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トキソプラズマ症という感染症を知っていますか?

この記事の目次

トキソプラズマ症とは、トキソプラズマという寄生性原生生物に感染して引き起こされる病気のことです。
猫やキツネが感染する病気、というイメージを抱いている方も多いかもしれません。

実際のところはどうかといえば、実は哺乳類や鳥類のすべてがトキソプラズマに感染する可能性があります。
もちろん、人間も含めての話しです。

犬がトキソプラズマに感染するとどうなるの?

基本的に犬がトキソプラズマに感染しても、ほとんど症状は表れません。
ただし、免疫力の低い子犬や老犬、またはなにがしかの疾患などで体が弱っている犬が感染すると、症状が表れることも。

主な症状としては、発熱や食欲の低下、下痢などですが、体が弱っているときに感染すると咳や呼吸困難、痙攣(けいれん)、肺炎などの重篤な症状に陥ることもあります。
また、妊娠した犬が感染すると、流産や死産などの原因になることもあります。

トキソプラズマの感染経路は?

トキソプラズマのオーシスト(虫卵のようなもの)が口に入ることで感染します。
犬が感染する具体的な経路としては、以下のようなケースが考えられるでしょうか。

  • トキソプラズマに感染している生肉(主に豚肉と鶏肉)を充分に加熱しないで犬に食べさせたとき。
  • トキソプラズマに感染した猫の糞を犬がなめたとき。
  • トキソプラズマに感染した猫の糞で汚れた場所を犬がなめたとき。

上記からわかるように、トキソプラズマの感染経路は口からだけで、空気感染はしません。

犬の糞からは感染しない

トキソプラズマにとって、犬は中間宿主(ちゅうかんしゅくしゅ)です。
中間宿主とは、寄生虫がその動物の体内では有性生殖をしないということ。
もっとわかりやすく言い換えると、犬に寄生したトキソプラズマでは、別の個体に感染するためのオーシストを作ることができません。

では、どんな動物の体内でオーシストを作るのかといえば、それはネコ科の動物だけです。
といっても、ライオンやトラと一緒に暮らしている一般人は、そうはいませんよね。
要するに、ネコが終宿主(しゅうしゅくしゅ)となった場合のみ、感染力のあるオーシスト入りの糞を排泄します。

つまり、トキソプラズマは人畜共通感染症ですから、犬とネコの両方がいるお家では、犬、ネコ、人間のすべてに感染する可能性があるわけですね。

症状がでないのに怖がる必要ってあるの?

感染したところで飼い主も犬も健康なら、たいした症状はでないんでしょう?それをわざわざ怖がる必要ってあるの――?という疑問をいだいた人もいるのではないでしょうか。

怖がるかどうかは別として、少なくとも注意をする必要があることだけは間違いありません。
なぜなら、妊婦がトキソプラズマに感染した場合、妊婦本人にはたいした症状がみられなかったのに、胎児は先天性トキソプラズマ症になる可能性が高いからです。
妊婦がトキソプラズマに感染すると死産や流産をしやすくなるばかりか、生まれてきたとしても赤ちゃんの脳や目になんらかの障害が生じていることもあるのです。

めぐりめぐって感染させてしまうかも

自分の周囲には妊婦さんはいないから平気!と軽く考えるのも禁物です。

なぜならトキソプラズマは感染しやすいわりに症状があまり表れないため、知らず知らずの間に感染を広げてしまう可能性があるからです。

うちはネコにも犬にも生肉なんてあげないし、ネコは絶対に外に出さないから感染するはずがない……。
と思っていたら、犬が散歩の際にトキソプラズマに感染した野良猫の糞になんらかの形で接触してしまい、帰宅後今度はネコに感染し、感染力のあるネコの糞を始末した飼い主の手を介して、飼い主家族全員が感染するかもしれません。

そんなふうに知らない間に感染がめぐりめぐって、いつの間にか妊娠中の女性や免疫不全の人に感染してしまう可能性がないとは言えないんです。
いくら知らなかったとはいえ、そういう感染の起点になんてなりたくありませんよね。

トキソプラズマ症を防ぐためには

トキソプラズマの感染を防ぐためにできることは、実はそれほど難しくありません。

  • 安易にペットに生肉は食べさせず、必ずしっかりと加熱してから。
  • 犬とネコを一緒に飼育している場合、ネコの糞には絶対に犬が近づけないように注意する。
  • 犬を散歩させる際、野良猫がトイレにしやすい花壇や砂場、植え込みなどには近づかない。

こんなふうに、人畜共通の感染症は、実は私たちのすぐ身近にあります。
そのことを常に忘れずにいることが、一番の感染予防につながるのかもしれません。