食べることは命に直結している!腎不全の犬に強制給餌すること
食べることは命に直結している――。
我が家の最年長犬を見ていると、つくづくそう感じます。
現在15才のこの犬は、ステージ3の腎不全。
自発的な食欲に関しては、あったりなかったりと、日によってまちまちです。
つまり、自発的な食欲任せにしてしまうと、体重の減少は避けられないんですね。
肥満の犬と違い、病気の犬が痩せてしまうことにメリットはありません。
腎不全の犬の場合は食事が摂取できないと、体が自身の筋肉を分解してタンパク質を得ようとしてしまいます。
その結果筋肉が落ちるだけではなく、分解したタンパク質が腎臓にダメージを与えるという、二重のデメリットが生じてしまうんですね。
だからこそ、ここで大いに役に立つのが強制給餌です。
強制給餌は無理矢理食べさせることではない
「強制」という文字が使われているせいか、強制給餌は「嫌がる犬に無理矢理食べさせる行為」だと誤解されてしまいがち。
しかし、いくら無理矢理口の中に食べ物を流し込んだとしても、犬の体が食事を受け付けない状態では、強制給餌をしたところで食べさせることはできません。
もちろん、犬の体が食べ物を拒否している状態だとしても、口の中や胃の中に物理的に食べ物を詰め込むことはできるでしょう。
しかし、そんな状態の体に強制給餌をしたところで、まず間違いなく嘔吐します。
それでは強制給餌が意味をなさないどころか、かえって体にダメージを与えることになりかねません。
つまり、真の意味での強制給餌とは、食べ物を消化できるだけの体力がある犬にする行為です。
食べ物を消化できるということは、体が食べ物を欲している状態と考えていいのではないでしょうか。
時々、「強制給餌でなければ食べられないなんて、もう死んでるのと同じだよ。そんな可哀そうなことをしないで楽にしてあげたら?」などと乱暴なことを言う人がいますが、それこそ勘違いもいいところ。
仮になんらかの原因で一時的に食欲をなくしていたとしても、強制給餌によって体力を取り戻し、回復できるケースは少なくありません。
確かに、体が食べ物も水も一切何も受け付けなくなったとしたら、それはその命の終わりを意味するところなのでしょう。
しかし、状況は一律ではありません。
「食べない」=「もう死なせたほうがいい」という単純な図式は成り立たないのです。
自力で動ける犬の強制給餌
強制給餌といえば、なんとなく寝たきりの犬にトロトロの液体のような流動食を食べさせるイメージがありますよね。
しかし、強制給餌で食べさせる流動食をどの程度の柔らかさにするかは、犬の状態や体調によってケースバイケースです。
たとえば、我が家の腎不全の犬の場合。
この子は普通に歩いたり走ったりできますし、トイレも以前と変わりなく普通にトイレシーツで用を足しています。
つまり、必要なのは介護としての強制給餌ではありません。
食欲が落ちているせいで自発的な食欲に任せていたら必要な栄養が摂取できないから、その部分の補助をするような「食事のお手伝い」なんですよね。
というわけで、シリンジを使った強制給餌をする際にも、液体のような流動食を作ることはほとんどありません。
強制的に水分を摂取させたいときのみ、あえてトロトロを作ることはありますが。
基本的にはトロトロのお粥のような流動食ではなく、もっと水気の少ないドロっとしたおじやのような固さに仕上げています。
このおじやタイプの流動食をシリンジに詰めて、頬の内側(頬と歯の間)に注入するんですね。
すると、何度か咀嚼したあとにゴクンと飲み込むので、実質的には自力で食べているときと同じです。
それでも、無理矢理口の中に入れていることに変わりはないのだから、嫌でも拒否できないのでは?と思われるかもしれません。
ところが、嫌なときはちゃんと拒否するんですよね。
それは見事にベーっと口から吐き出してしまうのです。
つまり、咀嚼してちゃんと飲み込んでいるということは、少なくとも「飲み込もう」という意思があると判断してもいいのではないでしょうか。
我が家の腎臓病用流動食の作り方
どのような流動食のレシピが最適なのかは、犬によって個体差があるため手探りするしかありません。
とはいえ、同じように腎不全の愛犬の食事に四苦八苦している飼い主さんに少しでも参考になればと思い、我が家のレシピをご紹介します。
我が家の犬の基礎データ
犬種/パグとパピヨンのミックス
性別/メス(避妊手術済み)
年齢/15歳
体重/腎不全を発症後、最も減ったときが3.8kg、現在は4.5kg、ベストは4.8kg
1日2回、シリンジを使って朝晩食べさせている強制給餌のレシピ
- 臓病用のドッグフード(ドライ) 一食で30~40g(体調によって増減)
- 硬めに作るときは85ml、柔らかめに作るときは100ml
- ナビラタケのサプリメント1粒
- オメガ3摂取用のオイルサプリメント1粒
- ドライフードをミルサーで粉砕したら器へ移す
- 人肌程度に温めた水を少しずつ投入しながらよくかきまぜる
- ピルクラッシャーで粉砕したハナビラタケサプリメントを投入する
- オイルサプリメントを投入してよくかき混ぜたら出来上がり
自発的な食欲に任せていたときは、4.8kgあった体重がわずか2カ月で3.8kgまで減少してしまいました。
骨と皮ばかりのガリガリとなり、被毛はバサバサ、体が一日何度も痙攣するという、いつ死んでもおかしくない状態だったでしょうか。
しかし、強制給餌によって食べさせるようにしてからは、どんどん体重が増えました。
それに伴い足取りが力強くなり、今では被毛もツヤツヤです。
もちろん、腎不全が治ったわけではありません。
しかし、元気を取り戻した今ではオヤツを美味しく食べられるまでに回復しています。
食べることは命に直結している――。
まさしくそのことを実感している毎日です。
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