フィラリアの予防薬は実は予防しているわけではない
犬が蚊に刺されるとフィラリアになるかもしれない――。
犬を飼う人なら、おおむね誰もが知っていることです。
フィラリアは蚊を媒介として犬に感染する糸状の寄生虫で、
犬の体内で成長するとメスは28センチ前後、
オスは15センチ前後にまで成長するそうめんのように細長い姿をしています。
その虫が心臓や肺動脈に寄生してオスメスが交尾をし、
生まれた子虫が血液の中を駆け巡り、それを吸血した蚊によって
次の宿主へと移っていくわけです。
漠然と「蚊に刺されるとフィラリアになるかもしれない…」と考えているだけでは
なかなかこの恐ろしさが伝わりにくいところがあります。
ですから犬を飼う人は、一度ぐらいは
心臓に寄生したフィラリア成虫の画像を見てみるとよいかもしれません。
食事の前に見ると、確実に食欲が落ちることになるでしょう。
ところで、フィラリア予防のために毎年時期になると
一月に一回予防薬を飲ませている飼い主さんも多いと思いますが、
実はフィラリアは予防できないって知っていましたか?
予防ではなく早期殺虫をしている
誤解がないように先に申し上げておきますが、予防ができないからといって
フィラリアの薬を飲んでも無駄という意味ではありません。
この薬は毎月1回飲ませることで、
万が一フィラリアの子虫が体内に入ってしまっても、
悪さをはじめる前に駆虫することで効果をあげているのです。
犬が蚊に刺されることを100%阻止することができるとしたら、
フィラリアにかかることはありません。
しかし、どんなに蚊取り線香をたこうが蚊取りマットをつけようが、
絶対に蚊に刺されないとは言い切れません。
つまり、フィラリアの子虫が犬の体内に入り込むことを
完全に阻止することはほぼ不可能と言ってもいいわけです。
ですから、子虫が入ることを阻止するための措置も大切ですが、
入ってしまったことを想定したうえでの毎月の駆虫薬は効果が高いのです。
子虫のうちに殺虫すれば心臓に寄生されずに済む
フィラリアが体内に入り込むと恐ろしいのは、
最終的に心臓に寄生するからです。
しかし、体内に入りたての子虫は心臓に到達する前に
3~4ヶ月をかけて筋肉や脂肪など、違う組織を移動しながら
発育を続けて心臓を目指していきます。
つまり、フィラリアの薬は心臓に到達する前に子虫を殺す薬なのです。
ですから、蚊が飛び交う季節の前後を含めた期間、
毎月きちんとフィラリアの薬を飲ませていれば、
憎っくきフィラリアにゴールテープを切らせることはありません。
蚊に刺された=フィラリアになるわけではありません。
子虫を持たない蚊であれば、刺されてもフィラリアにはならないのです。
しかし、どこにフィラリアの子虫を持つ蚊がいるかわからない以上、
時期がきたらきちんと投薬を続けることは、
大切な愛犬の体を守るためには絶対にやめてはいけないのです。
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