MENU

日本でも成犬を迎えることが当たり前になってほしい

この記事の目次

日本では、犬を飼う=子犬、という感覚の人が多いのではないでしょうか。

しかし、犬の先進国である欧米の国々では、すでに成犬になった犬を引き取ることは、ごく普通のことです。
犬を家族に迎えたいと考えたとき、当たり前の選択肢として成犬が検討されるんですよね。
こういった感覚が育たない限り、日本はいつまでたっても犬の先進国にはなれないのではないでしょうか。

しかし、小さくて可愛いものや若さに固執しがちな日本人の性質から考えると、なかなか難しいものがあるのかもしれません。

成犬から飼う場合、そのほとんどは保護された犬たち

お金をだして犬を購入するとしたら、そのほとんどは子犬が対象です。
多少大きくなっていたとしても、その多くは1才未満ではないでしょうか。
よほどの事情がない限り、年のいった成犬を購入することは稀(まれ)ですよね。

ドッグショーや犬の展覧会などにおいては、成犬が高値で取引されることはあります。
目的はブリーディングなわけですから、この場合は子犬である必要はないんですね。
むしろ、成長途中で将来どのような姿になるか確定していない子犬より、すでに出来上がった成犬を必要としているわけです。
それに、手に入れたらすぐにブリーディングに使えるわけですし……。

しかし、一般家庭の場合、通常はブリーディング目的で成犬を購入することはまずありません。
つまり、家庭犬として成犬になった犬を飼うとしたら、それは保護犬――引き取り先を探している犬のことを指していることになります。

前の飼い主から次の飼い主へ直接託されることもありますが、どちらかといえばそれは少数派。
その多くは保健所や保護団体などを介して、新しい家庭へと引き渡されることが多いのではないでしょうか。

保護犬となるまでには、なにかしらの苦労を味わっている

犬たちが保健所や保護団体に引き取られるとき、その経緯は様々です。

なんらかの事情で飼いきれなくなった飼い主が、直接保健所や保護団体に引き取ってもらうケースもありますが、山の中などを徘徊していたところを保護される犬も。
こういった犬は偶然迷子になったというより、おそらくは飼い主によって知らない土地に置き去りにされてしまったのではないかと推測されます。
犬好きとしては、そんな飼い主はひっぱたいてやりたいですが、犬を捨てるような飼い主のところに居続けるほうが幸せなのかを考えると、なんとも悩ましいのが悔しいところでしょうか。

また、悪質なブリーダーが世話を放棄した結果、多くの犬が保護されることもあれば、スタートは善意から犬を引き取っていたはずの個人が、世話をしきれなくなって結局は放棄してしまうこともあります。
もちろん、飼い主はずっと犬と一緒にいたいのに、どうしてもそれが叶わないケースもあることでしょう。

しかし、そのすべてにおいて共通しているのは、犬たち自身でその先の運命を決めることができないことでしょうか。
すべては人間の手にゆだねられているんです。

子犬はすぐに飼い主が決まっても、年をとった犬はなかなか決まらない

ここ数年、一昔前に比べると日本でも成犬を引き取る家庭が増えてきました。
と言っても、その数は全然多いとはいえません。
しかし、たとえ遅々とした歩みであっても、前に進んでいってほしいものです

保護犬の譲渡会などに出かけた経験はありますか?
保護犬を引き取るか引き取らないかは別にして、これから犬を飼おうと考えている人、それからすでに犬を飼っている人も、一度でいいからぜひ譲渡会の現場を見てほしいと思います。

実際の譲渡会をのぞいてみると、犬によって明暗がはっきりと分かれてしまう現状をまのあたりにして気持ちが重苦しくなるかもしれません。
というのも、譲渡会において真っ先に飼い主が決まるのは、やはり子犬だからです。
子犬は無邪気で可愛くて、犬が好きな人なら誰だって目を惹かれてしまいますよね。
これはもう、ある程度は仕方がないことなのかもしれません。

しかし、それとは対象的に何度譲渡会に出しても、まったく引き取り先が決まらない犬もいます。
そういう犬はさぞかし愛想のない犬、もしくは凶暴な犬ではないかと思われがちですが、これが案外そうでもないんですよね。

人間が大好きで人懐っこい犬であっても、体格が大きめの比較的地味な見た目の犬は、なかなか飼い主が決まらない傾向にあります。

しかし、それ以上にネックになるとしたら――それはやはり年齢です。
いわゆる老犬と呼ばれる世代の犬は、そう簡単には新しいお家は決まりません。
寿命を考えたら、一刻も早く暖かい家庭に迎え入れてほしいのに、なかなかそうはならないのが現実なんです。

人間が大好きなまま最期を迎えてほしい

日本の犬は、住む環境も飼い主も、何一つ自分では決めさせてもらえません。
だからこそ、人間の側は最期まで大切にすることを当たり前として犬を迎えるべきですが、現実は残念すぎるほどに残酷です。

初めて犬を飼う人が、子犬と同じように成犬を引き取ることを検討してくれたら――。
2匹目の犬は、愛犬の子犬を生ませるのではなく、成犬を引き取ることを検討してくれたら――。

日本でも成犬を迎えることが当たり前になってほしいと切に願っています。