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メス犬の発情と妊娠

この記事の目次

愛犬が生んだ子犬は、さぞかし可愛いに違いない――。
犬を飼っている人が、わりとよく言うセリフの一つです。

確かに、家族の一員である愛犬が生んだ子犬なら、可愛いに決まっていますよね。
しかし、愛犬に子犬を生ませる目的で、何年にもわたって発情を繰り返させていくことは、愛犬が婦人科系の病気にかかる確率を上げていくことでもあり、妊娠や出産そのものが愛犬の体に多大な負担をかけることだってあるのです。

犬の妊娠と人間の妊娠の違いとは

多くの飼い主さんが、わりと気楽な感覚で口にしてしまう愛犬の妊娠と出産。
そのわりに、犬の妊娠と人間の妊娠では、そのメカニズムに大きな違いがあることすら、あまり知られていないのではないでしょうか。

人間の場合は、生理からおよそ14日後あたりに排卵があります。
そして排卵された卵子は24時間のうち、およそ8時間程度しか受精できないのだとか。
つまり、精子の寿命はおよそ2~3日程度ですから、この期間に卵子にたどり着くことができなければ、受精できなかった、ということになります。

これに対し、犬の場合は排卵後およそ4日間程度は受精可能。
犬の卵子は人間より受精できる時間が長いんですね。

しかし、犬の妊娠と人間の妊娠が大きく違っている点は、そこではありません。
人間の場合は、排卵があっても受精しなかった、もしくは受精しても子宮に着床しなければ、子宮内膜が剥がれ落ちて出血します
これがいわゆる生理ですよね。
しかし、犬の場合は違います。
発情期に入ると、卵子を受け入れる準備として子宮の粘膜や筋肉が発達するのですが、その際に出血するんですね。
つまり、メス犬が発情期に出血するのは生理ではありません。
一般的には機能性出血と呼ばれています。

こんなふうに、犬の妊娠と人間の妊娠は、そもそものメカニズムが違うことをまずは知っておきましょう。

犬の発情と排卵のタイミング

メス犬の出血が確認できた日を1日目とした場合、9日~10日目あたりに排卵することが多いとされています。
もちろん、これは個体差のあることなので、必ずしもすべての犬に当てはまるわけではありません。
とは言え、おおむね、という意味ではだいたいこのあたりの日にちで排卵することが多いでしょうか。

そして、この時期のメス犬の外陰部は大きく膨らみます。
初めて見る飼い主さんは、いつもとは違う形状にぎょっとしてしまうかもしれません。

さて、排卵された卵子はおよそ2日ほどかけて成熟し、さらに2日ほどは受精可能な状態を保ちます。
すなわち、受精可能期間がおよそ4日ほどというのは、この2日+2日のことなんですね。
そのため、妊娠の可能性を高める目的で、出血が確認できた日から数えて10日目あたりと、14日目あたりをねらって2回交配させることもあります。
これがいわゆる「二度がけ」です。

排卵の確認方法

小型犬などは出血量そのものが少ないことも珍しくありません。
また、犬が血液を自分でなめとってしまい、正確に出血初日を割り出すことが難しいことも。
とは言え、出血した初日が不明であっても排卵を予測することはできます。

  • オス犬を受け入れる素振りをみせはじめる。
  • 外陰部が膨れ上がり、柔らかくなっている。

こういった兆候は排卵のサイン。
また、より確実性を求めるなら、動物病院で膣粘膜の細胞診(スメア検査)をするという方法もあります。

犬の精子はおよそ7日間ほど受精が可能な状態にあるため、排卵が予測される日程とメス犬の体の状態などを考慮して、交配の日程を決めることになります。
ただし、オス犬の精子がおよそ7日間ほど受精可能とはいえ、それより短い期間に力を失ってしまうことも珍しくありません。
つまり、本気で妊娠を成立させようと思うなら、より正確な排卵の日程を割り出すことは不可欠なのです。

犬の妊娠期間はたったの2ヶ月

人間の妊娠期間は十月十日と言われていますが、実際のところは平均すると9ヶ月程度なのだとか。
そして犬の妊娠期間は60日前後
一般的には63日程度と言われていますが、これはあながち外れていないんですよね。
およそ60日~63日ぐらいで出産に至ることが多いように思われます。

つまり、犬を交配させて妊娠が成立すると、思った以上にあっという間に子犬が産まれてきてしまうんですね。
ブリーダーのように犬の交配に慣れていれば、どうということもない2ヶ月。
しかし、初めて愛犬の出産に臨む飼い主さんにとって、2ヶ月は思った以上にあっという間です。
この短い期間に、出産に向けての準備をきっちり整えておかなければなりません。

自宅で出産させるのか、それとも動物病院で子犬を取り上げてもらうのか。
自宅出産させるとして、もしも帝王切開が必要な状況になった場合、すぐに獣医師と連絡はとれるのか。
生まれた子犬が何匹であろうと、すべて自宅で飼う予定の場合は別にして、1匹だけ残してあとの子犬に飼い主を探す場合、その目途はたっているのか。
こういった準備をきちんと整えてから愛犬の出産を迎えないと、その後の慌しさに振り回されてしまい、なにもかもが後手後手にまわることになりますよ!