MENU

甲状腺機能低下症はどんな犬にも起こりうる病気です

この記事の目次

甲状腺ホルモン――。
なんとなく知っている言葉ではあっても、どういう働きをしているのかと聞かれたら、なんだかよくわからないのではないでしょうか。

甲状腺ホルモンとはその名の通り、喉の下にある甲状腺という器官から分泌されるホルモンで、全身の細胞に作用して代謝を上げる働きをしています。
簡単に言ってしまえば、体が活動するために必要なエネルギーを作り出しているんですね。
そのため、多すぎても少なすぎても体調に影響を与えてしまうホルモンでもあります。

そんな甲状腺ホルモンの機能ですが、犬の場合は機能が強くなり過ぎることはまれ。
圧倒的に多いのは機能が低下してしまう方なんです。
しかも、年をとると甲状腺の機能は低下しやすくなりますから、愛犬がシニア世代に突入したら、日頃から気をつけておかなければいけません。

甲状腺の機能が低下したときの症状

甲状腺の機能が低下すると、体の活力が失われてしまうのはもちろんのこと、もっと重篤な症状を引き起こすこともあります。

  • ぼんやりとしていることが多くなり、なんだか悲しそうな顔をしているように見える。
  • 以前に比べるとなんとなく元気がなくなった。
  • 以前に比べると寝ている時間が長くなった。

こういった症状は、「この子も年をとったなぁ」とつい見過ごしてしまいがちに。

  • 寒さに弱くなった気がする。
  • 食べ過ぎてはいないはずなのに、なんだか太ってきた。
  • 散歩に行きたがらなくなった。
  • 遊んでやってもあまり喜ばなくなった。

こういった症状も、気になりつつも「老犬になったからかな?」と思ってしまうかもしれません。
では、次のような症状がみられたらどうでしょうか。

  • 胴体が左右対称で脱毛しているが、痒がっている様子はみられない。
  • しっぽの毛が抜けてネズミの尾のようになってしまった。
  • 皮膚がやたらと乾燥するようになり、やたらとフケがでるようになった。
  • お腹の皮膚が黒ずんできた。
  • 体のいろいろな部位の毛が抜けてしまい、抜けたところの皮膚が黒ずんでいる。
  • 外耳炎。

このような症状がでると、さすがに「おかしい!?」と感じますよね。
ここまできてしまうと、もう初期の症状ではありません。
食べ過ぎていないのに太ったのは、代謝が落ちていたからだったんですね。
もしも甲状腺機能の低下をそのまま放置し続けてしまうと、さらなる重篤な症状を引き起こすかもしれません。

  • 心拍数と血圧が下がる。
  • 慢性の貧血。
  • 全身のむくみ。
  • 顔面の神経麻痺。
  • てんかんのような痙攣発作(けいれんほっさ)。

ここまでくると、甲状腺機能低下症は絶対に見過ごしてはいけないのだということが、よくわかるのではないでしょうか。
最悪は死に至ることだってあるんです。

もちろん、こんな重篤な症状を引き起こす前に動物病院で診察してもらい、治療を開始しなければいけません

甲状腺の機能が低下する原因

そもそも、なぜ甲状腺の機能が低下してしまうのかといえば、それは甲状腺ホルモンが足りなくなることに起因しています。

その原因について、先天性(生まれつき)であることはまれなのだとか。
つまり、そのほとんどは後天的なものであり、犬の体力が最も充実している4才を過ぎたあたりから、どんな犬にも起こり得ることなんです。

原因として考えられるのは、

  • 自己免疫疾患によるもの
    なんらかの理由で免疫系が外から侵入してきた異物のように自身の甲状腺を攻撃したことで炎症が起き、機能が低下してしまう。
  • 甲状腺萎縮
    原因不明で甲状腺そのものが萎縮してしまい、機能が低下してしまう。

甲状腺機能が低下する原因からもわかるように、はっきり言って予防することは困難、というか、ほぼできません。
つまりは、いかに早期発見できるかにかかっている状態なんですね。

甲状腺機能低下症の治療

治療としては、甲状腺ホルモンを補うための投薬をおこないます。
また、別の疾患が原因で甲状腺の機能が低下している場合は、そちらの治療もおこないます。

いずれにしても、甲状腺機能の低下によって体調不良が起きてしまったら、残念ながら「完治」と呼べる状態にはなりません。
生涯にわたって投薬治療を続けていかなければいけないのです。

とはいえ、きちんと投薬を続けていれば、健康な状態とあまり変わらない生活を送らせてあげることは可能であり、絶望する必要なんてないんです。

そして、重篤になるまで放置すれば、それだけ寿命が削られてしまうことも間違いありません。
愛犬に元気で長生きしてもらうためにも、「前とは違うな」と感じることがあったら、年齢のせいだと決めつけず、急いでかかりつけの獣医さんに診察してもらうことが大切です。
その結果、本当にただの老化だったら、安全なシニア犬ライフを送らせるための準備をすればいいだけのことだと思いませんか?

とにかく、早期発見早期治療。
これが一番なんです。