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愛犬の肝臓に問題があるとき見るべき血液検査の項目とは

この記事の目次

ここ数日、愛犬が毎日のように嘔吐を繰り返している。
何か変なものでも食べさせただろうか?
ひょっとして風邪でもひいたのだろうか?
それともただの胃腸炎?
などと考えつつ動物病院を受診し、血液検査の結果「肝臓の数値に問題あり」と診断されたら――。
これまでは見過ごしてきた血液検査の項目と、そこに示されている数値が飼い主さんに重くのしかかってくることになります。

しかし、ただ闇雲にショックを受けていたところで事態は好転しません。
愛犬の肝臓の状態を改善させるために何ができるのか。
まずは血液検査が示している数値の意味を、きちんと知る必要があります。

肝臓の役目を正しく理解しておく

血液検査が示している肝臓の状態を把握する前に、まずは肝臓の役割についてきちんと知っておきましょう。
なぜならここを理解しておかないと、肝臓の数値に異常が出てしまった愛犬の体が、いまどんな状態になっているのかを正しく判断することができないからです。

糖質の代謝

摂取した炭水化物はブドウ糖に分解され、小腸から吸収されて肝臓に入ると、グリコーゲンに合成されて肝臓に貯蔵されます。
その後は必要に応じて肝臓内のグリコーゲンがブドウ糖に分解され、血液中へと分泌されていきます。

タンパク質の代謝

食べ物から摂取したタンパク質はアミノ酸に分解されてから肝臓へと入り、必要に応じて体を構成するタンパク質へと再合成されます。
血液凝固因子(血液を固めるためのタンパク質)も肝臓の働きによって作られるため、肝臓の機能に問題が生じると出血の傾向がみられるように。
その結果、血小板数などが基準値を上回ってしまうのです。

脂質の代謝

食べ物から摂取した脂質は脂肪酸とグリセロールに分解され、その一部が肝臓へと入ります。
これらの脂肪酸とグリセロールはコレステロールを合成するための材料になるほか、エネルギーとして使うために脂肪酸の一部が分解されることもあります。

胆汁の分泌

胆汁は肝臓から分泌される消化液のことで、コレステロールを材料として作り出され、脂肪の消化や吸収に使われます。

解毒作用

体内に入った有害物質を酸化、還元、加水分解、抱合といった様々な方法によって解毒します。
※酸化/酸素と化合すること
※還元/酸化物から酸素を取り去ること
※加水分解/水が作用して起こる分解反応のこと
※抱合/有害物質が他の物質と結合すること

有害物質の排出

肝臓が解毒した有害物質のうち、水溶性の物質は肝臓を介して尿に混ざり、体外へと排出され、不溶性の物質は胆汁と一緒に便に混ざって体外へと排出されます。

上記にあげた肝臓の働きを見れば、どれだけ重要な臓器であるのかが、一目瞭然ではないでしょうか。
つまり、肝臓の機能に問題があるということは、単純にあそこが痛い、ここが痒いというように、局所的な問題で済ませることのできない、まさに非常事態です。

肝臓の機能に問題がある場合に異常値を示す血液検査の項目

肝臓の機能に問題があるからといって、血液検査の項目すべてに異常値が出るわけではありません。
ではどういう項目に異常がでやすいかといえば、元々は肝臓の細胞内に存在している酵素に関する数値。
なぜ肝臓の細胞内にあるはずの酵素が血液検査で引っかかってくるのかといえば、肝臓機能の悪化によって血液中に漏れ出してくる量が、正常範囲におさまらなくなるからです。

ALB(アルブミン)

アルブミンとは血清中に含まれているタンパク質の一つで、食べ物から摂取したアミノ酸によって合成されます。
(※血清/血液が固まるときに分離する免疫抗体を含んだ黄色~透明な液体のこと)
犬の正常値とされているのは2.6~4.0(g/dl)
脱水状態のときにはこの数値が高くなり、慢性の肝疾患や消化・吸収の不良、もしくは栄養不足によって数値が低くなります。
また、体内のどこかで出血している、もしくは腎疾患の場合もアルブミンの数値は低下します。

ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)

アラニンアミノトランスフェラーゼとは酵素の一種で、肝臓に一番多く含まれています。
犬の正常値とされているのは17~78(U/l)
つまり、ALTの値が高いということは、肝臓になんらかの異常があって細胞が壊れてしまった結果、血液中に漏れ出しているということ。
そのため肝機能障害や低酸素症が疑われることになります。

AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)

アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼとは酵素の一種で、心臓の筋肉、肝臓、骨格筋に多く含まれています。
犬の正常値とされているのは17~44(U/l)
つまり、ASTの値が高いということは肝機能障害、心臓の機能になんらかの障害がある、もしくは筋肉の炎症や壊死などが疑われることになります。

ALP(アルカリフォスファターゼ)

アルカリフォスファターゼとは酵素の一種で、肝細胞、胆管上皮細胞、骨芽細胞などで産出されます。
犬の正常値とされているのは47~254(U/l)
この数値が上昇する可能性としては肝機能障害、胆汁のうっ滞(静脈内に停滞した状態)、腫瘍、クッシング症候群などが考えられます。
また、ステロイド薬の投与や骨の病気が原因で数値が上昇することもあります。

血液検査の結果が教えてくれること

肝臓の機能になんらかの問題がある場合、数値に異常がみられるのは上記の項目だけとは限りません。
TP(総タンパク質)、GGT(ガンマグルタミントランスペプチターゼ)、T-Bill(総ビリルビン)などなど、正常値から外れてしまう可能性のある項目はいくつもあります。
とはいえ、肝機能に問題がある場合、たいていは上記の項目のいくつか、もしくはすべてにおいて正常値内におさまらなくなることがほとんどです。

では、この項目の中のたった一つだけ正常値から外れてしまった場合はどうでしょうか。
かかりつけの獣医師からは「まだ肝機能障害とまではいかない」と診断されたとしても、飼い主として愛犬のためにできることはいくらでもあるはずです。
すなわち、食事内容の見直しと、生活環境の見直しです。
これらを早期に見直すことで、働き過ぎている愛犬の肝臓をいたわり、肝細胞を正常な状態へと戻すことはできるはず。

だからこそ、血液検査の結果は一喜一憂するために存在しているわけではありません。
今日から改善に向けた一歩を踏み出すための、指針とすべき数値なのです。