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犬は腐ったものを食べても大丈夫?犬の食中毒について

この記事の目次

犬といえば、残飯だろうが道に落ちているものだろうが、腐りかけものを食べても大丈夫だというイメージがありませんか?
実際に、家庭犬がごみ箱をあさって腐りかけの生ごみを食べてしまったり、道に落ちている怪しげな物をパクリとくわえて飲み込んでしまったのに、体調には何の変化も起きなかったということはよくあることです。

しかし、だからといって「犬は腐ったものを食べても大丈夫」とひとくくりにまとめてしまうのは考え物。
なぜなら、現代を生きる家庭犬たちは野犬とは別物であり、なかなかに箱入り育ちのワンコたちだからです。

野犬の胃腸は鍛えられている

犬の食性は肉食寄りの雑食。
そして、野犬にとって動物の死体はごちそうです。
それがつい今しがた狩ったばかりの獲物であれば、腐敗が始まる前の新鮮な状態で食べることもできるでしょう。
しかし、いつもいつもそのように、新鮮な肉にありつけるとは限りません。
すでに死んでいた動物を発見すれば、それは彼らにとっての貴重なエサ。
そこから推測するに、ある程度までであれば腐敗した肉を食べても大丈夫なのは間違いなさそうです。

それもそのはずで、野生の犬の胃酸はかなり強力
ちょっとやそっとの雑菌ならきれいさっぱり殺菌できてしまう威力があるからです。
さらには唾液も人間に比べて殺菌力が強く、要するに強力な胃液と唾液によって多少腐敗している肉を食べても病気にはならないんですね。
普通に消化して栄養に変えることができてしまうわけです。

この強い胃酸と唾液は、もちろん現代を生きる犬たちにも受け継がれています。
しかし、では野生動物と同じぐらい腐敗の始まった肉を問題なく食べられるかといえば、ここは疑問を持たざるをえません。

野犬は群れ全体で免疫機能を高めている

野生の肉食動物は、仲間同士で毛づくろいをするなど緊密に触れ合うことで、病原菌を群れ全体で分かち合っているといわれています。
つまり、群れで生きる野犬は個体ごとではなく、群れ全体で共通した免疫力を強化しているわけですね。

これに比べると、家庭犬たちが接触する病原菌が明らかに少ないであろうことは、想像に難くありません。
それに、ドッグフードはそもそもが加熱殺菌された食材から作られている食べ物。
手作り食にしても、調理の際に腐った食材をあえて使おうとする飼い主は、そうはいないのではないでしょうか。

さらには室内で飼育される犬の割合が8割を超えたいま、住環境の衛生管理は野性とは比べものになりません。
免疫力とは体内に侵入した細菌やウィルス、微生物の情報を学習し、次回の攻撃に備える獲得免疫が主流。
もちろん、自然免疫と呼ばれる体にもともと備わった防御力(自然治癒力)もありますが、後天的に獲得した免疫のほうが免疫力としてはずっと強力です。
つまり、野犬を含めた野生の肉食動物は、環境はもとより口にするエサの腐敗程度から見ても、家庭の犬とは比べものにならないほどの免疫力を獲得しているはずです。

また、オオカミやキツネといった野生のイヌ科の動物は、他の捕食者によって殺された動物の死体は食べるのに、病気で死んだ死体は避ける傾向にあるのだとか。
これは経験を共有できる群れだからこそ成せる業であって、単体で飼育されている家庭の犬がそう簡単にまねできるとは思えません。
やはり、野犬が腐った肉を食べても大丈夫だからといって、家庭の犬にそれをそまま当てはめてしまうのは無理があるのではないでしょうか。

愛犬が腐った食べ物を食べてしまったときは

愛犬に好んで腐った食べ物を食べさせる飼い主はいないと信じたいところですが、偶発的に食べられてしまったという事態そのものは、珍しいものでもなんでもありません。
たとえば目を離したすきに、生ごみを捨ててあったポリバケツをあさられてしまった。
散歩の途中で道に落ちていた得体のしれない食べ物を食べてしまった。
こういった、いわゆる「食べてほしくないものを食べられてしまった」誤食事故は、犬を飼っていれば一度や二度は経験するものです。

そんなとき、「二日前に捨てた鶏肉の骨が腐りかけていたけれど、あれが原因で食中毒を起こさないだろうか」と心配になる飼い主さんは多いもの。
しかし、台所のゴミ箱に捨ててある腐りかけの残飯程度であれば、そうそう犬が食中毒を起こすとは思えません。
これは前述した強力な胃酸の殺菌力によるものですが、もちろん犬の体力や免疫力が低下していた場合は、食中毒の症状が出ることもあります

  • 下痢や嘔吐
  • 痙攣(けいれん)
  • 元気がなくなる
  • 食欲が落ちる
  • 泡を吹く
  • ぐったりとしている

こういった症状が見られた場合は、すみやかにかかりつけの動物病院へ連れていきましょう

嘔吐や下痢によって体内に入った病原菌が無事に排出できればいいですが、より怖いのは体調不良の原因が腐敗菌ではなかった場合です。
たとえば、腐りかけの肉を食べたせいで体調を崩していると思い込んでいたら、実は残飯として捨ててあったタマネギによる中毒ということも。
もしそうだった場合、事態は想像以上に深刻です。
あさられてしまったゴミ箱には何が捨てられていたのかを、肉類から野菜、その他のゴミに至るまで、すべて確認したうえで動物病院へ連れていきましょう。
そのほうが獣医師は原因を特定しやく、結果として治療が速やかに開始されることになります。

現代の犬たちは抗菌の中で暮らしている

多少腐敗した程度の食べ物であれば、犬が誤って口にしたところで、そう簡単に体調不良にまでは至らないでしょう。
しかし、現代人の住まいは抗菌だらけ
それはつまり、一緒の空間で暮らしている犬たちもまた、抗菌の中で生活していることに他なりません。
「犬なんだから腐っていても大丈夫に決まっている」と高をくくっていたら、愛犬が食中毒で体調を崩してしまう事態は十分にありえるのです。