ミニチュアシュナウザー最後の日々
僧帽弁閉鎖不全症の闘病生活を送っていた我が家のミニチュアシュナウザー1号。
2ヶ月後に13才の誕生日を迎えるはずだったのですが、その前に天国へと旅立っていきました。思えば初めて心臓に雑音が認められると診断されたのは、今から6年ほど前。たしか、フィラリア投薬前の健康診断の時だったでしょうか。
以来、ずっと投薬によって体調を維持してきましたが、まさに力尽きるようにして生涯を閉じました。
症状が進んでもなぜか咳をしなかった
僧帽弁閉鎖不全症の典型的な症状の一つに「咳」があります。
心臓の僧帽弁がきちんと閉じないことで血流が悪くなり、膨らんだ左心房がそのすぐ上にある気管支を圧迫することで生じるのが第一弾。さらに悪化すると肺で滞った血液から水分が漏れ出すことにより、肺水腫を起こすことが第二弾、という感じでしょうか。
そんな僧帽弁閉鎖不全症の咳ですが、実際のところはコホコホというより、喉に何かが詰まってしまったようにカハッという感じです。いずれにしろ、遅かれ早かれ咳をしだすのだろうと覚悟していたのですが……。
我が家のシュナさんは、初めて心雑音を指摘されてから亡くなる1ヶ月ほど前まで、ほとんど咳をしませんでした。もちろん、初期には目立った症状がみられないことは珍しくありません。
しかし、10才を過ぎた頃から獣医師に「本当に咳してない?本当に?」と何度も聞かれるほど心雑音がひどくなっても、やっぱり我が家のシュナは咳をしなかったんですね。
そのため、「この子、本当に僧帽弁閉鎖不全症なんだろうか?」と思っていたぐらいです。
1日に1~2回咳をするようになった
亡くなるおよそ1ヶ月前ぐらいからだったでしょうか。1日のあいだに1回か2回程度、カハッという咳をするようになりました。
しかし、症状が長引くわけではなく、カハッカハッとやったらすぐに治まります。これは僧帽弁閉鎖不全症の咳なんだろうか、それとも何か喉に引っかけたのだろうか、という感じで、とてもわかりにくかったんですね。
実は、パグ×パピヨンのミックス犬、イタリアングレイハウンド、ミニチュアシュナウザー2匹の合計4匹と暮らすまで、小型犬は柴犬しか経験がありませんでした。
あとはみんな大型犬だったこともあり、僧帽弁閉鎖不全症については経験がなかったのです。もちろん、中型犬や大型犬が僧帽弁閉鎖不全症を発症しないわけではありませんが、圧倒的に多いのは小型犬。
そこで、検診の際に獣医師に報告すると、「それは間違いなく症状が進んでいる証拠だよ」と。しかし、食欲はまったく落ちることなく、さらには元気いっぱいに遊んでいるのです。
獣医師も、「シュナウザーってたくましいなぁ」と妙な感心をしていたでしょうか。
悪化しているという話しだけれど、こんなものなのだろうか?そんな感覚で毎日を過ごしていたのですが……。
突然意識を失ってパタリと倒れた
それは、突然のことでした。ある日の夜、家人と遊んでいたシュナウザーが突然パタリと倒れてしまったのです。
時間にして5秒あったかなかったかぐらいだったでしょうか。シュナは完全に意識を失っているように見えました。
あわてて声をかけながら体をマッサージすると、間もなくして意識が戻ったのです。
そして、その後は何事もなかったかのようにまた動き始めたのですが、どこかだるそうではありました。これがよくない兆候だということはさすがにわかります。
翌日病院に連れていくと、おそらく不整脈によって血流が停滞して失神したのだろう、とのことでした。
そして、この日からこれまで6年間飲み続けてきた犬用慢性心不全改善剤に加えて強心剤の投与が始まったのです。
偏食が始まった
幸い強心剤による副作用もなく、一時はすっかり元気が回復したように見えたのですが、間もなくして偏食が始まりました。
食いしん坊で、差し出したら小石でさえ食べてしまうような犬だっただけに、これは本格的に症状が進行しているのだと実感させられたんですよね。とはいえ、イタリアングレイハウンドの偏食とは違い、美味しそうなものをトッピングすることで、なんとか完食させられることができたのは幸いだったでしょうか。
そして、イタグレのときは症状の改善にばかり重きをおくあまり、食べたがるものを制限したという苦い経験がありました。だからこそシュナに同じ思いをさせてもいいことはないと考え、喜んで食べるものをあれこれ見繕ってはトッピングしたんですね。
そのおかげなのか、シュナは毎食しっかりと食べましたが、明らかに食べるスピードは遅くなり、今にして思えば私に気を使って一生懸命完食してくれるような日々だったのかもしれません。
体調の急変は真夜中だった
その日、仕事で県外に出張した私は、早朝に家を出て夜9時過ぎぐらいに帰宅しました。
腎不全を患っているミックス犬とシュナ1号のことが気がかりだったので、家人には仕事を休んでもらい、ワンコ達についていてもらったのです。帰宅すると、シュナ1号が夕飯をほとんど食べなかったと告げられました
ところが、です。
私が夕飯の盛り付けてあった器を差し出すと、なんとパクパク食べ始めたんですね。そして、見事に完食したではないですか。
ああ、良かったと胸をなでおろし、夜中の12時前ぐらいに就寝しましたが、すぐに家人に叩き起こされました。シュナの様子がおかしい、と。
寝床に横たわったシュナはハァハァと苦しそうに息をしていました。
寝室に連れて入り、布団に横たわらせて体をさすっていると、どんどん呼吸が浅くなっていきます。口の中を確認すると、舌も歯茎もチアノーゼで紫色でした。
ああ、お別れのときがきたんだな――。
はっきりと自覚し、家人と二人で「もうがんばらなくていいよ」と声をかけながら体をさすっていると、最後の排便が始まりました。多少いつもよりは柔らかかったものの、ゲリではないちゃんとしたウンチです。
たくさんウンチをした後、今度は大量のオシッコをして、そしてシュナの呼吸が止まりました。体に耳をつけると、本当に小さく小さく鼓動が聞こえます。
やがてその音も聞こえなくなり、シュナは旅立っていきました。
最後までシュナウザーらしかった犬
食いしん坊が毛皮を着ているような犬だったシュナ。
おトイレの失敗を一度もしたことがなかったシュナ。
彼女らしく、最後にちゃんとご飯を完食し、立派なウンチをして去っていきました。
あの子はイタグレのことが大好きだったので、あっという間に追いかけていってしまったような気がしています。きっと天国でイタグレに怒られていることでしょう。
来るのが早すぎるよ、と。
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