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がんにかかった犬の食事は低糖質、高品質のタンパク質、オメガ3

この記事の目次

もしも愛犬ががんにかかったら――。
私たち飼い主はかなりのショックを受け、到底受け入れ難い現実を前に、頭の中が真っ白になってしまうことでしょう。

しかし、嘆いている暇はありません。
愛犬の体は憎っくきがんと闘わなければならないのです。

そして、闘いに打ち勝つための最大の武器は、飼い主さんによるサポート。
その中で重要な位置を占めるのが「食事の管理」です。

がんにかかると食べても痩せてしまうのはなぜ?

がんと一口に表現しても、その種類や出来てしまった部位、がんの持つ性質などは様々。
しかし、どんながんにかかってもある程度共通してみられる症状があります。

  • 食欲不振
  • 貧血
  • 食べていても痩せていく
  • 体の衰弱

では、なぜがんにかかると上記のような症状がみられるようになるのでしょうか。
その理由は、がん細胞から分泌されるサイトカインという物質の影響で体を維持する様々な働き――免疫、代謝、脳神経、内分泌などに異常が生じるからです。
その結果として、摂取した栄養素の働きまでがおかしくなり、がんにかかる前とは異なる栄養代謝になってしまうんですね。
きちんと栄養バランスの整った食事をさせているはずなのに、がんにかかった犬がどんどん痩せていくのは、こういった理由からです。

がんと闘うためにも体力を落とさせたくありません。
それなのに、食べさせたものの栄養が犬の身にならず、それどころかがんの栄養になってしまう状況はなんとしても避けたいところ。
だからこそ、がん細胞が利用しづらい栄養素を中心に、食事の栄養バランスを考える必要があるのです。

炭水化物はがん細胞の大好物

炭水化物は本来ならエネルギー源としてとても重要な栄養素の一つです。
しかし、残念なことにがん細胞がエネルギー源にしたがる栄養素でもあるんですね。

がん細胞の分泌するサイトカインの影響で、摂取した炭水化物を代謝する際に乳酸が産生されるのですが、体内ではこの乳酸をブドウ糖に還元しようとして、その結果エネルギーを必要とすることに。
その結果、摂取した栄養素以上に還元のためのエネルギーが上回ってしまうため、食べても痩せてしまうことになるんです。

これでは意味がないばかりか、いたずらに体力を消耗させるだけ。
だからこそ、がんにかかった犬の食事は炭水化物を減らし、低糖質にする必要があるのです。

タンパク質はガンと闘うためにも適量を摂取する必要あり

がん細胞は炭水化物だけではなく、タンパク質も好物にしています。
しかし、だからといってタンパク質の摂取量を制限してしまうと、腹をすかせたがん細胞は体内のタンパク質――筋肉などから栄養を得ようとするんですね。
その結果、筋肉量が減少してしまうだけではなく、免疫機能や消化機能にまで悪影響を及ぼしてしまうため、タンパク質を制限するわけにはいきません。
従って、がん細胞に栄養を奪われる前に効率良く消化吸収できるような質の良いタンパク質をしっかりと摂取する必要があります。

とは言え、過剰に摂取すればがん細胞を太らせるだけ。
つまり、多すぎず少なすぎずの適量を見極めることが重要になります。

また、タンパク質を構成するアミノ酸の中には、がん細胞の増殖をおさえる働きが期待されているものも。
アルギニン、グルタミン、グリシンには免疫機能を高めてがん細胞の増殖を抑制し、さらには抗がん剤による副作用を抑制する働きがあることが判明しています。
だからこそ、摂取させるタンパク質にはこういったアミノ酸が含まれている質の高いものを選びたいところです。

脂質はがん細胞がエネルギー源にしづらい栄養素

脂質は犬にとってタンパク質に次いで重要な栄養素ですが、ありがたいことにがん細胞のエネルギー源になりにくいことがわかっています。
つまり、脂質はがんにかかった犬にとっては良質なエネルギー源なんですね。
だからこそ、がんにかかった犬の食事は基本的に炭水化物より脂質の割合が多くなります。

ただし、脂質であればなんでもいいというわけではありません。
不飽和脂肪酸の中でもDHAやEPAなどのオメガ3はがん細胞の増殖や転移を抑制し、免疫力を高める効果が期待できますが、オメガ6(大豆油、コーン油、リノール酸など)はがん細胞の増殖を助長するのではないかと指摘されています。

がんにかかった愛犬のためにできることはある!

がんにかかった犬の食事に必要な栄養バランスは、「低糖質」「高品質なタンパク質」「良質なオメガ3」の三本柱が基本となります。
また、そこに加えて出来る限り防腐剤などの添加物を排除することも大切。
そして代謝を促すためにもしっかりと水分を摂取させ、さらにはしっかり排泄させることもがんと闘ううえでの重要なカギを握ることになるでしょう。

しかしなにより薬になるのは、飼い主さんとの楽しい時間。
嬉しい、楽しい、気持ちいいというハッピーな感情を、がんは嫌います。
愛犬ががんにかかっても、飼い主としてしなければいけないこと、してあげられることはいくつもあることを、どうか忘れないでください。