犬のてんかん発作の原因は神経回路のショート
日本の犬の1~2%に、てんかんの発作があるといわれています。
1万匹の犬がいたら、そのうちの100~200匹はてんかん発作を起こしているわけですね。
犬のてんかんの厄介なところは、飼い主をひどく動揺させてしまうこと。
その激しい症状を初めて目にした飼い主は、このまま愛犬が死んでしまうのではないかと取り乱してしまうことも。
そして、もう何度も愛犬の発作を目にしている飼い主であっても、おそらく見慣れることはありません。
てんかんの症状
てんかんといえば、全身をビクビク痙攣させるイメージがあるのではないでしょうか。
しかし、てんかんと一口に言っても症状は様々。
一般的な症状としては、突然前足と後ろ足がピーンと伸びた状態で身体が硬直し、そのまま横転してしまうことです。
背中が弓なりにのけぞったままのこともあれば、横転したまま足をバタバタさせることも。
また、歯を食いしばったり、泡を吹いたり、ヨダレをダラダラとたらすこともあります。
オシッコやウンチをもらしてしまうことも。
そして、たいていの場合は瞳孔が開いています。
しかし、てんかんの発作はこういう激烈な症状だけではありません。
体の一部だけが痙攣していることもあれば、あくびを繰り返す程度という場合も。
こういった比較的軽めの症状だと、飼い主は愛犬がてんかん発作を起こしていることに気づかないこともあります。
このように程度に差はあるにしても、たいていのてんかん発作は数分程度でおさまります。
また、てんかん発作の最中は完全に意識が消失することもあれば、意識を保ったままということも。
いずれにしろ、発作がおさまると、あれほど激しい痙攣があったことなどウソのように、ケロっと元の状態に戻ることがほとんどです。
てんかん発作の前兆
てんかん発作は起こる前に前兆のような症状がみられることがあります。
- 妙にそわそわと落ち着きがなくなる。
- 物を食べているわけでもないのに、ガムを噛んでいるように口をくちゃくちゃさせる。
- よだれがたれている。
- 子犬ではないのに自分の尾を追いかけて同じ場所をくるくる回っている。
こういった行動が見られたら、その数分後にてんかん発作が起きるかもしれません。
だからこそ、てんかんのある犬の飼い主は「何か変だな」と感じたら、しばらくの間は愛犬から目を離すべきではないのです。
また、大きな発作の前兆として、手足や顔面など体の一部に痙攣が起きることも。
部分的な痙攣が起きた場合は、おさまった後も油断せずに見守る必要があります。
てんかん発作の原因
てんかんの発作の原因は、脳内の神経回路がショートすることです。
ロボットでもないのに?と思われるかもしれませんが、脳内の神経細胞は電気を使って情報伝達をしています。
だからこそ、神経回路がショートすることはありえることなんですね。
とは言え、正常な神経細胞は神経回路がショートしても、それが広がらないようにちゃんと抑制されています。
ところがなんらかの原因によって電気的なショートが神経回路に広がってしまった場合、これがすなわちてんかん発作を引き起こしてしまうのです。
そして、電気的なショートが起きている神経回路の部分に即した体の部位に症状が起きるため、毎回同じ場所が痙攣したりのけぞったりするのです。
てんかん発作を見極めるうえで確認しなければいけないこと
愛犬がてんかんの発作を起こしたら、どのようなタイプの発作であるのかを見極める必要があります。
- 痙攣しているのは全身か、それとも体の一部分か。
- てんかん発作を起こしている最中に意識を消失しているか、それとも意識は保ったままなのか。
まずは上記の二点を確認する必要があります。
意識の有無を確認する際には、発作が起きた時点で愛犬の名前を呼び、反応するか否かを確かめてください。
発作が起きている最中に愛犬と目が合うか合わないかも、確認する方法の一つです。
なぜこういったことを確認するかといえば、それは動物病院で検査や診断をする際の重要な情報になるからです。
てんかんの発作はいつ起きるかわかりません。
そしてたいていの場合は発作が起きたことで動物病院を受診します。
つまり、獣医師に診察してもらう時点ではすでに発作がおさまっているため、実際の詳しい状況が獣医師になかなか伝わりません。
だからこそ、飼い主が発作の状況をきちんと把握する必要があるのです。
てんかん発作が起きたら
とはいえ、愛犬がてんかん発作を起こしている状況を目の当たりにすると、なかなか冷静に観察することは難しいものです。
苦しげな愛犬が可哀想で思わず抱きしめてしまったり、舌を噛むのではないかと心配になってタオルを咬ませたくなるかもしれません。
しかし、こういった行為はNGです。
抱きしめたり口もとに何かを噛ませようとする行為が刺激となり、かえって痙攣を悪化させてしまうことがあるからです。
苦しんでいるのに、何もしてやれないのかと思うかもしれません。
一つだけ飼い主にとって救いとも言えるのは、てんかん発作で全身が痙攣しているような場合、愛犬がとても苦しそうに見えたとしても、実際には意識が消失していることです。
つまり、苦しいという感覚はない状態で痙攣しているわけですね。
だからこそ、飼い主は見ているのがどれだけつらくても、冷静に愛犬の状況を見極めなければいけないのです。
愛犬がてんかんの発作を起こしたら――。
- 抱っこをするのではなく、痙攣していても危険がない場所――床の上や布団の上などの周囲に物がない安全な場所へ移動させる。
- 発作が始まった時刻を記録しておく。
- 初めて発作を起こした場合は、名前を呼んだり声をかけたりして、意識の有無を確認する。(2回目以降は余計な刺激になるため不要)
- 出来る限り、発作が起きる前に犬が何をしていたのかを思い出して記録しておく。(遊んでいたのか、寝ていたのか、何かを食べていたのか、といったことを細かく)
- 発作の始まりから終わりまでの変化を記録しておく。(最初はよだれを垂らしていたが、しだいに小さく全身が痙攣し、2分後にはガクガクと大きく痙攣しだした、というように)
- 完全に発作がおさまった時刻と、その後の様子を記録しておく。
こういったことを確認したうえで、かかりつけの動物病院を受診してください。
また、動画などで発作の様子を撮影しておくと、実際の状態をより詳細に伝えることができます。
愛犬が苦しんでいるのに動画で撮影するなんんて・・・、という罪悪感を抱く必要はありません。
てんかん発作に迅速に対応するためには必要なことなのです。
とは言え、動画の撮影が第一目的ではありません。
まずは愛犬を安全な場所に移動させることが優先です。
まずはてんかんの発作についてきちんと知ることが大切
愛犬がてんかんの発作を起こした姿は、本当にショッキングなものです。
しかし、嘆いているだけでは、愛犬のてんかん発作に対処することはできません。
まずはてんかん発作について正しく理解し、そのうえで自分が飼い主として何ができるのかを考えることが大切です。
関連記事
-
犬のてんかん発作は投薬でコントロールできる
愛犬がガクガクと全身を激しく痙攣させている――!初めてその状況に遭遇した飼い主の多くは、これはてんかんに違いないと大慌てで動物病院に駆けこむことになります。しか
-
飼い主の勘はあなどれない!いつもと何かが違うと感じたら
犬が下痢をしたので気になって動物病院を受診したら、整腸剤を処方されただけで、もう一度様子を見せに来てくださいね、とも言われなかった――。なんだかちょっと肩透かしを
-
犬の肝性脳症
肝性脳症(かんせいのうしょう)――。あまり聞いたことのない病名ではないでしょうか。肝性脳症とは肝機能が低下することにより、解毒されなかった毒素が体内に蓄積されてし