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ミックス犬は雑種だから丈夫、という考え違い

この記事の目次

雑種は純血種に比べると丈夫だから、ミックス犬を飼おう――。
もしもこんな考えでミックス犬を選んでしまうと、「こんなはずじゃなかった!」と頭を抱えることになるかもしれません。

雑種だから丈夫、とは限らない

ミックス犬と呼ばれているのは、単なる雑種というより、違う純血種同士を掛け合わせて作られた犬のことです。
チワワ+トイプードルならチワプー、ポメラニアン+マルチーズならポメマルという具合に、見た目がより可愛くなるような犬種の組み合わせが選ばれているのではないでしょうか。

そんな容姿重視のミックス犬達は、「可愛いだけじゃなくて遺伝的にも純血種より丈夫」などとうたわれていることもあります。
違う犬種同士を掛け合わせているのだから、遺伝的な疾患のリスクが減っているはずだ、という理屈からきているわけですが、これでは物事の半分しか見ていないのではないでしょうか。

確かに、遺伝的疾患を発症するリスクが減る可能性は、あるのかもしれません。
しかし、同時にそれぞれの犬種に多くみられる疾患を、両方発症してしまう可能性だってあるのです。

――でも、劣勢遺伝と劣勢遺伝が重なる可能性が減れば、結果として遺伝的疾患を発症しないで済むのでは?と考える人がいるかもしれません。
しかし、たとえば椎間板の形がヘルニアになりやすい親犬と似てしまったら、どうでしょうか?
親に似るとはそのようなことも含めるべきであり、遺伝的疾患のことだけを抜き出すのはフェアではないような気がします。

ミックス犬は思ったより弱い?

そもそも、本当の意味で強い雑種というのは、長い時間の中でいろいろな遺伝子が掛け合わさり、弱い個体が自然淘汰されていった結果のことを言うのではないでしょうか。
ところが現在流行しているミックス犬は、見た目の可愛さや珍しさを出そうとして、ピンポインで掛け合わせをしているに過ぎません。
弱い個体が淘汰されるどころか、優良な遺伝子の選択すらされていないのです。
サイズの違いすぎる犬種同士を組み合わせることもあり、その結果骨格が体格に追いつかないケースまでもあるのだとか。

しかし、こういった無理のある組み合わせも、子犬のうちは体にそれほどの負担がかからないため、すぐには問題が見えにくく、そこが厄介なところでもあるのです。
ミックス犬は成犬になってから病気になりやすく、思っていたよりも弱い――。
などと囁かれはじめたのは、結局のところはそういう理由からではないでしょうか。

昔の雑種と今のミックス犬とでは意味合いが違う

中高年以上の人に「雑種は丈夫」という感覚が強いのは、それなりに理由があるのかもしれません。
昭和の時代、雑種といえばたいがいは日本犬との掛け合わせでした。
日本犬は日本の気候風土に順応している犬種です。
日本の風土に合わない西洋犬種が日本犬と掛け合わさった場合、おそらく西洋犬種単体より丈夫になれたのではないでしょうか。
もちろん、遺伝的な部分がかなりかけ離れている、という点もプラスに働いたに違いありません。

しかし、現在人気のミックス犬は、そのほとんどが西洋犬種と西洋犬種を掛け合わせたもの。
おまけに犬種作出までの過程で、同じような種類の犬が使われてきた可能性だってあるのです。
乱暴な言い方をするなら、純血種同士の掛け合わせとたいして違いはないのかもしれません。

もしも、犬種特有の疾患を数多く抱える種類同士のミックスでも、優良な個体だけを選択して掛け合わせていけば、いずれは遺伝的に疾患の少ない、本当の意味での丈夫なミックス犬が生まれてくるかもしれません。
しかし、今すぐ見た目の可愛い子犬を作り出して販売したいブリーダーが、そんな掛け合わせをすることはありませんし、仮にいたとしても、その過程で生まれてくるすべての子犬は販売されることになるでしょう。