愛犬の耳が遠くなった――老犬性難聴
老犬と暮らしていると、「うちの子、耳が遠くなったなぁ……」と感じることがあります。
犬も年をとると体のいろいろな部分が衰えていきますので、聴覚の衰えもある程度は仕方がないことなのでしょう。
しかし、反応が鈍くなった=年をとった犬にはよくあること、と片付けてしまっていいのでしょうか?
もしかしたら原因は老犬性の難聴ではないかもしれません。
耳が遠くなったと決めつけてしまう前に、まずは確認するべきことがあるのです。
老犬性の難聴を疑うのはこんなとき
犬の老犬性難聴は、人間のように病院で聴力テストをして判定することができません。
だからこそ、普段の生活の中で飼い主さんが「あれ?」と疑問に思うことが大切なのです。
犬が寝ている耳元で大きな音をたてて、その際の反応の仕方で聴力を確認するという方法もありますが、飼い主だからこそわかる生活の中で見られる難聴の兆候は……
- 犬がよそを向いているときに「犬の名前」や「オヤツ」、「お散歩」などのような、以前だったら即反応していたワードで呼びかけてもあまり反応しなくなった。
- 犬の背後からなぜようとしたり、抱き上げようとした瞬間にビクっとして驚かれたことがある。
- チャイムの音や花火、カミナリの音に対して以前ほど騒がなくなった。
こういったことは、老犬になると珍しいことではありません。
年をとってまるくなったといえば確かにそんな気がしてくることばかりですが、思い当たる場合は老犬性難聴、もしくは別の可能性があります。
老犬性の難聴と決めつけずに動物病院を受診する
前述した兆候に思い当たるからといって、「じゃあ、うちの犬は老犬性難聴だ」と断定してしまうのは早計です。
と言うのも、老犬の耳が聴こえにくくなっているすべての原因が老犬性難聴とは限らないからです。
- 内耳炎、外耳炎、耳血腫、耳ダニ感染症などの病気
- 内耳または外耳にできた腫瘍
- 耳垢が鼓膜に付着している
こういった原因で耳が聴こえにくくなっている場合、治療によって聴こえが改善することは珍しくありません。
年をとったから耳が遠くなったと思いきや、原因は他にあるかもしれないのです。
だからこそ愛犬の耳が遠くなったと感じたら、年をとったから仕方がないと流してしまう前に、まずはかかりつけの動物病院で診察してもらうことが大切です。
難聴になった老犬との生活で気をつけること
耳の病気が原因で聴こえにくくなっていたのだとしたら、治療によって聴こえが改善する可能性はあります。
しかし、老犬性の難聴によるものだとしたら、聴力が復活することはかなり難しいと言わざるをえません。
ここから先は、耳が聴こえにくくなった愛犬が快適に暮らしていくにはどうしたらいいのかを考える必要があります。
いきなり体を触らない
愛犬の体に触れる前に、接近を知らせるようにします。たとえばわざと足踏みをして振動をたててみたり、パンパンと手を叩く音が聞こえていそうな場合は、手を叩きながら名前を呼んでから近づくと、不用意に驚かせないですみます。
ハンドサインを加える
「待て」「伏せ」「お座り」「よし」「来い」などの基本的なコマンドを出す際には、必ずハンドサイン(ジェスチャー)も合わせて示すようにします。
耳が遠くなる前からハンドサインを出していると楽ですが、耳の聴こえが悪くなった後からでも、根気よく続けることで理解させることは不可能ではありません。
ポイントは、わかりやすいサインを大きな手振りで見せることです。
耳が聴こえていたとき以上に笑顔で接する
耳が聴こえにくくなった犬は、飼い主の声が聞こえなくなったことで、飼い主の感情を以前ほど上手に理解できなくなることがあります。
それは、飼い主を喜ばせることががなによりも好きな犬にとってかなりつらいことではないでしょうか。
だからこそ、以前よりもっと笑顔で楽しそうに愛犬と接することで、不安を取り除いてあげることはとても大切なことなのです。
車やバイクの音が聞こえていない可能性を常に念頭に置く
耳が聴こえにくくなった犬は、バイクや自転車、車などの接近に気づかないことがあります。
犬の散歩をしながらスマホの画面に夢中になっていたら、耳が遠くなった愛犬を危険にさらすことになりかねません。
聴力が衰えた愛犬の安全を守ってあげられるのは飼い主さんだけなのです。
聴覚が衰えた分、嗅覚で安心感を
犬は視覚、聴覚、嗅覚の順に衰えていくといわれています。
そのため、聴覚が衰えた犬の多くは先に視力もかなり衰えていると考えるべきではないでしょうか。
となると、頼りにしている五感の中で残っているのは嗅覚。
もしも愛犬が老犬性の難聴になったら、飼い主さんのにおいがするものを常に近くに置くことで、安心感を与えてあげましょう。
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