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犬の虐待は暴力だけじゃない!

この記事の目次

犬を虐待する――。
文字にしただけでも、沈うつな気分になります。

世の中には、目を覆いたくなるような犬の虐待が横行している事実があることを御存知ですか?
命を命とも思わないその所業を知れば知るほど、人間という生き物が恐ろしく感じられてしまうほどです。

しかし、虐待とはそういう暴力的な行為だけではありません。
自分は愛犬家だと思い込んでいる飼い主でさえ、実は虐待に等しい行為をしていることがままあるのです。

これがいわゆる、「優しい虐待」と呼ばれるタイプの虐待ですね。

優しい虐待とは?

優しく虐待をしている――。
なんだか変な言葉ですよね。
噛み砕いて言い換えるなら、犬に対して直接的な暴力をふるってはいないものの、犬のためにはならない行為をしている、といった感じでしょうか。

それだけ?暴力をふるわれていないなら別にいいんじゃない?と思うかもしれません。
しかし、優しい虐待を受け続けた結果、重篤な病気にかかってしまったり、社会化がまったくできなかったことで悲惨な末路をたどる犬もいます。

つまり、優しい虐待は暴力ほど直接的ではないというだけで、犬を苦しめていることにはなにも変わりはないのです。

たとえば……

  • 犬が食べたがるものを、食べたいだけ食べさせる。
  • 基本となるしつけをいっさいしようとせず、犬が権勢症候群(アルファシンドローム)になっても対処をしない。
  • 飼育放棄

飼育放棄はまずいと思うけど、あとの2つは虐待というより、むしろ犬を喜ばせているのでは……?などと思ったら大間違いです。

食べたいものを好きなだけ食べさせるという虐待

犬の多くは満腹という感覚を知りません。
だからこそ、食べたいものを好きなだけ食べさせたら、いくらでも食べてしまうのです。

その結果どうなるかといえば、もちろん肥満へまっしぐら。
そして肥満はとどまるところを知らず、どこまでもブクブクと太り続けていくことに。

犬が喜ぶからという理由だけでオヤツやドッグフード、さらには人間が食べているものまでどんどん食べさせてしまうと、標準体重の何倍にも体重が増えてしまい、脂肪だらけの体になってしまうことでしょう。

そんな犬はどうなると思いますか?
2、3歩歩いただけで息がきれ、まともに歩こうとしなくなります。

抱き枕のように太くなった体がアザラシみたいで可愛い、などと言っている場合ではありません。
つきすぎた脂肪によって気道が圧迫され、今日にも窒息死するかもしれないのです。
もちろん、心臓にもとんでもない負担がかかっていますし、骨格も体重を支えきれず、関節は悲鳴をあげていることでしょう。

こんな体型になった犬が健康で長生きできるわけがありません。
愛犬が喜ぶから好きなだけ食べさせてしまった結果だとしても、これは立派な虐待です。

しつけをいっさいしないという虐待

しつけをしない飼い主には共通した言い訳があります。

――怒るのが可哀想で、ついつい甘やかしているうちにしつけが入らなかった。
――しつけなんてしなくても、室内飼いなので別に問題ない。
――しつけの仕方がよくわからなかったので、そのまま放置してしまった。

こんな言い訳でしつけをしなかった飼い主は、そもそも犬を飼うべきではなかったと言わざるをえません。

しつけをしなくても、きちんとご飯は食べさせているし、トイレもきれいにしているから、大型犬でもない限り別に問題がないのでは?と考える人もいます。
しかし、実は問題が大アリなんですよね。

しつけをされなかった犬の多くは、自分を群れ(家族と犬)の中で一番えらいと勘違いして権勢症候群(アルファシンドローム)になることがほとんどです。

当然ですよね。
なにをしても怒られないし、要求したことを飼い主が下僕のように従ってくれるのですから、自分が一番えらいと勘違いしてしまったとしても犬に罪はありません。

しかし、群れの生き物である犬にとって、リーダーという立場は実はストレスまみれの存在。
リーダーは群れのメンバーが平和に暮らせるよう、常に周囲を警戒しなければいけませんし、群れのメンバーが勝手な行動をしないようにいつも目を光らせています。

実は、犬の群れの中で一番ストレスが少ないのは強いリーダーに守られている下っ端。
下っ端はえらくはありませんが、責任を負わなくてもよい立場なので、気楽に生きられるんです。

しかし、権勢症候群(アルファシンドローム)の犬は下っ端ではありません。
背負わなくてもいい責任を背負った結果、強いストレスにさらされることになるのです。
犬に余計な責任を負わせる飼い方は、まさしく虐待と同義です。

飼育放棄という虐待

飼い主がしつけをしなかったせいでコントロールの効かない犬に育ってしまったのに、持て余した結果保健所へ連れていくのだとしたら、これは虐待以外のなにものでもありませんよね。

また、きちんと終生面倒をみる責任感もないまま安易に犬を飼い、環境が変わって犬を飼い続けることができなくなったから飼育を放棄する。
これも立派な虐待です。

せめて次の飼い主を探す努力をするならまだマシですが、それすらせずに保健所や愛護団体に引き渡して終わりにしようとする飼い主が後を絶たない現実には憤りしか感じられません。

なんらかの事情があって泣く泣く愛犬を手放さなければいけなくなった飼い主さんが見たら、ひっぱたいてやりたくなるような理由で犬の飼育放棄をする飼い主は残念なことに少なくないのです。

可愛がることしかできない人は犬を飼ってはいけない

犬は可愛いです。
しかし、犬を飼うということは命そのものを預かることであり、可愛いだけでは済まされないことがたくさんあるのです。

自分が癒されたいという理由だけで犬を飼うぐらいなら、モフモフのぬいぐるみにしておきましょう。
人間は犬を選び放題ですが、犬は飼い主を選ぶことができないのですから。