大型犬は小型犬よりなぜ寿命が短いのか
一昔、二昔前に比べると、犬の寿命はずいぶんと長くなりました。
室内飼育が増えたことで、気温や湿度といった環境によるストレスが軽減したこと、ドッグフードの品質が向上したこと、そして動物医療の充実も、犬の長寿に一役買っているはずです。
とは言え――。
小型犬に比べると、大型犬の寿命は総じて短めであることは、いまも変わりません。
ではなぜ、大型犬は小型犬より寿命が短いのでしょうか。
哺乳類の寿命は基本的に体が大きいほうが長生きをするはずなのに…
哺乳類は体の大きな動物のほうが、体の小さな動物より長生きをする傾向にあります。
たとえば、哺乳類最大の動物であるシロナガスクジラの寿命はおよそ85年。
アフリカゾウは60~80年。
サイは約40年で、キリンは約25年、ライオンなら約20年といったところでしょうか。
これに対して体の小さな動物――たとえばハムスターは2~4年、ウサギなら5~10年。
そして犬はといえば、7~15年が寿命といわれています。
ただし、犬は小型犬の平均寿命が15年前後であるのに対し、大型犬の寿命は6~12年程度。
哺乳類全体で見れば体の大きな動物は小さな動物より長生きをするはずなのに、同一の動物においては体の小さい個体のほうが、大きい個体より長生きをする傾向にあるんですね。
大型犬と呼ばれる犬種を個々に見ていっても、その傾向はかなりはっきりしています。
体重が30~50kgのラブラドールレトリーバーが10~14年であるのに対し、体重70~100kgのイングリッシュマスティフは6~9年。
体重50~90kgのグレートデンは8~10年ぐらい。
これまでになんらかの形で関わってきたマスティフやグレートデンを思い返してみても、おおむね8~10才あたりで天寿を全うしていったように記憶しています。
大型犬は生涯を駆け抜けていく
ドイツのゲオルク・アウグスト大学ゲッティンゲンの進化生物学者の研究によると、74犬種5万匹の犬のデータを分析した結果、大型犬は小型犬より早いペースで年をとる、と結論付けられています。
簡単に言ってしまえば、大型犬は小型犬より早く年を取るから、早く寿命を全うする、というわけですね。
確かに、大型犬の子犬の成長は目を見張るものがあります。
じっと見つめていたら、四肢が伸びる音がするのではないかと思うほど、急速に成長していくんですよね。
それに対してチワワやヨーキーといったかなり小さめの小型犬は、たしかにスクスクと成長はしていくものの、「うわぁ、大きくなったなぁ」という感想をいだいたことはないような気がします。
体格と内臓の大きさの比率も寿命に影響している
大型犬も小型犬も、体の中にある内臓の種類や数は同じです。
まあ、当たり前のことですよね。
しかし、体格と内臓の大きさの比率は同じではありません。
大型犬は小型犬に比べると、内臓の大きさの比率が小さいのです。
それは結果として、酸素や栄養を体のすみずみにまで届ける能力に差を生んでしまうわけですね。
小型犬に比べると酸欠になりやすい大型犬の体は、どうしても細胞が老化しやすいのです。
さらには、成長が速い=細胞の生まれ変わるスピードが速いということになり、そのせいでガン細胞の発生率が高くなるといわれています。
つまり、大型犬は小型犬に比べると病気になるリスクが高いということになるんですね。
大型犬を出来るだけ長生きさせるために出来ること
小型犬に比べて大型犬の寿命が短い傾向にあるのは、ある意味宿命のようなものであり、それが天寿なのだと割り切るしかありません。
とは言え、少しでも長生きさせるために出来ることはあるはずです。
たとえば、早い時期に去勢や避妊を済ませておく。
これにより、生殖器に関わる病気のリスクをかなり排除することが可能です。
さらには発情がもたらすストレスを取り除くことができますので、去勢や避妊をしないままでいるのに比べて長寿につながることは間違いありません。
もちろん、程度な運動と栄養バランスの整った食事も重要な要因となるでしょう。
日々の健康管理はもちろんのこと、定期的に健康診断を受けさせることや、予防接種なども長寿へとつながる行動です。
大型犬は短命だと嘆いている暇があったら、愛犬が長生きするように生活環境をしっかりと整えることに注力したほうが、ずっと建設的であることは間違いありません。
大型犬はその生涯を駆け抜けていくもの。
だからこそ、スタートからゴールまで生き生きと駆け抜けさせてあげたいものです。
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