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犬の体を回復させたい!強制給餌は焦らず慌てずが成功の秘訣

この記事の目次

強制給餌――。
なんだか言葉の響きが強くて怖いイメージがありますよね。

強制給餌とは、その名の通り強制的に食べさせること。
つまり、自分から進んで食べようとはしない犬に、食べ物を食べさせることで栄養を摂らせることを目的とした行為です。

なぜ強制給餌が必要なのか

食べるという行為は命に直結しています。
そして、思った以上に体力を使うものでもあるんですよね。
だからこそ、病気やケガ、もしくは老化など様々な原因によって食欲が落ちてしまった犬には強制給餌が必要なのです。

病気もケガも、薬や手術だけで回復させることはできません。
もちろん薬や手術が大きな手助けになっているのは間違いありませんが、最終的に犬の体を回復させるのは、犬自身の体が持っている力なのです。
それゆえに、強制的な方法をとってでも、犬に栄養を摂らせなければいけない場合があるのです。

そんなの、点滴すればいいのでは?
そう思われるかもしれませんが、点滴で補給できるのは水分や電解質、ビタミン類などが中心で、長い目で見た栄養補給には向いていません。
免疫力を強化し、新たな細胞を生み出すべく新陳代謝を高めるためには、食べ物から吸収する栄養が絶対的に必要なのです。

強制給餌の方法

強制給餌の方法は、大きく分けると3つです。
口元にスプーンを持っていけば食べ物を食べる場合は強制給餌ではありません。
ここで解説するのは、あくまでも犬が自発的に食べようとしない場合の給餌方法です。

フードを上あごや歯になすりつけて飲み込ませる方法

フードを指にとり、反対の手で犬の口を開かせたら、上あごにこすりつけてから口を閉じさせます。
この方法を行うには上あごにはりつきやすい形状のフードが望ましく、乾いている食べものの場合、そのままでは使うことができません。
ドライフードはお湯などを加えてドロドロにする必要があります。
ただし、あまり水分が多すぎると指にとりにくくなり、さらには上あごにもうまくはりつきません。
舌の上に落ちてしまうと、たいていの場合は吐き出されてしまうため、もったりとしたペースト状がベストです。
もしもかたくなに口をあけようとしない場合は、上あごではなく前歯にこすりつけてみましょう。

ただし、いずれの場合も犬の口の中に指を入れることになります。
嫌がる愛犬に噛みつかれないよう、充分にに注意してください。
犬は本来、口の中に手を入れられることを嫌がる生き物です。
だからこそ、万が一噛まれてしまっても、犬を叱るのは絶対にNGです。

愛犬は食欲がわかないほど体が弱っている状態。
それなのに、口の中に指を突っ込まれたあげく、大好きな飼い主さんに怒られてしまったら、心と体の両方に悪影響を与えてしまうかもしれないからです。

シリンジを使って飲み込ませる方法

シリンジとは、注射器の筒の部分のことです。
もちろん注射針は使いません。
あくまでもドロドロにしたフードを押し出すための道具ですから、先端が詰まりにくい太さのものを用意してください。

シリンジで強制給餌をする場合、初めてトライする飼い主さんは犬の口の正面から差し入れてしまいがち。
しかし、真正面から口に入れてもほぼ100%の確率で顔をそむけられてしまいます。
仮に口の中にフードを押し出せたとしても、吐き出されてしまうんですよね。
というわけで、あくまでもシリンジを差し入れるのは口の横から。

そしてシリンジを差し込む位置は奥歯の隙間がおすすめです。
慣れてくると犬歯の裏側に差し入れるほうが飲み込ませやすいのですが、初心者は奥歯の隙間からシリンジを差し入れたほうが、吐き出されにくいかもしれません。

慣れるまでは口の横からこぼれてしまったり、犬が顔を振ってシリンジが抜けてしまったりと、なかなか上手くいかないことも。
しかし、何度もトライしているとだんだんコツがつかめてくるのであせりは禁物です。

また、シリンジの先端をシリコンでカバーできるタイプなら、唇や歯茎に当たってしまっても安心。
強制給餌の初心者は、シリコン付きのシリンジが必需品です。

ノドの奥に押し込んで飲み込ませる方法

柔らかくしたフードをお団子状にまるめてノドの奥に押し込みます。
錠剤を飲ませるのと同じ要領だと考えればわかりやすいのではないでしょうか。

もちろん、ノドの奥に押し込むわけですから、大きすぎたり固すぎる団子はNG。
簡単に指でつぶせるぐらいの柔らかさで、なおかつ犬が飲み込みやすいサイズの団子作りを目指しましょう。
これがこの給餌方法の最大のポイントですが、だからと言って柔らかすぎると押し込む際に指にくっついてしまい、ノドの奥に押し込むことができません。
押し込みやすく飲み込ませやすい固さは、自分なりに試行錯誤するしかないのです。
大きさに関しては、口がどの程度開くかにもよりますが、小型犬なら小指の先ぐらいが無難でしょうか。

そして、押し込む際はちゅうちょせずに思い切りよくいきましょう。
遠慮がちにして舌の上に落としてしまうと、ぺっと吐き出されてしまいます。
かと言って、ノドの奥に指を突っ込み過ぎれば犬に無用な恐怖を与えることに。
舌の付け根の盛り上がっている部分の向こう側に押し込めると、犬も苦痛なく飲み込めるようです。
とはいえ、このあたりの加減も試行錯誤をするうちにつかめてくるものです。
一度や二度失敗したからといって、あきらめてはいけません。

参考までに筆者の経験を。
ノドの真ん中ではなく、左右のどちらかに寄った位置に押し込んでやると、犬はあまり抵抗せずに飲み込んでくれます。
筆者は右利きなので、左手で犬の口をこじ開けたら、筆者から見て犬のノドの右寄りをねらって押し込んでいます。

強制給餌成功の秘訣はあせらない心

飼い主が強制給餌に慣れてくると、犬も嫌がらなくなっていきます。
強制給餌は何度もトライしているうちに、飼い主と犬の双方が上手になっていくんですね。
飼い主は上手に飲み込ませられるようになり、犬は上手に飲み込めるようになる。
そうなると、強制給餌は犬と飼い主の双方にとって辛い行為ではなくなります。

また、強制給餌を成功させるには事前の準備も大切です。
フードを飲み込ませやすい形状に作り変えるのはもちろんのこと、吐き出してしまった場合にすぐ拭き取れるようタオルを用意しておいたり、フードをまき散らした場合を想定してエプロンをしておく。
これだけでもあせらずに済む分、落ち着いて取り組むことができるのです。

1回、2回と上手くいかなかったからといって、強制給餌は無理とあきらめることはありません。
1回目に上手くいかなかったことを踏まえて2回目に挑戦し、2回目に上手くいかなかったことを踏まえて3回目に挑戦するのです。
これを繰り返していくことで、強制給餌は必ず上手くできるようになるでしょう。

強制給餌を行うことで体が回復すれば、またいつの日か愛犬は自発的に食べてくれるかもしれません。
その日が来ることを信じて、あきらめずに丁寧な強制給餌をすることを心がけてください。