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7才を過ぎた犬は口腔がんの発症確率が高まるという事実

この記事の目次

7歳を過ぎたらシニア犬――。
よく言われることですよね。

とは言え、現代の犬達は元気いっぱい。
7歳になったからといって、即老犬になったという実感はなかなかわきません。

しかし、7歳を過ぎたあたりから急に発症確率が高まる病気があります。
それは、口腔内悪性腫瘍――すなわち『口腔がん』です。

犬の口腔内悪性腫瘍は3種類

犬の口腔内悪性腫瘍とは、口の中からあごにかけて発生したがんの総称です。

がんが発生した細胞の種類によって呼び名が変わり、一番多いのは最も外側にある扁平上皮細胞にできる「扁平上皮がん」。
次に多いのは真皮という皮膚の深い部分にある線維芽細胞にできる「線維肉腫」。
そして3番目に多いのは、扁平上皮細胞と線維芽細胞の間にあるメラニン細胞にできる「メラノーマ」です。

これらはすべて悪性腫瘍であり、早期に発見して適切な治療を開始しなければ命に関わる危険な状態。
愛犬を健康に長生きさせるためにも、日ごろから口の中をこまめに観察しておくことが大切なのです。

ところで3つの口腔内悪性腫瘍。
実は発症しやすい年齢に少し違いがあります。

  • 扁平上皮がん → 10才前後
  • 線維肉腫 → 7才前後
  • メラノーマ → 10才以上

ただし、上記の年齢はあくまでも発症しやすくなる年齢であり、これより若い年齢なら発症しない、というわけではありません。
いずれにしろ、どの口腔がんも7才を過ぎると発症しやすくなるという事実はしっかりと頭に叩き込んでおきましょう。

扁平上皮がん

短期間で舌や歯肉といった口内に、ただれのような症状が拡がります。

基本的に扁平上皮がんは口の先に近ければ近いほど転移する確率は低くなり、口の奥にできると高くなるといわれています。
口の奥にできた扁平上皮がんは飼い主さんが発見しづらく、それでいてリンパ節や肺に転移しやすいため、非常に厄介。
中型犬や大型犬に比較的多くみられるがんのため、中・大型犬の飼い主さんは愛犬の口の中を観察する際には、がんばって口内の奥まで確認するようにしましょう。

線維肉腫

主に歯茎にできる腫瘍で、そのしこりは肥大したラズベリー(もしくは赤いカリフラワー)がくっついているような、異様な見た目をしていることが多いでしょうか。

線維肉腫は1ヶ月程度と、比較的短期間で大きくなることが特徴の一つです。
転移はあまり多くないとはいわれていますが、骨にひろがりやすい性質をもっているため油断はできません。
線維肉腫は中・大型犬のオスにやや多くみられる悪性腫瘍のため、愛犬が該当する場合は、歯磨きとともに歯茎のチェックも念入りにおこなうことが早期発見につながります。

メラノーマ

メラノーマ(悪性黒色腫)は口腔内の粘膜や舌に発生するがん。
黒いしみのようなものが口内に急速に拡がり、潰瘍や壊死などを引き起こすこともあります。

メラノーマを発症すると、その8割はリンパ節への転移がみられるという、恐ろしい口腔がんです。
犬の口の中は歯肉や舌、上下のあごが色素沈着によって黒く染まっていることがあり、そのせいでメラノーマの発見が遅れてしまうことも。
ここには以前黒いシミはなかったはずだと感じたら、迷わず動物病院を受診してください。

口腔がんになった犬の治療は…

愛犬が口腔がんにかかった場合、治療法としては以下のいずれか、もしくはいくつかを複合した治療法がとられることになります。

外科治療

外科手術によってがんを取り除く治療法です。
一般的にはがんの大きさが小さく、さらには手術に耐えられる体力がある犬が対象。

扁平上皮がんの場合は、口の先のほうにできたがんを完全に切除できた場合、その後の経過は良好である場合が多いようです。
また、線維肉腫を外科手術によって切除する場合、骨に拡がる可能性が高いことから、腫瘍が発生した側のあごをまるごと切除するケースも。
メラノーマに関しては、早期に発見できた場合は切除によってその後を良好に過ごせる可能性は高くなりますが、発見が遅れて臓器などに転移がみられた場合、余命は短いものになることがほとんどです。

放射線療法

局部的ながんのコントロールには非常に有効
外科手術による切除と組み合わせることにより、完全にがんを消滅させたり、腫瘍を小さくすることを目的として緩和照射をするなど、幅広く利用されている治療法です。
特に扁平上皮癌とメラノーマは、放射線治療に反応しやすいといわれています。

化学療法

がんがすでに進行している場合や、体力がない犬の場合は手術による切除が見送られ、抗がん剤などによる治療が選択されます。
また、外科手術や放射線治療と組み合わせることで、がんの根治(根本から完全に治ること)には至らずとも、生存期間を延ばす目的で選択されることもあります。

免疫療法

上記3つの治療法に比べると、近年になって注目されるようになりました。
簡単に言えば犬の持つ免疫力を高めることで、がん細胞の増殖を抑え込もうとする治療法です。

とは言え、免疫療法はまだまだ研究段階。
なかなか有効性が認められてはいませんが、メラノーマにおいては効果が期待されています。

がんを予防するために日頃から免疫力を高める意識を持ちたい

いまや、犬の死亡原因の第一位はがん。
闘病後に亡くなる数としては、およそ半数以上です。
つまり、いまは元気いっぱいで病気の兆候は微塵も見えなくても、将来的にがんにかかる可能性はあるのです。

だからと言って、「愛犬ががんになったらどうしよう」と不安を募らせたところで何の解決にもなりません。
私たち飼い主が愛犬のためにできるのは、がんに打ち勝てるように日頃から免疫力を落とさせないこと。
すなわち、体調管理に注意しつつ、良質な栄養を摂取させることです。
そして万が一のときには早期に発見できるように、きちんと体をチェックし続けることが一番ではないでしょうか。