動物看護師を国家資格とする法律が成立
動物病院に我が家のワンコ達を連れていくたびに、動物看護師さんの仕事ぶりに感心しています。
診察台に乗せたとたん、逃亡しようと暴れまくるイタリアングレイハンドの関節をガッチリ決めて動けなくするあの技は、「さすが!」としか言いようがありません。
しかも、保定している犬を怖がらせないように、終始優しい笑みを浮かべているのです。
私だったら「コンニャロー!動くな!」と鬼の形相で押さえつけてしまいそう。
そんな動物看護士さんですが、夏場などで半そでを着ている腕には、無数の引っかき傷が。
おそらくは、動物を保定(動けないようにおさえること)する際に引っかかれてできた歴戦の傷なのでしょう。
経験を積んだ動物看護師さんの暴れるネコの押さえっぷりなんて、「お見事!」と賞賛したくなるほどの職人技なんですよね。
さて、そんな動物看護師のお仕事ですが、近い将来に国家資格となることが正式に決まりました。
これまでは資格がけっこう雑だった動物看護師(士)という仕事
ところで、「動物看護師」と「動物看護士」のどちらが正しいのでしょうか。
実は、「どちらも存在している」が正解。
なぜそんなことになっているのかといえば、ひとえに動物看護師(士)という仕事は協会や団体が独自に認定している民間資格だったからです。
要するに、民間資格の違いによって「動物看護師」と「動物看護士」の名称が混在しているんですね。
当然のことながら、統一していないということは、資格取得者と一口に言ってもその技量には差がある可能性が高い、ということにつながります。
知り合いの獣医師に話を聞いたところ、動物看護師(士)の技量や知識には個々でかなりの差があるため、動物病院に勤めるようになってから鍛え上げるしかないのだとか。
もうちょっと学生の間にレベルを上げてほしい、というのが本音だそうです。
もちろん、こんな状態が良いわけがありません。
というわけで、2011年に動物看護師の知識と技術レベルを一定以上の水準まで引き上げる目的で、動物看護師統一認定機構が発足されました。
これによって今まで独自で民間資格を認定していた5つの団体が、ようやく統一した資格として認定するようになったんですね。
これが「動物看護師統一認定試験」であり、ようやくここで「動物看護師」の名称が優先されるようになった、という経緯があります。
いよいよ動物看護師が国家資格へ
さて、そんな動物看護師の資格ですが、2019年6月21日の国会において「愛玩動物看護師法」が成立しました。
これによって動物看護師の仕事が国家資格になることが決まったんですね。
といっても、即明日からというわけではありません。
現在の見通しとしては、早ければ2023年(令和5年)に第一回愛玩動物看護師の国家試験が実施されるようです。
動物看護師の民間資格取得者も再度国家試験を受験しなければならない
では、現在民間の資格によって動物看護師としてすでに働いている人たちの資格はどうなるのかといえば、国家資格に移行するため、改めて受験して合格しなければならないんですね。
そんな現役動物看護師さんたちが、国家資格に移行することについてどう感じているのかといえば、どうも反対意見が根強いようです。
理由としては、動物看護学が確立されていない段階で国家資格化を急いでしまうことに不安を感じる、とのこと。
でも、本当にそうなのでしょうか。
そもそも、動物看護師という仕事の質を高めるためには、国家資格化は絶対条件。
もちろん、なにもかもすべてのお膳立てができてから国家資格化できればベストなのは間違いありませんが、そこにこだわっていたら日本お得意の「先送り」になるのは目に見えています。
となると、たとえ荒療治のようになろうとも、どこかで強引にでも移行するしかないのではないでしょうか。
そこに異を唱えてしまうのは、民間資格を取得していても再度国家資格を受験しなければいけないことへの不安という、ごく私的な理由ではないかとつい穿った見方をしたくなるのです。
動物看護師が国家資格になったらできるようになること
いずれにしろ、動物看護師が国家資格になることは、本気で動物医療と向き合っていこうとする動物看護師にとっては確実に朗報となるはず。
なぜなら、これまではできなかった医療行為が可能になるからです。
たとえば、現在は患畜の保定や入院中の世話、糞便や血液の検体検査やカルテの作成、受付や清掃といったことが動物看護師の主な仕事。
しかし、国家資格になれば獣医師の指示のもとで皮下注射やマイクロチップの挿入などが可能になるからです。
まさしく、人間の医療の看護師さんのようになっていくわけですね。
そもそも、動物が好きで動物医療の道に進んできているわけですから、看護師としてできる仕事の範囲が広がることはやりがいにもつながるはずです。
動物看護師が国家資格となり、看護師の知識や技量がレベルアップすることで動物医療全体の質が高まっていくなら、犬と暮らすものとしてはこれ以上ありがたいことはありません。
※この記事は2019年8月に執筆されたものです。
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