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犬がボタン形電池を飲み込んだらすぐに病院へ

この記事の目次

もしも愛犬がボタン形やコイン形の電池を飲み込んでしまったらどうしますか?

乾電池と違って小さなものだし、待っていればそのうち便と一緒に排泄されるだろうから……。などと悠長に構えていたら、とんでもない事態に陥るかもしれません。

ほんの小さなボタン・コイン形電池一つが、愛犬の胃や腸に穴をあけてしまうかもしれないからです。

ボタン形電池を飲み込んだらどうなるの?

たとえば、犬がコイン形リチウム電池を飲み込んだとします。

すると体内に入った電池は唾液や胃液といった体液と接触することで電流を発生させますそれによって体液そのものがアルカリ性の液体へと変質するんですね。(なぜアルカリ性になるのかといえば、それはリチウムがアルカリ金属だから)

アルカリ性となった体液はタンパク質――すなわち食道や胃、腸といった愛犬の体そのものを溶かしてしまうことに。

このようにして体内の組織が破壊された結果、ボタン・コイン型電池が接していた食道や胃、腸などに穴があいてしまうのです。

仮に穴があく前に電池が体内をどんどん移動したとしても、接触していた部分の組織にはびらん(ただれのこと)や潰瘍(深い部分まで組織が欠損すること)を生じさせているかもしれません。便と一緒に排泄されたとしても、無傷では済んでいない可能性が高いのです。

コイン形電池を使った実験

ボタン・コイン形電池の誤飲事故が増えていることから、国民生活センターではその危険性を証明するための実験を行ったことがあります。

実際は乳児による誤飲事故が減らないことから行われた実験ですが、なんでも口に入れてしまうところは犬も同じ。 では、どんな実験を行ったのかといえば…。

  1. 鶏の胸肉を24時間生理食塩水に漬ける(体内と同じ状況を作り出すために)
  2. 上記の胸肉の上に汎用されているにコイン形リチウム電池を乗せる。
  3. 常温(25℃)のまま20分間放置。

さて、その結果はどうなったかといえば。

なんと、コイン形リチウム電池の形状そのままのくぼみができていたんですね。要するに「化学やけど」と呼ばれる状況によって組織が損傷し、穴があいてしまったのです。

もしもそれが愛犬の体内で起こったとしたら――。考えるだけでゾっとしませんか?

ちなみに、ボタン形アルカリ電池でも同様の実験を行なったところ、コイン形リチウム電池よりは多少ましだったものの、やはり電池の形そのままのくぼみができました。

コイン形リチウム電池とボタン形アルカリ電池のどちらを誤飲しても危険であることが証明されたのです。

手術をしても助からなかったチワワの実例

9ヶ月のオスのチワワが何度か嘔吐を繰り返し、おかしいと感じた飼い主が病院を受診。レントゲン撮影により、ボタン形電池を誤飲しているとわかったのです。

開腹手術で取り出そうとしましたが、電池が直接接触していた回腸(十二指腸から続く小腸の一部)に穴があいていることが判明しました。さらには小腸と大腸の一部が炎症によって癒着していたのです。

そのため穴があいた部分を切除すれば終わりというわけにはいかなくなり、癒着した部分を剥離させようとしていた最中、腹部を通る動脈の一部が破れてしまいました。

止血のためにその部分を縛って固定したものの、それにより血行障害を起こしたチワワの小腸は、広範囲を切除しなければならなくなったのです。

結局、そのチワワは嘔吐で受診したおよそ5ヶ月後に、闘病のかいなく死亡しました。

ボタン形電池による炎症が原因で小腸の大部分を失うことになったのです。まともに栄養が摂取できなくなった体はガリガリに痩せていました。

飲み込んでしまったら1秒でも早く病院へ

愛犬の手(口)が届く場所に、ボタン・コイン形電池が使われている器物を置かないことが大前提です。

しかし、万が一飲み込んでしまった場合は1秒でも早く動物病院へ急ぎましょう

ボタン形電池を机の上に出しっぱなしにするようなことはしないから、などと油断していると、愛犬がリモコンや体温計をイタズラしているうちに噛み砕いてしまい、その結果として電池を飲み込んでしまうかもしれません。

タイマー、リモコン、ゲーム機、体温計などなど、いまや私たちの生活空間にはボタン・コイン形電池が使われている便利グッズが無造作に置かれています。

だからこそ、私たち飼い主が考える「まさかの事態」は、犬と暮らしていれば「いつでも起こりうる事態」なんですよね。残念なことに、後悔はいつだって先にはたってくれません。

愛犬の命を守るために、いまいちど部屋の中を見回してみてください。