがありません。
てんかん発作をしっかりとコントロールして、愛犬をどんどん楽しませてあげましょう。