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高齢者独居世帯の犬が熱中症で倒れた!

この記事の目次

日本の高齢化が進むにつれ、高齢者だけの世帯が増えました。
高齢者一人だけの独居世帯も、いまや珍しくないようです。

そんな一人暮らしのお年寄りが犬と暮らしていたら、その犬はとても大切な存在に違いありません。
家族であり、心のよりどころにもなっているのではないでしょうか。

しかし、綺麗事だけでは済まされない現実があるのです。

動物病院での出来事

先日、犬の定期健診でかかりつけの動物病院に行ったときのことです。
待合室で診察の順番がくるのを待っていると、そこに血相を変えた40代ぐらいの女性と、かなり高齢とおぼしき女性が飛びこんできたではないですか。

おばあさんが腕に抱いていたのはロングコートチワワで、痙攣を起こしているように見えました。
待合室には私を含めて3人が順番待ちをしていましたが、命の危険があるため順番を飛ばしてチワワが先に処置室へ。

なんとなく待合室いる全員がはらはらとした気持ちで様子をうかがっていると、しばらくして二人だけが診察室から出てきました。
チワワはどうやらそのまま入院、ということになったようです。

チワワはなぜ熱中症にかかったのか?

待合室にいた人達が、誰とはなしに何があったのかをたずねると、チワワの飼い主はどうやらおばあさん一人のようです。
一人暮らしのためチワワに留守番をさせて買い物に行き、戻ってみたらアワを吹いて倒れていたのだとか。

おばあさんとチワワを車で連れてきた女性は、どうやらおばあさんの隣家を用事でたずねてきただけの、いわば通りすがりの人だったようです。
騒ぎを聞きつけて、車で病院まで送ってくれたんですね。

その日、初夏にはまだ早いとはいえ、気温が高くむしむし湿気の多い日でした。
それなのに、おばあさんはなぜ窓を締め切って出かけてしまったのでしょうか。
たずねられておばあさんはこう言いました。

「窓を開けて外出なんかしたら、犬が盗まれる」

そういうときはクーラーなり扇風機なりをつけて出たほうがいい、誰かがそう言うと、おばあさんいわく「電気代がかかるから、つけたまま外出するのはイヤだ」と……。

高齢者だけで犬を飼うことの危うさ

この一連のやりとりを聞いていて、あらためて高齢者だけで犬を飼育することの難しさを感じてしまいました。

高齢者が犬を飼育してはいけない、とは思いません。
比較的在宅していることが多い高齢の飼い主と、元来が寂しがりやの犬はとても良い関係を築くことができるはずです。

また、多くの子どもを育ててきた経験のある高齢者が犬を飼うと、ちょっとしたことに動じないからなのか、犬が神経質にならずに成長できているケースも多く目にしてきました。

しかしその反面、高齢者の中にある固定観念という厄介な代物が、そう簡単には崩れてくれないことも実感しています。
今回のケースでいうなら「チワワは高価な犬だ」という思い込みでしょうか。

昔の概念のまま犬を見ている

確かに、ドッグショーなどの第一線で活躍するようなチワワは、成犬になってもそれなりの高値で取引されることはあります。
しかし、これだけ世の中に家庭犬としてのチワワが蔓延している今、チワワだからという理由だけでチワワの成犬がそう簡単に盗まれるとは思えません。

しかも、電気代がかかるのが嫌だと言っているぐらいです。
何年前におばあさんが購入したのかはわかりませんが、そのチワワが飛びぬけて高価な犬だったとも思えません。

でも、おばあさんにとってのチワワとは、油断していたら誰かに盗まれてしまうような高級犬のままなのです。

いざというときに対処できるか

高齢者が犬を飼う場合、やはり周囲のサポートは絶対的に欠かせません。
普段の生活においては問題がなくても、いざ問題が起こったときには迅速な対処が必要になるからです。

今回は、たまたま居合わせた女性がおばあさんとチワワを動物病院に連れてきてくれたからいいようなものの、もしも誰にも会わなかったら、おばあさんはどうしたのでしょうか。
車の運転はできないと言っていたので、タクシーを呼んだかもしれません。

しかし、熱中症は一刻を争う危険な状態。
もたもたしていたら、あっという間にチワワは命を落としていたかもしれません。

お年寄りに犬の飼い方を指導することの難しさを、あらためて突きつけられたような出来事でした。