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肝機能障害の犬の偏食と向き合うための方法

この記事の目次

肝機能障害を治療中の、我が家のイタリアングレイハウンド。
あれも嫌、これも嫌、こんなの食べたくないし、そっちもいらない!
そんなイヤイヤ尽くしの毎日に四苦八苦しているものの、それでも今ではなんとなくリズムがつかめてきました。

肝機能障害の犬の飼い主は偏食と闘わなければならない

肝機能障害の犬――特にもともと食べムラのある犬の場合、飼い主はまず間違いなく以前より激しくなった偏食との闘いを余儀なくされます。
これはなにも我が家のイタグレに限った話しではありません。
獣医師いわく、よほど食いしん坊の犬種――たとえばビーグルやシュナウザーでもない限り、たいていの犬は肝機能に問題があると偏食傾向が強くなるのだとか。
病院の待合室で居合わせた肝機能障害のワンちゃんの飼い主さん数名に質問してみたところ、程度の差はあるにしろ、やはり皆さん愛犬の偏食に頭を悩ませているようでした。

ところが――。
ネットや書籍をいくら調べても、肝機能障害の犬の食事に関する具体的な記録はあまりありません。
もちろん、肝臓に良い食べ物はこういうものだ、という内容の記述はいくらでも見つけることができます。
しかし、肝機能障害の犬の偏食に悩む飼い主が知りたいのは、おそらくそういうことではありません。
いかにして食べさせるか、ということではないでしょうか。

そこで、「こういう食事が肝臓に良い」という視点ではなく、「こうやって食事のコントロールをしている」という観点から我が家の実例をご紹介します。

食べてくれるものだけでは体を維持できない!

肝機能障害と診断された後、見事なまでの偏食犬となってしまった我が家のイタグレ。
療法食はほとんど口をつけないため、とにかく最初は「食べてくれるもの」探しをする毎日でした。

肝臓の再生を促すために必要なのは質の良いタンパク質で低脂肪。
そこで鹿肉や馬肉を用意しましたが食べません。
以前は好んでいた療法食ではないドッグフードでさえ、まったく食べようとしません。
自発的に食べるのはサツマイモやリンゴ、バナナ、ニンジン、カボチャといった野菜や果物ばかり。
それでも何も食べないよりはましと、ついつい与える量がエスカレート。
その結果、すべて嘔吐してしまうという、最悪の事態をまねいてしまいました。

普通のウェット食をいろいろ試してみるも…

何も食べないよりはと、療法食ではない普通のドッグフードをあれこれ用意しました。
ドライよりはウェットのほうが食欲をそそるのではないかと考え、まずは総合栄養食タイプの缶詰めを数種類。
さらにはいろいろなタイプの一般栄養食の缶詰めも用意して、どれなら食べてくれるのかを一つずつ試していくことに。
すると、今までに食べたことのなかったウェットフードは目新しさが勝ったのか、初日はおおむね口をつけてくれたのです。
ところが、どれも翌日にはもう口をつけません。

こんなことを続けながら、1ヶ月ぶりの血液検査は――。
数値がまったく改善されていないどころか、悪くなっている項目もいくつか。
かなりショックでしたが、考えてみれば当たり前です。
まともに食べていなかったのですから、肝細胞が再生しているわけがありません。
さらには、この頃は食事に混ぜて薬を飲ませようとしていたこともあり、薬も満量を摂取できていなかったのです。

このままではダメだと、考え方を根本から変えることにしました。

スパルタで栄養摂取を優先

犬なのに肉類をまったく食べようとしない――。
これはつまり、今の体の状態では肉類を食べたい欲求が起こらないのだと考えることにしました。
そこで、思い切って食事はすべて強制給餌で摂取させることに。
本来なら肝臓病の療法食をシリンジで流し込みたいところですが、我が家のイタグレの拒否っぷりはすさまじく、とてもではないけれど無理。
そこで、粉タイプの肝疾患用フードを水でこねて団子にしたものを、錠剤を飲み込ませる要領で食べさせることにしました。

とは言え、食べさせても嘔吐すれば意味がありません。
そこで毎日少しずつ増量し、まずは給餌量の80%程度が摂取できることを目指すことに。
もちろん、かかりつけの獣医師に相談したうえでの強制給餌です。

そして、どんなに嫌がっても心を鬼にして強制給餌を続けてから数日経ったある日のこと。
他の犬の食事を用意していると、珍しくイタグレが食べたそうに寄ってきたのです。
もしや?と思い、イタグレ用の器にドライフードを少量盛って出してみると、なんとバクバクと食べるではありませんか!
そのドライフードは肝臓病の療法食ではないにしろ、自分から食べたという事実は嬉しいものでした。
おそらく、強制給餌で栄養が摂取できた結果、食欲が少し回復したのでしょう。

ようやく光明が見えてきた!

ドライフードを2日ほど食べた後に、またぱたりと食べなくなりました。
しかし以前との違いは、それでも何かを食べたそうにしていること。
そこで、ウェットの療法食をダメもとで試してみることに。
すると、器に入れた状態では食べないのに、手からあげるとなぜか食べるのです。

実は、病院で知り合った肝機能障害のトイプードルの飼い主さんから、そういう話しは聞いていました。
手から直接でないとフードを食べない、と。
どうしてそうなるのかはわかりませんが、食べてくれるならいくらでも手を汚す覚悟はあります。(手がベタベタになるという意味ですよ!)
というわけで、そこから数日はウェットの療法食を手で食べさせましたが、ある日を境にまたしてもパタリと食べなくなりました。
かと言って、ドライフードも食べない。
でも何かを食べたそうにはしている・・・。

というわけで、もう四の五の考えずに強制給餌を再開しました。
そんな日々を過ごしているうちに1ヶ月以上が経過したので、再び血液検査。
すると、ALT、AST、アンモニアの数値が改善しているではないですか!
特にアンモニアは正常値。
本当に嬉しかったです。

あせりは禁物と学ぶ毎日

数値の改善に気を良くし、自発的に食べないなら即座に強制給餌。
ところが――。
ある時、いつものように療法食団子を口に入れようとすると、これまでにないほど激しく抵抗されました。
最近はすっかりあきらめたのか、比較的素直に団子を飲み込んでくれていたのに。
変だなと思いつつも口をこじあけて強引に飲み込ませたところ・・・。
1時間半後、嘔吐してしまいました。

4つ飲み込ませた団子のうち、1個がまるまる消化されずに残っていたのです。
おそらく食べ物を胃に入れたくない状態だったから、あれほど拒否したのでしょう。
それなのに、1日分の給餌量をこなすことにばかり必死になり、無理に飲み込ませて嘔吐させてしまった・・・。
これでは意味がありません。

この失敗の結果、現在は食べたそうにしている場合は普通に強制給餌。
元気がないように見えたらとりあえず様子見。
そして少しでも食べたそうな素振りが見えた場合は少量を強制給餌して様子を見ます。

まさしく、飼い主は三歩進んで二歩下がる気持ちが必要なのだと学びました。
つくづく、犬の肝機能障害にあせりは禁物です。